【BL二次小説】 喫茶チャリダー④
〜昼下がり〜
カランコロン。
葦「あー!涼しー!生き返るー!」
泉「どもー!お疲れ様でーす!」
黒「アイス!荒北さんアイス食わせて!パフェとか!」
ドヤドヤと騒がしく入って来たのは、葦木場、泉田、黒田の3人組だった。
この丘は3人の大学の練習コースになっていて、昼過ぎに時々こうして店を訪れる。
荒「練習中にサ店たァいい根性してんなオメーら」
黒「練習ルートにこんなオアシス建てるのが悪いんスよ」
黒田達は4人掛けテーブル席でグッタリしている。
荒「うらァ!」
荒北がテーブルにドン!と置いたのは大人数用パフェだった。
黒「でけぇ!」
泉「こ、これ、ビール用ピッチャーじゃないですか!」
葦「中ジョッキ15杯分ですよ!」
荒「早く食わねェと溶けンぞ」
慌ててパフェを貪る3人組。
カランコロン。
次に入って来たのは普通の一般男性客だった。
荒「いらっしゃいませ」
荒北はテーブルにお冷やとおしぼりを置く。
客「灰皿」
男性客は吸いかけの煙草を手に持っていた。
荒「すいません、うち禁煙なんです」
客「ああ?」
男性客は煙草の灰をテーブルにトントンと落とした。
荒「こちらで処分しますんで、煙草渡して頂けますか」
男性客は声を荒らげた。
客「俺が吸いてぇから吸ってんだ!黙って灰皿の代わりになるモン持って来い!お客様は神様だろ!」
その声にビックリして、泉田達が振り向く。
荒北は男性客から煙草を素早く引ったくり、前髪を掴んで頭部を後ろにギリギリとひん曲げた。
客「痛ててててて!」
黒「荒北さん!」
黒田が思わず立ち上がる。
荒北はそのまま火のついた煙草を男性客の眉間に近付けた。
客「や、やめろ!」
黒「荒北さん!相手は素人さんスよ!」
客「ヒー!」
黒田の言葉を聞いてビビる男性客。
荒北は男性客に顔を近付けて静かに言った。
「ここでは、オレが、神だ」
店外では、昼食をとりに来た新開が駐輪場に自転車を置いていた。
入口ドアを開けようとすると……。
バン!
客「頭イカれてやがる!」
勢いよくドアが開かれ、中から男性客が飛び出してきて新開とぶつかった。
新「おっと」
よろける新開。
それを目撃した荒北が男性客を追いかける。
荒「人にぶつかったら何か言うことあンだろゴラァ!」
客「ヒー!すんませーん!」
丘を転がりながら逃げて行く男性客。
新「靖友!戻ってこいよ」
新開が呼び止めると、荒北は追いかけるのをやめた。
戻ってきて新開に駆け寄る。
荒「大丈夫か新開。怪我は?」
新「大袈裟だなぁ。全然なんともないよ」
ニコニコしている新開。
新「また煙草客?」
同じような光景を何度か見ている新開は呆れたように尋ねた。
荒「素直に聞いてくれる客にはオレだって何もしねェよ。だが……ここはスポーツ選手の集まる店だ。害になるモンは排除しねェと」
荒北の、仲間に対する愛情の深さをよく理解している新開は、優しく荒北の肩に手を置いた。
店内に戻って来た荒北と新開を見て、黒田達がホッとする。
泉「アブぅ。どうなることかと思いましたよ」
黒「加勢に行く準備は出来てましたけどね」
葦「見入ってたらパフェ溶けちゃいました……」
荒「驚かせて悪かったなオメーら。コーヒー奢ってやっから許せ」
3人組「やったー」
新「腹減ったよ。オレもなんかちょうだい」
荒「あァ、待ってろ。すぐ作ってやんよ」
荒北はカウンターの中に入って行った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?