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唐仁原昌子
2023年7月30日 22:30
俺は、あの子のことをほぼ何も知らない。 知っているのはその名前と、俺と同じクラスで物静かなタイプであるということと…あと、笑った顔が可愛いということくらいだ。 そもそもクラスの中で、接点の少ないタイプなのだ。俺はうるさくて声もでかい。あの子の声をきちんと聞くには、俺のいる環境は騒がしすぎる。あの子は多分、俺みたいな人間は苦手だと思う。 まさに、俺とは真逆のような落ち着いた人で、だからこそ
2023年7月23日 22:25
私は、彼のことをほぼ何も知らない。 知っているのはその名前と、私と同じクラスでいつも騒がしい人たちの中にいるということと…あと、よく笑っているということくらいだ。 そもそも人生において接点のないタイプなのだ。私は日陰を好んで歩くタイプ、あの人は堂々と日向を歩くタイプだ。 まさに、私とは真逆のような人生を生きている。 私の中にある、山村くんの情報はそんな具合だった。 そんな人が、いま
2023年7月16日 22:00
気がつくと、もう夕方だった。 部屋に射し込む夕日の色濃さに気づき、ハッとさせられる。 テスト前ということで、親に頼まれるお使いなどを一蹴して、朝から部屋に篭っていた。そんな、勉強をしているフリをして過ごした日曜が、もうまもなく終わろうとしている…。 テストは明日月曜日から始まるらしい。確認できてるテスト範囲は、まだ3分の1ほどだ。「やばいよなあ…」 口に出して呟くと、より一層危
2023年7月9日 23:42
ーヴゥン… 深夜2時。スマホが枕元で震えて光る。メッセージの主は、見なくともわかる。 十中八九ナオだ。 確かナオは今日、好きになれそうな男とデートだと言っていた。大方その感想でも聞いて欲しいのだろう。ーヴゥン……ヴゥン… スマホは、不規則な間隔を置いて震え続けている。寝付けずに起きていた俺は、ふう、とため息をついてそれを手に取る。「思ってたよりいい人だった!」「今度こそ、好
2023年7月2日 23:24
この教室で、白山の横顔を一番見ているのは、間違いなく私だ。…多分。白山の隣の席になって、そろそろ1ヶ月経つ。窓の外を見るようなフリして、さり気なくその横顔を見ることが、随分上手くなったと思う。そろそろ席替えのタイミングだ。もうすぐこの席を離れることになる…。考えると、1ヶ月かけて白山と取ってきたコミュニケーションがイマイチ実り切らないままなことに気がつき、何だかしょんぼりしてしまう。