健忘録【6】

抗がん剤治療中の初日。

循環器内科から、心機能の低下があるため、抗がん剤投薬中に心臓の酵素を採血で測定するように言われたのをその晩の当直医に伝えた。

いやー、ね! 血管が悪すぎて軽い押し問答はあったんだよね…… 

抗がん剤治療も辛いし、たかが容易にとれる採血ごときが、血管の悪さだけでなくなりそうな状況。

それでも、何かのタイミングで一度か二度測ってくれたんだっけ? それとも、結局採血しないことになったんだっけ?

いずれにせよ、もう血管が悪すぎるから、ポートを入れる時期だと友人の当直医に促された。

なんだか、背景が何かの末路っぽい感じだよね。

血栓症、敗血症、ポートを入れた際の合併症は、どれも何度も経験している。

負う必要がないリスクならば、そんなもの負いたくない。

加えて、抗がん剤の晩期の後遺症も叩き込まれているしなぁ。

辛いよね~

当時、自分でも言語化できない何かの感情によって、とにかくもう病室に居られなくなった。

とにかく、外に行かないともう無理、耐えきれない…… そんな心境。

今でも言語化できていないし、正確には認知すらできていない考えや感情の重圧。

どうにか、看護師に頼み込んで、別室に止めてあった自分の車いすをベッドまで持ってきてくれるように、もう、本当に願い倒した。

その後、自分の車いすで病院のカンファレンス室の直ぐ外に行った。

夜中で誰もいるはずもない。

他の患者さんも寝静まっており、看護師も廊下にはいない暗くて静まり返った病院。

カンファレンス室の前で、涙が流れ始める。

自分でも驚いた。

しかし、そこで何度も何度も「ここに戻ってくるんだ」と声に出して呟きながら、号泣した。

普通の生活って、本当に貴重だよね。

日々「普通」に前日と大して変わらない日を過ごし、仕事があり、たまにそれが面倒で.......

当たり前のように毎日同僚や友達と顔を合わせる。

家族がいて当たり前。

そんな「日常」はあることも続くことも奇跡なんだよね.......

まぁ、号泣したあとは、エネルギーと前向きな気持ちをある程度取り戻せた。

切り替えて、何もなかったかのように涙を拭いて病室に戻っていったのだとさ。

今を大切に生きよう!



ちなみに、戻ると誓ったカンファ室には、残念ながら未だ戻れていない。

今後戻れる見込みは...? あって欲しい。

方向を決めるのは自分......

複雑な想いと背景が絡まり合って、色々折り合いをつけて動くのも大切だと思う今日この頃......

でも、本当は折り合いをつけたくない自分もいる気がする。


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