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世界遺産サンティアゴ巡礼路854kmを歩く -心身追い込まれる中での不思議な感覚/9日目-

●これまでの道のり
1日目 初日31km / 2日目 猛烈な筋肉痛 / 3日目 大自然の中で一人大泣き / 4日目 足の痛みと色眼鏡の妄想 / 5日目 痛恨のエクストラステージ / 6日目 後半、雨の中での迷い / 7日目 旅仲間との出会い / 8日目 誰かの玉ねぎを使うこズルい自分


2014/2/28 Los Arcos 〜 サンティアゴまで残り 645km

8時30分出発。

今のところ雨は上がっている。

でも今日は風が強く、台風並み。

雲行きも怪しい。

 

しばらく歩くとやっぱり雨も降ってきた。

腰掛けてレインウェアのパンツを履くのに手間取っていると誰かが手伝ってくれる。

誰だ?

顔を上げると韓国人ペアだった。

彼らの方が1時間ほど早く出ていったのになんでここに居るんだ?

聞くと間違った道を行ってしまい、また戻ってきたそうだ。

おお、なんてことだ。

 

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ここから三人で歩き始める。

風は強い向かい風。

追い風だったらと思っていたが、だんだんと慣れてきた。

風に体を預けるように歩くとけっこう楽。

壁に寄りかかりながら歩いてるよう。

二人はペースが上がらないので、徐々に距離が開いていった。

気づくと振り返っても二人の姿は見えなくなった。

お互い自分のペースで歩いたほうが良い。

  

雨がだいぶ強くなってきた。

うぅ、寒い

防水シューズもびっしょり。

水を含んだ分だけ重たい。

 

10km位歩き、街のバス停の屋根の下で休憩。

胸のあたりが冷たい。

水が滲みてきていた。

幸いその後は雨は弱まりそれ以上滲みてくることはなかった。

 

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歩きながら頭にトータス松本さんのサムライソウルが流れてきた。

詞が自分の気持ちに近くお気に入りの歌。

口ずさみながらウルウルした。

涙腺ゆるゆる。

 

道の後半を過ぎ、着地する度に足の裏の痛みが響く。

 

歩いていてふと、ある人に自分の最後を看取ってもらいたいと思い浮かんだ。

自分の最後をこうして意識することは今までほとんどなかった。

その時、自分の周りにゆっくり何かが降りていくような何とも言えない感じがした。

まわりにゆっくり雨が降るような霧が降るような、フワッとしていて、体がスーッと抜けるような感じがした。

不思議な感覚だった。

 

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今日の目的地の街が見えてきた。

坂を登りきり、なだらかな下り坂に差し掛かった時、雲の向こうに太陽がぼんやり光を放っていた。

その太陽に向かって光をもらうよう自然と両手を広げていた。

こうして光を受けつつも、逆に自分の魂を授けてもいいと思った。

そしてこんな思いが浮かんできた。

 

この命を世の中のために使ってください

 

自分のためだけでなく、世の中のために使いたい、と。 

また涙が流れた。

寒い雨風の中、痛みと共に歩いてだいぶ感情が高ぶっている。

だいぶ思いつめている。

夜になれば多分もうほとんどそんな気持ちは薄れているだろう。

しかしこれを日本に戻っても少しでも同じ気持ちを持っていれたらだいぶ違う生き方になるだろうと思った。

 

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夕方16時半頃、アルベルゲに着く。

そこに東洋人がボランティアで働いていた。

日本人かと思ったが、韓国人だった。

35歳の同い年、スペインに25年住んでいるという。

夕食はコックである彼がパエリヤを作ってくれた。

スペインでパエリヤを食べるのは初めて。

チキンモリモリで美味かった。

同室に泊まっているスペイン人3人も加わる。

テーブルにはワインにチーズにチョリソー、それっぽい雰囲気だ。

彼らは夜に仮装パーティに行くそう。

君もどうだと誘ってくれた。

行ったら楽しいのはわかっている。

けど体が動かないので泣く泣く断る。

 

後ろ髪をひかれながら早めにベッドに入った。

韓国人のホージンは宿には来なかった。

この天候だったし、手前の街で泊まっているのかもしれない。

 

今日歩いた距離 28km

今日までの合計距離 237.4km

サンティアゴまで残り 617km

経由街 Los Arcos – Logroña