Kato Shu FRPS

写真を撮って文章を書いて時々お話をしています *英国王立写真協会RPS フェロー *日…

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写真を撮って文章を書いて時々お話をしています *英国王立写真協会RPS フェロー *日本写真家協会JPS 正会員 *無断転載は厳禁です。 https://katoshu.art

記事一覧

スコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜

2022年9月8日(GMT)、エリザベス二世女王陛下が亡くなられました。 実は少し前に、いずれ女王陛下が亡くなられたら、次の国王の戴冠式で「運命の石」はどうなるのだろう?…

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1年前
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世界のはての島、世界遺産セント・キルダ

セント・キルダは英国西岸沖に連なるアウターヘブリディーズ諸島の中で最も西の果てに孤立する群島で、4つの小島と巨大な離れ岩(海柱食)で構成されている。年中吹き荒ぶ…

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2年前
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「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました

「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました。講師は大門美奈さん。 今年はスコットランドから帰国するやCovid-19で閉じこもりの日々…こ…

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3年前
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ロッコール展 「円か」

ミノルタ ロッコールレンズで撮られた写真でのロッコール展 「円か」(写真企画室ホトリ)が昨日終了しました。 私は"鷹の目ロッコール"こと Minolta MC-ROKKOR PG 58mm F…

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3年前
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Storm

「3日の月曜日?その日は嵐で船は出ないよ!」 1月30日、私は南ユイスト島の小さな港のホテルに泊まっていた。この先の旅の予定を聞かれ答えた際に、ホテルのおじさんから…

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4年前
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Leica M10モノクローム

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4年前
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いま写真集を作っています

今秋、自身初の個展を10月16日よりKKAGさんで開催いたします。 そしてそれに間に合うよう、いま写真集を一生懸命制作しています。このところはお休み返上、お盆も何もあり…

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5年前
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Spinning Mill

本島の西端、サンドネス(Sandness)という集落に紡績工場がある。私はサンドネスの先のハクスター(Huxter)にある古い水車小屋跡を訪れたあと、この紡績工場に立ち寄っ…

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5年前
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ハインケル HE111

フェア島の飛行場のある丘をくだると、集落への道が続いている。 その道を外れ、牧場の中を海の方向へまっすぐ進む。 牧草地の中は泥濘んでいて、ところどころ水たまりに…

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5年前
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「島の灯台守」 ミノルタンX7 展示statement

フェア島は、シェトランド諸島を構成する島の一つで、オークニー諸島とシェトランド諸島の間に浮かぶ孤島です。最長4.8km、幅2.4km、面積わずか5.61km²の小さな島で、人…

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5年前
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「Up Helly Aa」(女子カメ展2 statement)

「Up Helly Aa」(アップヘリーアー) シェトランド諸島は英国の最北に浮かぶ島々です。メイン島の面積は約1,470㎢で沖縄本島(約1,200㎢)よりもやや大きな島です。シェ…

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5年前
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空港での手荷物検査のこと

シェトランド(スコットランド)へ行って参りました。今回の旅程では、フィルムをX線検査を通さずに全て手検査をして貰うようお願いしました。そのことを少し書き留めま…

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5年前
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悲しい樹

「綺麗ね…でも、かわいそう…」 彼女はそう言って淋しそうに目を落とした。 朝もやに佇んでいたその樹は、枝葉の至る所で、小枝がボール状にまとまっていて、まるでボン…

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5年前
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少年

ヴォーの港で、自転車に乗った少年がひとりでぐるぐると遊んでいた。 彼は港の先まで行って戻ってきたかと思うと、民家の方へ消えてゆき、そのうちまた戻ってきた。 私は…

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5年前
6

綺麗な石

夕刻の浜辺に壮年の夫婦がいた。 二人で何かを熱心に探している様子だったので、私は何を探しているのか尋ねた。 「綺麗な石を拾っているのよ」と彼女は楽しそうに答えた…

