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世界遺産サンティアゴ巡礼路854kmを歩く -体調不良で歩く中での自問/19日目-



●これまでの道のり
1日目 初日31km / 2日目 猛烈な筋肉痛 / 3日目 大自然の中で一人大泣き / 4日目 足の痛みと色眼鏡の妄想 / 5日目 痛恨のエクストラステージ / 6日目 後半、雨の中での迷い / 7日目 旅仲間との出会い / 8日目 誰かの玉ねぎを使うこズルい自分 / 9日目 心身追い込まれる中での不思議な感覚 / 10日目 タフな作家さんと歩きッコ / 11日目 仲間とゆっくり歩く日 / 12日目 作家さんの○歳の誕生日 / 13日目 アクシデント!出発点に戻る! / 14日目 初めてのヒッチハイク / 15日目 作家さんと歩きくらべ / 16日目 毎日歩くという日常 / 17日目 作家さんのいない日 / 18日目 電池切れで体調崩す 

2014/3/10 Terradillos de los Templarios 〜 サンティアゴまで残り 382km

朝起きると、気力は出ないが程々にすっきりはしている。

ゼェンドン君も程々に回復しているよう。

お互いの様子を確認し、今日はどうするかという話になった。

彼は、タクシーで13km先のSahagúnまで行き、そこからまたバスに乗って次の大きな街まで進むという。

一緒にタクシーに乗らないかと誘ってくれる。

でも、乗り物には乗らないで自分は歩くよ、と伝える。

乗り物にのらないのなら今日は歩かないでもう一泊ここで体を休めたらいい、歩いたらまた熱が出るから、とゼェンドン君は心配してくれた。

今無理しても最後の100kmを歩かないとカミーノ終了の証明書がもらえないんだよ、とも。

少し考えるが、とにかく歩くよと伝える。

彼とはこの路の歩き方が少し違うと思った。

そう感じながらも、なぜ自分は歩くことにこだわっているのか自分自身疑問に思ったし、それに何の意味があるのかはっきりわからなかった。

ただ今の自分には歩くという選択肢しかない。

体調を考慮して今日は13km先のSahagúnまで行くことにした。

昨日、元気なうちに考えたときは目的の街にするには距離が短いと思ったが、今の体調だと、ちょっと長いなぁと思う。

 

ホージンは朝食を取っていたが、自分は食欲がなかったので食べずに出る。

タクシーを待つゼェンドン君と別れ、ホージンと一緒に出発。

始めはゆっくり二人で歩いていたが、ゆっくり行くから先に行っていいよと伝えると、徐々にホージンとの差が開いていった。

時々お腹がキリキリと痛む。

頭が痛む。

体に力が入らない。

 

途中6kmくらいのところで小さな街があった。

暖かい飲み物でも飲もうと思っていたが、開いてなかった。

なんでこんな辛いことしてるんだろうか。

これがどんな意味があるんだろうか。

なんの役に立つんだろうか。

歩きながら思った。

 

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丘を登り終えると、遠く向こうに街が見える。

あれが今日の目的地だ。

見えると気が緩むが、でもまだ6kmはある。

目的地が見えていてもなかなか距離が縮まらない。

蜃気楼に向かって歩いている気が時々する。

冷たい風がフリースを通して入ってくる。

暑くて脱いでいたジャケットをバックパックから取り出してまた着る。

バックパックを担ぐのがまた重たい。

 

お腹にやさしいものが食べたい。

あぁ、うどんなんかいいな。

小さい時に風邪を引くと母親が作ってくれていたのを思い出した。

その時はあたり前のように食べていたが、今思うとなんてありがたいんだと思う。

母親の愛情には感服する。

それでもいい年齢になるまで母親がしてくれるのは当たり前だ、むしろなんでうちの家庭は他の家と比べて、こうでないんだと不服に思っていたりした。

母親も一人の人間、完璧にできるわけではない。

それがはっきりわかったのはここ数年だ。

それからは母親には感謝の気持ちしかない。

心配をかける二人のデカい子供はいるけれど、自分の好きな人生を生きてほしいと思う。

 

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ゆっくりゆっくりだけどSahagúnに着いた。

やっぱ歩けば悪化する。

時刻は12時半を回ったところ。

 

アルベルゲを見つけるが開いてない。

14時に開くと誰かが教えてくれた。

近くのカフェで時間を潰そう。

カフェに向うところでホージンがひょっこり現れた。

昼食を取っていたという。

大丈夫か?と心配してくれるが、こちらは大丈夫とは言えなかった。

ホージンはこちらを気にかけながら次の街へ歩いて行った。

まさかこんな形でまた一人になるとは思わなかったな。

 

カフェでホットチョコレートを飲み一息ついてうなだれていた。

一言断っておこうと店員さんにアルベルゲが開くまでここで休ませて欲しいと伝える。

すると、そこは今はオープンしてないわ、少し歩いたところに別のアルベルゲがあるわ、と地図で説明してくれた。

行ってみよう。

 

ふらふらと歩いていくと確かにあった。

ドアも開いた。

しかし誰もいない。

とりあえずソファに腰掛けて人を待つ。

いつの間にかソファに横になり眠っていた。

静かだ。

 

結局二時間ほど待ったが誰も来ないのでベッドで横にならせてもらった。

夕暮れ時に目が覚めてフロアに行くと、スタッフの人が来ていて、みんなの手続きをしてくれていた。

そういう段取りだったようだ。

 

今日歩いた距離 13.3km

今日までの合計距離 485.7km

サンティアゴまで残り 368.7km

経由街 Terradillos de los Templarios – Sahagún