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『お花とエッセイ』作品集 その6

あと1週間で募集が終わる私設コンテスト、『お花とエッセイ』。これまでもいくつか企画をしてきましたが、過去最高の盛り上がりを見せております!(わーい!)

いやーーーうれしいです。フォロー外の方の参加も多くて、企画だけじゃなくnote自体の楽しみも増えています。

作品集は今回で6つ目。まだまだいきますよー!

26.おじさんでも「好き」になる

健全に生きようとするのなら、「好き」という感情とは適度な距離感を保つ必要があると思う。

仕事終わりのロングドライブがお好きな自堕楽さん。道中、寄ったコンビニで食べる深夜の揚げ物はまさに、罪深い背徳の味です。そうとはわかっていてもつい手を出してしまうように、自堕楽さんは「好き」と距離を保つのが苦手なんだそう。

数年ぶりに好きな人ができたとき。相手のことを好きだと気付いているのに、「おじさんなのに」、「いい歳して」と、その想いを素直に認められない自分がいます。「それも歳の若い子だったりした日にはもう自分を消したくなるくらいにしんどくなる。」と思う気持ちは、単に悲観的というわけではありません。

「異性」としての「好き」は心から消せたとしても、「人」としての「好き」は、歳がいくつになろうが、対象が誰であっても消せないものだったりする。

好きになったその人に最後に会った日、いろんな想いを心の内に秘めながら、自堕楽さんはささやかなプレゼントを贈りました。小さくて、控えめで、引かれないようなものをと選んだプリザーブドフラワー。ガラスドームに入った「オレンジローズ」の花言葉が、胸をやさしく詰まらせるエッセイでした。


27.魔法使いの先生

「草の花」を生けるのがお好きな大谷さん。深夜までの仕事が終わり、秋だというのに虫の音ひとつしないシンとしたシャッター街を歩いている途中、思わず「草」「生ける」とネットで検索します。そこでヒットした生け花教室で、大谷さんは「魔法使いの先生」と出会うことになります。

小さな二階建ての先生の家。今日のために実家の田んぼから採ってきた「ガマの穂」を見せると、先生は旧友に会ったかのように「まあ、久しぶり」と声をかけます。

遅れてやってきた3人の生徒さんと一緒に思い思いに草の花を生けていると、「ちょっと触っていいかしら」と先生の声。

先生は断りを入れてから、ガマの穂を二本だけ少し手前に傾けた。二次元だった生け花が三次元になり、空間がぎゅっとわしづかみされ、私は茫然とした。

他の女の子たちの生け花も同様です。先生が手を加え、わあっという歓声と笑い声が室内に響きます。

不思議な魅力のあるレッスンが終わり、女の子たちと川沿いの道を歩きます。教室でのように親しみを込め「今日は楽しい時間でした。またお会いしましょう」と大谷さん。「そうですね」、と3人のうちのひとり。その子の低調な声と輝きを失った瞳に、「ああ、先生の魔法がとけたんだ」と寂しさを感じつつ、大谷さんはまたひとり、家路をたどるのでした。


28.せんぱいとわたし

新卒で入った会社の、ふたつ年上の先輩「たか」さん。不思議な出来事をきっかけに職場にも馴染めるようになったみゆさんは、たかさんとも頻繁に遊ぶようになります。

合コンに連れて行かれたり、遠くのディスコに踊りに行ったり。
海にも行ったし、ドライブしたり、ねるとんパーティにも連れて行かれたっけ。
あとは、たかさんのお家でレンタルビデオの映画を見たり。

たかさんとの懐かしい記憶が、あふれるように思い出されます。

ちょうご今頃の季節、たかさんに「今度、休みの時さ、ドライブ行こうよ!」と誘われて、マリンワールドという水族館と隣接する海の中道海浜公園へ行くことに。広い公園を進むと、そこは一面のコスモス畑が。濃いピンクや赤紫、白に薄ピンクと、美しい景色に見惚れてしまいます。コスモスが咲き誇る中を歩いていて、「アイドルみたいだな」と思ったみゆさんに、「なんかさー、私達アイドルみたいやん?」とたかさんが言います。

息ぴったりなおふたり、そして仲良く並んで写るご様子がたいへん微笑ましく、こちらまでうれしくなるようなエッセイでした。


29.花の香りは、記憶

「花の香りは、記憶です」

ご実家の玄関先で幼馴染と匂いをたのしんだ「沈丁花じんちょうげ」、お母さまの好きだった「くちなし」、ご自身の誕生月にふわっと香ってくる「金木犀」と、たくさんの花の記憶を教えてくださったsoraさん。マドレーヌと紅茶の香りで幼少期を思い出した「プルースト」さながら、懐かしい感情が呼び起されます。

季節ごとにいい香りを届けてくれたご実家は、今はもうないそう。引っ越しの日、玄関の花たちがどこに行ってしまうのか、とても気になっていたのに聞けなかったそうです。お花が好きだったお母さまの悲しむ顔を見たくなかったという言葉に、ご家族への愛を感じます。

何年か経ち、お母さまとふたり、家があった土地へと訪れた日。

そこには何件かの建売り住宅が建っていていました。金木犀も沈丁花も、もちろんそこにはありませんでした。

懐かしさと、そして少しのさびしさを感じる、ステキな香りに包まれたおはなしでした。


30.サンセベリアの祝福

みおいちさんが以前勤めていらした会社は、毎朝の15分間の掃除や、お客様へお出しするお茶へのこだわりなど、細かいところまで心配りがなされた会社でした。そのオフィスの入口には、毎週必ず生花を飾っていたんだとか。

そのオフィスの花や植木の手入れをよくしてくれる、若手有望株の社員、Tさん。みおいちさんも植物は好きだったので、Tさんのいない日は代わりに世話をされたそうです。特に多かったのは、「サンセベリア」というめったに花を咲かせない植物でした

ある日、Tさんの異動が決まります。異動の直前、みおいちさんはTさんに呼ばれて、植木の世話の仕方の引き継ぎを受けました。

その引き継ぎがあまりに
熱心だったので、
自分が大切にしていた植物の
行く末が心配なんだろうな、と
後継として責任を
感じたものでした。

やがて交際を始めたおふたり。長年の交際を経て、事務所で結婚の報告をする日、玄関先に飾ってあったサンセベリアの花にあることが起きます━━と、続きはぜひ、みおいちさんの記事でおたのしみください。高揚感が伝わってくるような、ロマンチックなおはなしでした。



これまでの作品集はこちら↓
『お花とエッセイ』作品集 その1
『お花とエッセイ』作品集 その2
『お花とエッセイ』作品集 その3
『お花とエッセイ』作品集 その4
『お花とエッセイ』作品集 その5


yuca.さんの作品集はこちら↓
お花とエッセイ応募作品集その1
お花とエッセイ応募作品集その2
お花とエッセイ応募作品集その3
お花とエッセイ応募作品集その4
お花とエッセイ応募作品集その5


企画の詳細はこちら↓



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