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5年前

ブロッホ

ブロッホを巡っていた。 地図に小さく記されていたブロッホへ向かっていると、途中で車道が途絶えてしまった。私は車を停め、農道のようなあぜ道を歩いて丘を登った。 辺…

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5年前
スコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜

スコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜

2022年9月8日(GMT)、エリザベス二世女王陛下が亡くなられました。
実は少し前に、いずれ女王陛下が亡くなられたら、次の国王の戴冠式で「運命の石」はどうなるのだろう?
そんなことを夫と話題にしていました。
運命の石?戴冠式?いったい何のこと…?と思われるでしょう。
このスコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜について少しかいつま

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世界のはての島、世界遺産セント・キルダ

世界のはての島、世界遺産セント・キルダ

セント・キルダは英国西岸沖に連なるアウターヘブリディーズ諸島の中で最も西の果てに孤立する群島で、4つの小島と巨大な離れ岩(海柱食)で構成されている。年中吹き荒ぶ暴風と荒波、そして海から高くそびえる断崖絶壁は人々が島に近づくことを長らく拒絶してきた。この島には嵐の吹き荒れる冬は勿論、夏ですら近づくことは容易ではなかった。唯一の有人島だったヒルタ島は7㎢に満たない小さな島で、土地は痩せており、強風で木

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「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました

「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました

「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました。講師は大門美奈さん。

今年はスコットランドから帰国するやCovid-19で閉じこもりの日々…この半年は、軽いスナップ以外は集中して撮ることはほとんどと言っていいほどありませんでした。何よりも刺激を受けたかったのが第一、それに大門さんにお会いしたかったのです。

新宿北村写真機店に集合し、軽い説明のあとはすぐに新宿の街へ

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ロッコール展 「円か」

ロッコール展 「円か」

ミノルタ ロッコールレンズで撮られた写真でのロッコール展 「円か」(写真企画室ホトリ)が昨日終了しました。

私は"鷹の目ロッコール"こと Minolta MC-ROKKOR PG 58mm F1.2 で撮った写真を展示しました。5枚全て2018年夏にスコットランドで撮ったものですが、3枚はシェトランド諸島で、2枚はスペイサイド地方で撮ったフィルム写真です。シェトランド諸島の1枚とスペイサイド地方

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Storm

Storm

「3日の月曜日?その日は嵐で船は出ないよ!」

1月30日、私は南ユイスト島の小さな港のホテルに泊まっていた。この先の旅の予定を聞かれ答えた際に、ホテルのおじさんからそう返事が返ってきた。

当初の旅程では、この南ユイスト島から2月1日にバラ島へフェリーで渡り、そこで2泊してからこの南ユイスト島へ戻り、そのままストーノウェイまで帰る予定だった。途中、北ユイスト島からハリス島へもフェリーに乗らなけれ

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いま写真集を作っています

いま写真集を作っています

今秋、自身初の個展を10月16日よりKKAGさんで開催いたします。

そしてそれに間に合うよう、いま写真集を一生懸命制作しています。このところはお休み返上、お盆も何もありませんね笑。ずっとかかりっきりです。

これまでも写真集は6冊ほど作成してきたのですが、全て数冊のみのプライベート版でした。今回は初めて頒布できるものを作っていまして、この写真集は大好きなシェトランドへの私の思いを全力で余すことな

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Spinning Mill

Spinning Mill



本島の西端、サンドネス(Sandness)という集落に紡績工場がある。私はサンドネスの先のハクスター(Huxter)にある古い水車小屋跡を訪れたあと、この紡績工場に立ち寄った。

"Visitor Welcome" と看板には書かれていたが、それは夏季のことらしく、私が立ち寄った冬季にショップは営業していなかった。私は工場のマネージャーにお願いして、中を見学させてもらった。
しばらくすると、男

