まこ

趣味で詩を書きます。都内で自家焙煎コーヒショップを経営しています。コーヒーと芸術のペア…

まこ

趣味で詩を書きます。都内で自家焙煎コーヒショップを経営しています。コーヒーと芸術のペアリング🎨☕️

マガジン

  • 鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで

    虐待サバイバーのうつ病患者がコーヒーショップを開業するまでの激動の半生をお送りします。

  • その他感想文

    美術館、映画、音楽など 芸術作品から受けた感想を書き貯める。

  • 日記

  • 読書感想文

    読んだ本の感想文

最近の記事

肉芽

押し当てられた腰骨は限りなく私を押しやった。押しやって推しやって押し潰して醜く変形したところでやっと肉を結ぶとわたしのつま先がようやく触れて、わたしは死に物狂いで着地する。膿みにまみれた一瞬間のゆりかご。反対側に大きく揺れる。ゆらゆらと。何もない空を削り取るような慣性で。

    • 鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで⑦

      高校時代は部活もせずにバイトに明け暮れた。地元のイオンにあるケンタッキーフライドチキンのバイトは高校を卒業するまで長くつづいた。 マナーの悪い人や、店員をストレスの捌け口にして怒鳴り散らすような人、正直ろくでもない色んなお客さんが来たが,、従業員同士は仲が良かったため愚痴を吐きあいながらも店長を中心に結束し一生懸命働いていた。 わたしも学校をサボった日でもバイトにはきちんと行って、夕方から夜まで働いた。自分で稼いだお金で食べ物やノートや文房具、本などを買うことができたのが嬉し

      • 中平卓馬展 火-氾濫

        先日友人と中平卓馬展に行ってきたのだけど葉山であった展覧会とは全く違った展示方法でこれまたキュレーターのセンスに脱帽。パリの展示の際に写真を写真としてでなく印刷物として展示したいという中平の意向をくんでか、雑誌がひたすらにそのまま展示されていた。壁まで間近にせまり寺山修司の連載文を読みながらじっと写真を眺める。 若い頃の作品から急性アルコール中毒で死にかけた晩年まで作風は少しずつ変わっていくけど捉えたいものは一貫している。 後半にクタクタの帽子をかぶって雪道を迷わずに、し

        • 2024年3月の日記

          別に僕の一生懸命書いた文章より綺麗なラテとかスイーツの写真とかの方がバンバンいいねくるけどそんなんしかいいねしない人と関わりたくないので僕が一生懸命書いた文章はいいねしなくていいのです。文学読む人やアートがわかる人としか友達にならないと決めた春先。感受性が死んでる人と関わるととても傷つきます。消費社会においてモノだけでなく人やコミュニケーションや自分自身すらも消費しつくされる時代が始まっている。うすら恐ろしさに包まれながら桃源郷をせっっせと打ち立てようと毒虫のようにもがく。

        マガジン

        • 34本
        • 鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで
          7本
        • その他感想文
          2本
        • 日記
          11本
        • 読書感想文
          1本
        • 散文
          22本

        記事

          古井由吉『杳子』読書感想文

          よく晴れた春の日暮れはどうしてか泣きたいような気持ちになります。暖かい空気が日没とともに、含んだ水分をそっと染み出させるような。肩に触れた涙が洋服にじわりと染み込むような。優しくて温かな悲しみの膜に体が撫でられているような感覚になります。 春の雨は好きです。何もかもをゆるしてくれているような、そんな緩やかなリズムで不確定な実存を包み込んでくれます。 さて、コーヒーのペアリングにと久々に古井由吉の『杳子』を読み返しました。 政治的イデオロギーから距離を取り、人間の内面を描く「

          古井由吉『杳子』読書感想文

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで⑥

          人間が生きていく上で衣食住の3つが整っていてこそ安心して人間らしい生活が送れるのだと思うが、わたしは年頃になってから洋服ならず下着すらも充分に買ってもらえなかった。思春期にはかなりキツいことである。 少ない数の下着でやりくりしているため、洗濯のルーティンがうまくいかず、朝から手洗いしてドライヤーで乾かした生乾きの下着を身につけることだってしょっちゅうで、 気持ち悪い上に朝時間もないのだからイライラしたものだった。 おまけに姉と妹も同じありさまで、イライラをぶつけ合いながら一

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで⑥

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで⑤

          高校生活 わたしはなんとか地元の高校に進学したものの、相変わらず授業はサボりがちで、最初こそ努力したもののあまりに家庭環境が掛け離れた同級生たちともなんだか何を話していいか分からなくなり、わたしはいつも休み時間を廊下の傘立てで本を読んで過ごしていた。 わたしのクラスの一つ隣の部屋が図書室であった事もあり、高校の司書の先生には近代文学を読み込む今時珍しい子供だと気に入られ、たまに図書室で授業をサボることに目をつぶってくれた。 クラスで悪目立ちしていたわたしを授業中もクラス

