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散文

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雑多にいろいろ
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#日記

不眠症との付き合い方

不眠症との付き合い方

どうして眠れないのかわからないのだけど私は何年も夜上手く眠れない。眠ろうとすると色んな考えが浮かんできてあれもこれもと気が気でなくなってしまう。

あの言葉の意味は何だっけ。
あの時こう言われたのはどういう意味だったのだろう。
明日の気温は何度で何を着て家を出ればいいだろうか。

神経が昂ってくるせいか、体がビリビリと感電したようになり、しゃっくりをしたときみたいに何度も飛び跳ねてしまう。

あぁ

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わたしのママ

わたしの首には生まれつき100円大くらいのあざがある。今思うと大したアザではないんだけど、小さい時はそれを気にしてずっと髪を伸ばしていた。
そんな私を見てママは、私のクローンが現れてどっちが本物か分からなくなったときこのアザが目印になるんだよって言ってくれた。

子育てに熱心な人で、よく膝枕で耳かきをしてくれた。わたしの耳の奥には妖精が住んでるよって言ってた。それたぶん全然とれない耳かすだと思う。

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重み

重み

 思えばいつも重いな、と思っている気がする。部屋であぐらをかいて思索に耽っていると、もう八歳になる猫が短い脚でにじりと膝に登ってくる。何度か居心地悪そうにみじろきをした後、ストンと腰を落ち着けて丸くなり、じっと目を閉じて動かなくなった。あまりに無防備に、白い毛に覆われた柔らかな腹を上下させ、すやすやと寝息をたてている。そうすると、重いなと思いながらもわたしはそこから動けなくなるのだ。

換気しよう

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八月の真昼にて

八月の真昼にて

八月の真昼だった。駅から外に出ると一番に山が近いな、と思った。盆地である京都の市内で生活していると、どこか遠くに、しかし常にそっと山の気配がある。だがここは山が近く、舗装されたアスファルトと立ち並ぶ民家の生活感と山の濃い緑のコントラストが美しい。蝉の鳴き声が耳に痛いほどうるさかった。

歩きだすとすぐ首筋に汗がにじんできた。ちょうど一番高い位置に登っている太陽の日差しを受けて、熱されたアスファルト

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斜陽

家から出たら西陽から薄く広がる鱗雲がきれいでハッとした。乾いた風と高い空と季節の移り変わりに心洗われる。
眩しくて目を細めながら歩いているとスーパーの前で焼き芋の甘い香りに誘われて、出来立てのと迷ったけどフードロス勿体無いし、と割引されてたのを買った。
甘いお芋食べて元気出そう。

落葉

ベッドに入って、眠れなくて仕方なくのそりと起き上がり入眠剤を飲む。薬が効くまでのたかだか30分ほどが果てしなく長く感じる。今夜はあまりにしんと静かだ。こんなとき、すぐに消えてしまいという考えが頭をもたげる。ふと、カレンダーに入った先の予定を思い出して、もう少し生きねばと思う。そうして太宰の一説を思い出した。

---死のうと思っていた。
今年の正月、よそから着物一反もらった。
お年玉としてであ

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強い女とは揶揄なのか

わたしはよく”強い”と言われる。

関西出身で東京在住だから話し方や文化の違いからくる印象、という部分もあるだろう。だが、誰かに形容されるその言葉からはどうしてもポジティブな響きを感じられない。言葉の端にある女なのに”強い”という評価を感じとってしまうのだ。

わたしは強い女性が好きだ。自分の思想を持ち、それを言葉として表現できる人間は美しいと思う。出る杭が打たれるこの日本社会で自分の考えを発する

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わたしたちはどこから来てどこへ向かっていくのか。

「女性」或いは「女の子」
そう形容されたときわたしは言い知れない違和感を抱く。不適切な言葉のように思う。そしてそんな時、そこはかとなく孤独を感じる。わたしはどこにも所属せず帰属意識を持たず、広い世界の中にたった一人で立ち尽くしているように思うのだ。

わたしはトランスジェンダーである。
辞書などでは「体の性と心の性が一致しないが、外科手術は望まない人」と定義される。
わたしは女性の肉体を持ちながら

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