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Storm

「3日の月曜日?その日は嵐で船は出ないよ!」

1月30日、私は南ユイスト島の小さな港のホテルに泊まっていた。この先の旅の予定を聞かれ答えた際に、ホテルのおじさんからそう返事が返ってきた。

当初の旅程では、この南ユイスト島から2月1日にバラ島へフェリーで渡り、そこで2泊してからこの南ユイスト島へ戻り、そのままストーノウェイまで帰る予定だった。途中、北ユイスト島からハリス島へもフェリーに乗らなければならない。

ストームが来る。

おじさんの一言で、私は即座に船は絶対に欠航するだろうと悟った。日本なら3日後の天気は変わるかも知れない。だけどここでは勝手が違う。そしてこと天気については、島暮らしの地元の人の言うことには、ほぼ間違いがない。

ホテルのおじさんが欠航するよと言った。恐らくバラ島の滞在後フェリーは欠航する。予定通りには帰って来れない。これは大変なことになったね…。そう瞬時に思った。

今回の旅は短期間と言うこともあり、日程はかなりタイトに組んでいた。だから何か一つでも変更が出ると全体に影響してしまう。この時期の悪天候はわかってはいたけど、それが分かっていてもどうにもならない事はたくさんあった。昨年のシェトランドでも強風のため予定が確定できずに悩まされた。フェア島へ飛ぶ小型機を、私はティングウォール空港で風が収まるまで5日間待ったのだった。

私はバラ島の滞在2泊の予定を1日早く切り上げ、ストームが来る前にルイス島へ戻るか、それとも延泊してやり過ごすか、その決断に迫られることになった。延泊するとその後のフェリーやフライト、宿の手配など全てがやり直しとなってしまう。便数の少ない離島では、都会と違って来た便に乗るということは出来ない。ある程度綿密に旅程を計画し、接続も十分考えなければならなかった。

バラ島は今回の旅の最遠目的地だったので、訪れたい場所も撮りたい場所もたくさんあった。どうしても諦められない。散々悩んだ末、私はバラ島の滞在を3泊に延ばすことにした。その後の旅程は急ぎ全て組み直した。なんとかなりそうだった。

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2月3日、予報通りバラ島をストームが吹き荒れた。ホテルのおじさんの言う通り、バラ島どころか、アウターへブリディーズ全島のフェリーとフライトはことごとく全便欠航になった。猛烈な風だった。

風速65マイルを超える風が島中を吹き荒れる中、私は朝食を手短に済ませると、ホテルを出てバラ島のシンボル「海の女神」像を目指して山を登り始めた。