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『お花とエッセイ』作品集 その13

「エッセイ、やっぱり好きだなー」と、ほんとに何度も何度も実感させてもらいながら書いてきたこの作品紹介。今回を入れて残り2回となりました。

この記事にスキで応援をくれる方、そしてひそかに見守ってくれている方、いつも本当にありがとうございます。書いて下さったご本人に届け!という想いとともに、少しでも読んでみようかなと思ってもらえればと、そんなことを考えながら書いてまいりました。

名残惜しくなってきておセンチな気分ですが、最後までたのしんで書いていきますよー!

今回の5作品はこちらです!

61.ご近所の魔女たち

高校野球を観るため、お父さまが運転するバイクで球場へ向かった幼いころのピリカさん。道中、すねがバイクのマフラー部分にあたり、かなりの火傷をしてしまいます。

わんわん泣く娘。それを見たお父さまは、球場に売っていた氷嚢を足に当ててくれます。……って、道中に火傷したのに球場に行ってる!!どうやらお父さまはどうしても野球が見たかったようです。

家に帰り、真っ赤に水ぶくれしたすねを見て慌てるお母さま。いよいよ病院かと思いきや、お母さまは町内の魔女みたいなおばあちゃんたちを数人連れてきました。

「やけどには白い鳳仙花の花びらをお酒につけて腐らせたものを貼り付けるとすぐなおる」

「オイオイ、病院!病院はどうした!?」と思っていたというピリカさん(笑っちゃいけないのかもしれませんが、笑ってしまいました!)。傷跡はというと、薬草魔女のおかげでまったくあとも残らず治ったんだとか。

魔女おそるべし……なエッセイ、必読です!


62.思い出と花

以前お付き合いされていた彼女から感じた、お花の香り。香水か、衣類の洗剤かは忘れてしまったそうですが、そのお花の匂いがとても好きだったという、のいといさん。

お別れしたあとは、彼女のことを忘れようと、思い出の物や写真を全部片付けました。今では彼女の顔も声もおぼろげにしか思い出せません。

でも、そのお花の香りだけは、今でも鮮明に覚えているんだそう。

もう教えてもらえないけどあの花はなんだったんだろう。

この一文が甘くてせつなくて、「恋っていいなぁ」と改めて思えたエッセイでした。


63.憧れの花

プランターの土から出てきた、貝母ばいもの球根。それを見たチズさんは、はじめて貝母の花を見た日のことを思い出します。

むかし、「貝母の花を見てみたい」と、お花に詳しい友人に相談したチズさん。「その花ならうちの庭に咲くので、時季をみて「貝母を愛でる会」をしましょう」と、とんとん拍子に話が進みました。

初めて見る貝母の花は小さく、ほっそりとしていて、恥じらうように下を向いています。貝母に惹かれているのには理由があって、随筆家の岡部伊都子さんの逸話を知ったからなんだとか(詳細は記事にて!)。

私も……!と、貝母を育て始めたチズさん。最初の方こそ花が咲いたものの、ここ数年はうまく咲いてくれません。そんな貝母に自分を重ねつつ、憧れの花への想いをやさしく語ってくださいました。


64.40本のサプライズ

卒業式が終わった数日後、生徒たちと過ごした日々を思い出す文香さん。

一人前の先生になれるかなと心配だった3年前。そんな心配をよそに、「うっちー!聞いて聞いてー!!」と、すぐに仲間のようにあだ名で呼んでもらえる関係になりました。「やーかーまーしーいー!!」「静かにしなさいーー!!」と叫んでいた日々も、ついこないだのことなのにもう懐かしく感じます。

卒業式の日、式次第の最後・卒業生が退場する際に、担任は式場の出口で生徒を見送ります。ふとみんなの様子を見ると、40人の生徒が一列になってこちらに近づいてきます。ひとりひとり、手に一輪のピンクのガーベラを持って。

「うっちー、ありがとう。」

40本のガーベラの花束、そして生徒からの感動的なサプライズで胸がいっぱいになります。何度思い返しても胸があつくなるあの日のことを、誰もいない教室でひとり、卒業式の集合写真を手にまた思い出す文香さん。

先生としての葛藤、そして先生としての喜び、そんな気持ちが自分のことのように伝わってくる、とても心を打つエッセイでした。




65.母と花と私

優しく、そして厳しくもあったお母さま。

字が綺麗で、料理上手で、倹約家。手芸が好きで、地元紙の愛読者。あいさつを重んじる。運動と片付けが苦手。好き嫌いは海鮮類。

そんなお母さまと「お花」との思い出を教えてくださったすーこさん。お母さまはよく、庭のお花が咲くたびに、幼いすーこさんの手を引いて花の名前と咲くまでのいきさつを語ってくれたそうです。

そしてもうひとつ、大切な思い出があります。それはたまにふたりで行ったおさんぽ。

たわいもない雑談を交わしながら、花を見つけると指を指して母が楽しそうに花を語る。

そんな時間がとても愛おしかったというすーこさん。帰省もままならないこのご時世。玄関の金木犀の香りに顔を綻ばしている姿を想像しながら母を想う、家族愛を感じるやさしいエッセイでした。


【note用】感謝


↓『お花とエッセイ』作品集↓
その1 その2 その3
その4 その5 その6
その7 その8 その9
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その13

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