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで⑤

          不眠症との付き合い方

          どうして眠れないのかわからないのだけど私は何年も夜上手く眠れない。眠ろうとすると色んな考えが浮かんできてあれもこれもと気が気でなくなってしまう。 あの言葉の意味は何だっけ。 あの時こう言われたのはどういう意味だったのだろう。 明日の気温は何度で何を着て家を出ればいいだろうか。 神経が昂ってくるせいか、体がビリビリと感電したようになり、しゃっくりをしたときみたいに何度も飛び跳ねてしまう。 あぁ、またチックが来た。この調子だと今日もだめだ、とがっかりする。眠るのにがっかりす

          不眠症との付き合い方

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで④

          中学時代 入学してすぐわたしは友達に誘われて吹奏楽部に入った。部活紹介で、壇上で力強くドラムを叩く女性の部長さんがカッコ良くて、わたしはパーカッションかトランペットがやりたいなぁと思い入部申請書を出した。いろんな楽器を一通り試し吹きする適性テストの結果、顧問によってトランペットに割り振られることが決まり、とても嬉しかった。 トランペットは音が大きいので部室の一番後ろ側、指揮者から離れた位置にすわる。そうすると他のパートの部員たちのずらりと並ぶ背中を眺めることができる。 合

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで④

          鬱病の虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで③

          幼少期 3歳からは母の意向で仏教系の私立の幼稚園に入学した。毎朝ブラウスと吊りスカートをはいて、鏡の前に座る。母は三人の子供たちを代わる代わるにかわいいぼんぼりのついた可愛いヘアゴムで髪をセットしてくれた。 母は私の髪をヘアブラシでときながら、あんまり強い力で引っ張るもんだから、私の頭は引っ張られるままに傾く。そうすると母に頭をピシ、とまっすぐに戻される。その繰り返しである。思い返すと、すこし居心地の悪いような、でも母の愛を独り占めできるその時間が私は好きだったのだと思う

          鬱病の虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで③

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで②

          私が生まれた古都京都 私は夏の終わりに京都に生まれた。2300グラムほどの低出生体重時児だったらしい。私の誕生を楽しみにしていた祖父は、私が生まれる前にトラックに轢かれ亡くなってしまったのだが、そんな祖父が生前に市内のはずれに買った一軒家でわたしは両親と祖母、姉と妹に囲まれて育った。 京都は四方を山に囲まれた盆地で、夏は猛烈な湿気に苦しめられる。その湿度は何か見えない膜が体にまとわりついているのかと錯覚するくらいだとてつもない。それに盆地だから当然のなのだが、どこにいても

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで②

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで①

          私は東京で小さな自家焙煎のカフェを経営している。余裕がある生活とは言えないが、街に根差し、私の焼いたコーヒーを美味しいと通ってくださる温かいお客様に囲まれながらもうすぐ31歳の誕生日を迎えようとしている。 正直自分が30年も生きるなんて思っても見なかった。今までの30年の人生は、ほとんどをうつ病と共に生き、数えきれないくらい自殺を試みた。 ドアノブ、スチールラック、窓枠、ベットフレーム、カウンターテーブルのフレーム。とにかく至る所に延長コードや麻紐をくくり付けてきた。 結

          鬱病虐待サバイバーが自家焙煎コーヒーショップを開業するまで①

          トワイライントワイライト

          淋しさを浸したら ルビー色のダージリン マスカットもいで添えたら 水滴と朝もやの味 あの空のグラデーション 君にも見せたい 鼻歌のイミテーション 意味もなく添えたい 前髪越しのつま先は 一定のリズム 揺れている トワイライン トワイライト 踏切前で立ち止まった 噛み締めた 唇は 一定のリズム 震えてる トワイライン トワイライト

          トワイライントワイライト

          ねこ

          猫ってのはすごいもんで人間が喧嘩をしているとうるさいぞ、とふくらはぎを噛む。 人間が仕事でバタバタとして余裕をなくしていると、働きすぎだと構え、と布団で粗相をする。 猫ってのはそこかわいさで人間を魅了して人間をコントロールして導いているのだ。 ねこによるワークライフバランスの調整。 わたしたちはカリカリを与えて良く撫でて遊んで差し上げて、お水を変えてトイレを掃除して、適度に働きまた遊んで差し上げる。 それが一番いい生き方に決まっているんだ。 隣であくびしながらまさしく、という

          夜中の乱文まとめ

          死んだら電気分解されて天国に行くんだって。前髪をはためかせて急に走り出す。あの大通りまで止まらずに走れるか競走ね。息を整えながら歩くのってなんて可笑しいの。タイルをひとつふたり数えて歩く。電線に縁取られた空も意外と綺麗なもんだ。それから忘れ去られた壁のひび。それからそれから、 胸が張り裂けそうだと思った。それはビリ、と意外と薄い布が裂けるような音だった。飛び出したのは宇宙デブリのようなものでわたしなんだと拍子抜けした。意味もなく周回軌道上をぐるぐる回っていたのかと。つま先で

          夜中の乱文まとめ

          得意げ

          君が誇らしげになにかを話す時 ぴんと張ったゆびの先 丸い瞳の表面が 太陽を弾いてつるりと光る わたしはただその顔が愛しくて 口の端が引っ張られて ついほころぶ 君の美しい知識のかけらが わたしの心にやみくもに張った いくつもの線を ゴールテープみたいに ぴん、ぴん、と 綺麗に切り取っていく