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ハインケル HE111

ハインケル HE111

フェア島の飛行場のある丘をくだると、集落への道が続いている。

その道を外れ、牧場の中を海の方向へまっすぐ進む。

牧草地の中は泥濘んでいて、ところどころ水たまりになっていた。気をつけないと足を取られる。靴は泥で汚れたけれど、私は気に留めず歩いた。

そして、ずっと遠くから小さく見えていた残骸に、私は辿り着いた。

Heinkel HE111。

この残骸は1941年にフェア島へ墜落したドイツ軍の

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「島の灯台守」 ミノルタンX7 展示statement



フェア島は、シェトランド諸島を構成する島の一つで、オークニー諸島とシェトランド諸島の間に浮かぶ孤島です。最長4.8km、幅2.4km、面積わずか5.61km²の小さな島で、人口は55人(2019年5月)。フェア島は他のシェトランド諸島と同様に、高緯度であることと年中吹き荒ぶ強風のため、木はまったく生育しません。

島の男性は主に農業に従事していますが、フェア島は世界的に有名なニット『フェア・ア

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「Up Helly Aa」(女子カメ展2 statement)



「Up Helly Aa」(アップヘリーアー)
シェトランド諸島は英国の最北に浮かぶ島々です。メイン島の面積は約1,470㎢で沖縄本島(約1,200㎢)よりもやや大きな島です。シェトランド諸島には約22,400人が暮らしていますが、人口密度は15人/㎢で、北海道の65人/㎢と比べると、とても少ないことがわかります。シェトランド諸島では、高緯度であることと年中吹き荒ぶ強風のため、木はまったく生育

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空港での手荷物検査のこと



シェトランド(スコットランド)へ行って参りました。今回の旅程では、フィルムをX線検査を通さずに全て手検査をして貰うようお願いしました。そのことを少し書き留めます。

今までは「ISO1600までは問題ない。」そのアナウンスを信じて、フィルムを手荷物検査で普通に通していました。ところが先日のウクライナでの撮影が終わり現像を受け取ると、現像を担当して頂いた方から「X線被りしてますよ…」と。唖然とし

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悲しい樹

悲しい樹

「綺麗ね…でも、かわいそう…」

彼女はそう言って淋しそうに目を落とした。

朝もやに佇んでいたその樹は、枝葉の至る所で、小枝がボール状にまとまっていて、まるでボンボンのようになっていた。それは何かの巣のようにもみえた。

宿り木だった。私はこんな木を見たことがなかったから、何となくそういう植生の樹なのだろうと思っていた。

だけどそれは違っていた。

「この樹はね、病気なのよ。」彼女の思いがけな

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少年

少年

ヴォーの港で、自転車に乗った少年がひとりでぐるぐると遊んでいた。

彼は港の先まで行って戻ってきたかと思うと、民家の方へ消えてゆき、そのうちまた戻ってきた。

私は持っていたトフィをバッグから取り出して、食べる?と聞いた。

「もちろん大好きだよ」

彼は無邪気に笑った。

ずっとこの島で暮らしているのか尋ねると、

「そうだよ。でもね、ママは僕が生まれる何年か前にこの島に来たんだって!」

どこ

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綺麗な石

綺麗な石

夕刻の浜辺に壮年の夫婦がいた。

二人で何かを熱心に探している様子だったので、私は何を探しているのか尋ねた。

「綺麗な石を拾っているのよ」と彼女は楽しそうに答えた。

見せてもらうとそれは丸っこい石で、白い半透明だったりグリーンのまだら模様をした石だった。

確かにとても綺麗で、そしてとても可愛らしかった。

「見てごらん、これらは火山の噴火でアイスランドから飛んで来た石なんだ。」

夫の方が採

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ブロッホ

ブロッホ

ブロッホを巡っていた。

地図に小さく記されていたブロッホへ向かっていると、途中で車道が途絶えてしまった。私は車を停め、農道のようなあぜ道を歩いて丘を登った。

辺り一面、見渡す限り牧場が広がっていて、ブロッホは見当たらなかった。

ほとんどのブロッホは海に面した所にある。私は海岸線を目指して歩いたが、そのうち農道すらも行き止まってしまった。

ここから先の牧場と麦畑はフェンスで囲われた私有地だ。

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