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世界遺産サンティアゴ巡礼路854kmを歩く -嫌っていた父へ感謝の芽生え/28日目-

●これまでの道のり
1日目 初日31km / 2日目 猛烈な筋肉痛 / 3日目 大自然の中で一人大泣き / 4日目 足の痛みと色眼鏡の妄想 / 5日目 痛恨のエクストラステージ / 6日目 後半、雨の中での迷い / 7日目 旅仲間との出会い / 8日目 誰かの玉ねぎを使うこズルい自分 / 9日目 心身追い込まれる中での不思議な感覚 / 10日目 タフな作家さんと歩きッコ / 11日目 仲間とゆっくり歩く日 / 12日目 作家さんの○歳の誕生日 / 13日目 アクシデント!出発点に戻る! / 14日目 初めてのヒッチハイク / 15日目 作家さんと歩きくらべ / 16日目 毎日歩くという日常 / 17日目 作家さんのいない日 / 18日目 電池切れで体調崩す / 19日目 体調不良で歩く中での自問 / 20日目 身にしみる人の優しさ / 21日目 歩かずに体を休める / 22日目 再開、今の一歩その瞬間に感じるモノが全て / 23日目 甘え心と体調不良の中の最長距離  / 24日目 追い込まれた後半の大事な時間 / 25日目 山越え / 26日目 きっかけは空海のお遍路 / 27日目 妄想で重くなる体

2014/3/19 La Faba 〜 サンティアゴまで残り 160.8km

ここのアルベルゲは朝食付きだった。

宿泊代はたったの5ユーロなのに。

それなので、少しのお金だが寄付金箱に入れて出てきた。

8時過ぎに出発。

昨晩泊まったところはまだ山の中腹だったので、昨日に引き続き登りが続いた。

 

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しばらく歩き、一息ついたカフェでWiFiがつなげられた。

父の行動が原因で両親がまたもめている、と日本にいる姉からSOSのメールが入っていた。

姉はうつを患い、10年以上実家で療養している。

 

歩き出した後は、父のことで頭がいっぱいだった。

まだそんなことをしてるのかと正直思った。

父親に対して、自分のなかでまだ消化できていないしこりが残っている。

接していると時々嫌悪感を抱く。

なぜだろうと考えた。

大会社の社長でも芸術家でもない。

むしろ真反対のリストラされる気の小さなサラリーマンだった父親だ。

人付き合いもうまいとは思えない。

それは自分と似ている。

父から父親らしい言葉をかけてもらった記憶は無いし、父から学ぶことはあまり無かった。

むしろ反面教師だった。

そう思っていた。

 

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そんな父に大学まで出してもらいここまで育ててもらった。

鍼灸マッサージの専門学校に通ったお金も実はまだ借りている。

財布のひもは母が握っているので父自身の小遣いは最低限。

何度か小遣いのことで両親がもめているのを見ていた。

子供にはどんどんお金が注がれる。

不服に感じることもあったと思う。

それでも父に自分のすることをとがめられたことはない。

父親に生意気な口もきいた。

それでも「誰の金で飯食って学校行ってんだ」なんて言われたことはない。

よほど言いたかったときもあるだろう。

気弱で言えなかったこともあるだろうが、それが父の子供に対する最大限の優しさだったのではないかと今気付いた。

どれだけの忍耐をもって何十年と働いてきたのだろう。

それなのに不器用な父をどこか小馬鹿にしていた。

自分は何を見ていたのか。

ねぎらいの言葉もまともに受けられず、歯を食いしばりながら何十年と家族のために働いていたのだ。

それだけで十分だ。

自分は父親を全く越えていなかった。

そう思ったら申し訳なくて涙が滲んだ。

おやじに謝ろう。

感謝の気持ちを伝えるようメールをしよう。

今後、父にもしっかり恩返しをしていこう。

そう心に決めた。

 

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15時頃、残り10Kmを残して遅めの昼食をとる。

小奇麗でなかなか素敵なカフェ。

奥にはテラス席もあったので、そこに一人座る。

ママもなかなか感じの良い人だ。

お肉のパスタを注文して待つ。

4ユーロだからあまり期待してなかった。

この前はのびたインスタントみたいなパスタが出てきたこともあった。

運ばれてくると、色のついたかわいいパスタにしっかりとしたお肉がのっていた。

思わずワオッと外国人ぽいリアクションをしていた。

食べても美味しい。

安いからといって手抜きをせずにちゃんと料理を提供してくれたことがなぜかスゴく嬉しかった。

父のことも考えながら食べていたので、どちらのせいかわからないが、泣きながらパスタを食べていた。

 

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残り10kmはやたらと長く感じた。

最後の5kmくらいは川の流れと緑のある風景に木々の間をくぐりぬける。

不思議な雰囲気で鳥肌がよく立っていた。

重くしっとりとした木々の中を歩く。

川の流れる音と小鳥がさえずる音。

人の姿はみかけない。

もしかしたらヨミの世界に迷い込んだのではないか、一瞬そう疑いたくなるような雰囲気の中を歩いていた。

 

今日歩いた距離 33.5km

今日までの合計距離 727.9km

サンティアゴまで残り 126.5km

経由街 La Faba – Samos