痙攣

「それ飲まないとどうなるの?」

ふとした、ただの素朴な疑問だった。彼女は一瞬かすかに顎を斜め上に傾げると、すぐに唇の端がすいと引っ張られて悪戯を思いついた子供のようににやりと笑った。

「白目を剥いて涎を垂らして痙攣するの」

彼女は自分で言った悪趣味なジョークでくすくす笑うと、指先で摘むとすっかり隠れてしまうほどの小さな白い錠剤を慣れた手つきで口に含みコップの水を飲み下した。首筋に張り付くような青白い薄い皮膚を、女性にしては大きめな喉仏が盛り上げている。それが水を飲み下す際にゆっくり上下するさまに、普段化粧っ気のない彼女からは思いもつかないような妙な色っぽさを感じて、僕はなにか見てはいけない秘密を覗き込んだような気になって、視線をちぎり取るように逸らした。

それに気づいてか、彼女は突然すっと、諦めたような冷えたような視線で目を細めた。西陽を受けたまつ毛の影が、落ち凹むような深い彫りを一層濃くして、今度はどこか頑なな匂いを漂わせた。

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