記事一覧
The Zone of Interest 『関心領域』
監督 ジョナサン・グレイザー 2023
昨年購入した4Kレーザープロジェクター、もうこれがあればほとんどの映画は映画館に行かなくていいんじゃない?と思うくらい満足しているのだが(キューブリックの Barry Lyndon なんかはやっぱり映画館の大スクリーンで観た方がいいに違いないと思うけど他は多分だいたいいける)、固定位置に据え置いていないので毎回使い始めの位置調整だけがややめんどくさい。そん
アフターサン/ aftersun (と、 How To Have Sex も少し)
2022年 監督:シャーロット・ウェルズ
しんどい映画だった。見ている途中は不思議にそうでもないのだけれど、見終わった後にドっとくる。すべてが他の可能性を閉じていて、読み違いをさせないよう入念に作られた作品。人の顔の判別能力がとても低いせいと、創作を生業としている者のサガか、全く違うお話を脳内で作り上げてしまうこともままある私でも、最後の扉がどこに繋がっているのかがちょっと俄かにはわからなかった以
『落下の解剖学』 ANATOMY OF A FALL
久しぶりに、どれくらいの人が見てくれているのかな、というのと、感想を書き留めておかないと何もかも綺麗さっぱり清々しいまでに忘れていく、というのもあって、「読んだり観たり」を更新してみることに。
『落下の解剖学』を、(オウチスキーなのでプロジェクターで居間の壁に映し、ソファーでくつろいで)観た。2023年 ジュスティーヌ・トリエ監督。おお〜これは観る人の人生経験や普段の問題意識や引っかかりとその感度
KILLING EVE
Fleabag の脚本、主演も全てこなした今を時めくフィービー・ウォーラー=ブリッジ(Phoebe Waller-Bridge)の次なる作品、ということで、 公開前からイギリスでは相当な期待がかけられていた KILLING EVE ですが、 期待を裏切らず面白い。サイコパスの殺し屋ヴィラネル(ジョディ・カマー)の情け容赦のない描写もいいし、MI5で働くイヴ(サンドラ・オー)のリアリティも良い。フ
もっとみるBattle of the Sexes/Three identical strangers
飛行機で観て非常に得した気分になった映画2本。
前回のフライトで、あと30分くらいのところで着陸態勢に入ってしまい、クライマックスの試合の結果を見ずに尻切れトンボで終わった Battle of the Sexes(邦題『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』)のつづきを1年越しで見ました。だいたい想像がつくからまあいいや、と思って気になりつつもそのままになっていたのですが、こんなにもスッキリ爽快な結
DON McCULLIN + BURNE-JONES ★★★★★
Tate Britain で。
ラファエル前派は、好きだけどちょっと綺麗すぎるんだよね、でもまあテートでやるバーン=ジョーンズは見ておかないとな、と、最終週に見に行ったらすごい人人人で、わあ失敗、と思いましたが(人が多いともう見ないでそのまま帰ってもいいかなくらいにテンションが下がります)頑張って見切りました。ペンとインクのドローイングが凄くて、でも水彩も油もキラッキラでやはり凄くて、すごーい
The Favourite
昨日BAFTA(ブリティッシュ・アカデミー・フィルム・アオード)で『The Favourite/女王陛下のお気に入り』が Best British Film, Best Actress, Best Supporting Actress, Best Original Screenplay など7部門で受賞した記念に、正月ごろ観てだいぶ時間が経っていますがちょっと感想を書こうかな、と思って思い出しつつ
もっとみるCan You Ever Forgive Me?
私が世界で一番好きな映画『ウィズネイルと僕』のウィズネイルが、年取って丸くなってちょっと人の気持ちがわかるようになったけど、まあ基本的に相変わらずのろくでなしっぷりで、それをまた水を得た魚のごとく素晴らしく演じるリチャード・E・グラント、を、かっこいいわーかっこいいわー、と、ときめきながら観る。ための映画である。私の他に5人しか観客のいない平日13時半の映画館の三人掛けソファーに一人で陣取り、カウ
もっとみるニュルンベルク合流 「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源
去年、訳者の園部さんから直々に頂いた550ページ以上ある大作です。(厚さがわかるよう、隣に『犠牲のシステム 福島・沖縄』を並べてみました。)
頂いたにも関わらず、そのあまりの厚さと主題に臆して、なかなか取りかかれずにいましたが、Holocaust Memorial Day ということで、読み始めるのには最適な日ではないか、と、読み始めたことをここにこう書き記しておけば、後に引けないんじゃない