マガジンのカバー画像

名著紹介

9
日記のうち、名著紹介を兼ねているものをまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

日記3/10 皆のボルヘス【伝奇集】、私だけの【不死の人】

日記3/10 皆のボルヘス【伝奇集】、私だけの【不死の人】

本好きにとって、言葉は重要だが
それだけではなんだか分からないのが上記の文章である。

古本屋に入り、
出版年もサイズもジャンルもバラバラとした
積まれた本からお宝を探していると
J.L.ボルヘスの「伝奇集」(1975,集英社, 現代の世界文学)を見つけた。

今でこそ
岩波文庫のある本屋をあたれば
どこへいっても置いてある文庫本の一冊だ。

内容は短編集で
ジョジョの岸部露伴シリーズみたいに

もっとみる
日2/27 焦る10分の先に【サキ短編集】

日2/27 焦る10分の先に【サキ短編集】

23時50分。

デジタル盤の記号を横目に
私は今から日記を書く。
今日の事は今日中に書き上げるべきだからだ。

最近買った本たちの話
ポケモンの新作情報の話
あるいは愚痴交じりの失敗談

それらを記録に残してはみたいが
生憎と今日は残り10分間しか待ってくれない。

選べる話題は、精々一つ。
なのでキーボードの一番近くの
詰まれた山から本を一冊
取り出してみたら、「サキ短編集」の文庫本(新潮文庫

もっとみる
日記2/16 つまらぬ文章に詰まるので、カフカの「城」でどうにかする

日記2/16 つまらぬ文章に詰まるので、カフカの「城」でどうにかする

文章はできれば書きたくない。
書き出せば、限りない文字との戦いに巻き込まれるからだ。

例えば、この日記
私が自由に書いていいといえども
最低限、起承転結くらいはつけたくなる。

短編やエッセイを作る……まで行かずとも
短文やメモ書きを残す……だけでは味気なく
せめて転まで書いてから投稿しよう、と

そんな考えのせいで溜まった下書きの処分に
私は追われていた。

文章に詰まったときのアドバイスで

もっとみる
日記2/1 皇帝の日記から考える塞翁が馬

日記2/1 皇帝の日記から考える塞翁が馬

(碌でもない! 人間とは碌でもない!)

罵倒を文学的に抑え込んだ結果のフレーズ。

顔を火照らせ足早に歩く。
酷い仕打ちを受けたのか。
目頭が熱くなるのを感じる。

人間万事塞翁が馬、
というが

今の気分は
人間万事、災難か不満。

天は人の上に人を作らないが
先を行く者の上に後の者が連なるので
スイカゲームが如く、
後者は大きな者の隙間に生きるしかなく
ゆっくり己が大きくなるか
邪魔なスイカ

もっとみる
日記1/26 失われた「失われた時を求めて」を求めて

日記1/26 失われた「失われた時を求めて」を求めて

「失われた時を求めて」は名作だが
「失われた時を求めて」の名言を引用する人はあまり信用ならない。

名言紹介みたいなのが流れてきて、ついそう思った。

あんな長編小説においては
たった2, 3行を切り取ったとて
作品の真意を図れるわけないと思わされる。

(というか、本当に読破した人が作中の言葉を使って語るとき、そんな浅すぎる名言解説するのか?)

と、思いつつも
我が身を省みれば
例えば平家物語

もっとみる
日記1/25  寒波する「悪童日記」

日記1/25 寒波する「悪童日記」

電車を待つ
大寒前日の風は
飾らずに言えば「くそ寒い」

気を紛らわすべく
スマホで適当な読み物を探す。

そういえば、今日

「『〜だ 』と彼は言った」

という文体がクセになる
アゴタ・クリストフの「悪童日記」を

午前と午後
関係ない場所で2回見かけた。
2回ともスマホの中でだが。

一つ目は、Twitterで。
「バーナード嬢曰く。」
のコマを引用した投稿が流れてきた。

悪童日記を題材に

もっとみる
日記1/8 ラジオ・モンテーニュの悲劇

日記1/8 ラジオ・モンテーニュの悲劇

radicoを聞いてたら
モンテーニュの名前が流れてきた。
モンテスキューだったかもしれない。

しかしNoteを始めた私には
哲学者モンテーニュにしか聞こえなかった。

モンテーニュはエッセーの始祖だ。
ともすれば、Noteの起源とも言える。

1580年
非常勤の法官37歳は
107の随筆を纏めた本に
『エセー(試み)』と名付けた

読者に読まれるためでなく
少人数の知り合いと自身
それだけの

もっとみる
日記1/4 初夢と指輪(パブリックドメイン)

日記1/4 初夢と指輪(パブリックドメイン)

初夢。
苦手な上司から、苦手な仕事を任された。

逐一監視される。
どうにか早く終わらないものか。

そう悪戦苦闘していると、
そのうち目が覚めて朝を迎えた。

しかし頭が冴えるにつれ、
苦手な上司は現実にいたか怪しくなってきた。

そうだ、
あんな上司は確かいなかったはず。
でも記憶には苦手になったエピソードが残っている…

もしかすると、
現実に上司は本当にいたが、
私がはやく終わってくれと願

もっとみる
日記1/1 内科医の日記「ドクトル・ヴィルガーの運命」を反正月視点で

日記1/1 内科医の日記「ドクトル・ヴィルガーの運命」を反正月視点で


前書き:元旦と日常
いくらテレビが華々しい元旦を画面や文章として象っていようとも、それに倣って福袋を買い込んだり、混雑した境内へ乗り込む必要はない。
いつも通りの日常。ほんの少しの遠出。
溜まっていた作業を進めるための3日間。

日々の中、代わり映えのない一日。
そうして過ごす人たちは現実にも、文学の中にも存在する。

今回は、日記の題材を探すべく本棚を漁っていたら、他人の日記が出てきたのでそれ

もっとみる