Kato Shu

写真を撮って文章を書いています。 *フィルム&デジタル*MINOLTA / K…

Kato Shu

写真を撮って文章を書いています。 *フィルム&デジタル*MINOLTA / KONICA MINOLTA / SONY / Leica / FUJIFILM / Pentax *無断転載は厳禁です。 https://katoshu.art

最近の記事

スコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜

2022年9月8日(GMT)、エリザベス二世女王陛下が亡くなられました。 実は少し前に、いずれ女王陛下が亡くなられたら、次の国王の戴冠式で「運命の石」はどうなるのだろう? そんなことを夫と話題にしていました。 運命の石?戴冠式?いったい何のこと…?と思われるでしょう。 このスコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜について少しかいつまんでお話したいと思います。 スコットランドの首都エディンバラから北へおよそ74

    • 世界のはての島、世界遺産セント・キルダ

      セント・キルダは英国西岸沖に連なるアウターヘブリディーズ諸島の中で最も西の果てに孤立する群島で、4つの小島と巨大な離れ岩(海柱食)で構成されている。年中吹き荒ぶ暴風と荒波、そして海から高くそびえる断崖絶壁は人々が島に近づくことを長らく拒絶してきた。この島には嵐の吹き荒れる冬は勿論、夏ですら近づくことは容易ではなかった。唯一の有人島だったヒルタ島は7㎢に満たない小さな島で、土地は痩せており、強風で木は1本も育たず、海は荒れ漁業も出来なかった。 だが、そんな過酷な自然環境にあっ

      • 「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました

        「Pen+ライカで撮る理由」発売記念ワークショップイベントに参加して来ました。講師は大門美奈さん。 今年はスコットランドから帰国するやCovid-19で閉じこもりの日々…この半年は、軽いスナップ以外は集中して撮ることはほとんどと言っていいほどありませんでした。何よりも刺激を受けたかったのが第一、それに大門さんにお会いしたかったのです。 新宿北村写真機店に集合し、軽い説明のあとはすぐに新宿の街へ放たれる参加者の面々笑。1hのフリー撮影で5枚を講評用に提出しなければなりません

        • ロッコール展 「円か」

          ミノルタ ロッコールレンズで撮られた写真でのロッコール展 「円か」(写真企画室ホトリ)が昨日終了しました。 私は"鷹の目ロッコール"こと Minolta MC-ROKKOR PG 58mm F1.2 で撮った写真を展示しました。5枚全て2018年夏にスコットランドで撮ったものですが、3枚はシェトランド諸島で、2枚はスペイサイド地方で撮ったフィルム写真です。シェトランド諸島の1枚とスペイサイド地方の2枚は今回のために新たに現像しプリント&額装をしました。 私のメイン作品(7

        スコットランドの「運命の石」〜The stone of destiny / Stone of Scone〜

          Storm

          「3日の月曜日?その日は嵐で船は出ないよ!」 1月30日、私は南ユイスト島の小さな港のホテルに泊まっていた。この先の旅の予定を聞かれ答えた際に、ホテルのおじさんからそう返事が返ってきた。 当初の旅程では、この南ユイスト島から2月1日にバラ島へフェリーで渡り、そこで2泊してからこの南ユイスト島へ戻り、そのままストーノウェイまで帰る予定だった。途中、北ユイスト島からハリス島へもフェリーに乗らなければならない。 ストームが来る。 おじさんの一言で、私は即座に船は絶対に欠航す

          Leica M10モノクローム

          Leica M10モノクローム

          いま写真集を作っています

          今秋、自身初の個展を10月16日よりKKAGさんで開催いたします。 そしてそれに間に合うよう、いま写真集を一生懸命制作しています。このところはお休み返上、お盆も何もありませんね笑。ずっとかかりっきりです。 これまでも写真集は6冊ほど作成してきたのですが、全て数冊のみのプライベート版でした。今回は初めて頒布できるものを作っていまして、この写真集は大好きなシェトランドへの私の思いを全力で余すことなく注ぎ込んだ写真集になると思います。 スコットランドの更に最北端に浮かぶシェト

          いま写真集を作っています

          Spinning Mill

          本島の西端、サンドネス(Sandness)という集落に紡績工場がある。私はサンドネスの先のハクスター(Huxter)にある古い水車小屋跡を訪れたあと、この紡績工場に立ち寄った。 "Visitor Welcome" と看板には書かれていたが、それは夏季のことらしく、私が立ち寄った冬季にショップは営業していなかった。私は工場のマネージャーにお願いして、中を見学させてもらった。 しばらくすると、男性の従業員が「こっちに来なよ!僕が解説してあげるよ!」と私に声をかけた。 「どう

          Spinning Mill

          ハインケル HE111

          フェア島の飛行場のある丘をくだると、集落への道が続いている。 その道を外れ、牧場の中を海の方向へまっすぐ進む。 牧草地の中は泥濘んでいて、ところどころ水たまりになっていた。気をつけないと足を取られる。靴は泥で汚れたけれど、私は気に留めず歩いた。 そして、ずっと遠くから小さく見えていた残骸に、私は辿り着いた。 Heinkel HE111。 この残骸は1941年にフェア島へ墜落したドイツ軍の爆撃機らしい。 もう80年近く、この地に横たわっている。 私には不思議と、こ

          ハインケル HE111

          「島の灯台守」 ミノルタンX7 展示statement

          フェア島は、シェトランド諸島を構成する島の一つで、オークニー諸島とシェトランド諸島の間に浮かぶ孤島です。最長4.8km、幅2.4km、面積わずか5.61km²の小さな島で、人口は55人(2019年5月)。フェア島は他のシェトランド諸島と同様に、高緯度であることと年中吹き荒ぶ強風のため、木はまったく生育しません。 島の男性は主に農業に従事していますが、フェア島は世界的に有名なニット『フェア・アイル』の産地で、島の女性の貴重な収入源となっています。 フェア島の北端と南端に

          「島の灯台守」 ミノルタンX7 展示statement

          「Up Helly Aa」(女子カメ展2 statement)

          「Up Helly Aa」(アップヘリーアー) シェトランド諸島は英国の最北に浮かぶ島々です。メイン島の面積は約1,470㎢で沖縄本島(約1,200㎢)よりもやや大きな島です。シェトランド諸島には約22,400人が暮らしていますが、人口密度は15人/㎢で、北海道の65人/㎢と比べると、とても少ないことがわかります。シェトランド諸島では、高緯度であることと年中吹き荒ぶ強風のため、木はまったく生育しません。植物は生育しますが、草々はまるで大地にしがみついているかのように地を覆

          「Up Helly Aa」(女子カメ展2 statement)

          空港での手荷物検査のこと

          シェトランド(スコットランド)へ行って参りました。今回の旅程では、フィルムをX線検査を通さずに全て手検査をして貰うようお願いしました。そのことを少し書き留めます。 今までは「ISO1600までは問題ない。」そのアナウンスを信じて、フィルムを手荷物検査で普通に通していました。ところが先日のウクライナでの撮影が終わり現像を受け取ると、現像を担当して頂いた方から「X線被りしてますよ…」と。唖然としました。実際、折角のPORTRA 800が本来の元気を全く失った仕上がりになって

          空港での手荷物検査のこと

          悲しい樹

          「綺麗ね…でも、かわいそう…」 彼女はそう言って淋しそうに目を落とした。 朝もやに佇んでいたその樹は、枝葉の至る所で、小枝がボール状にまとまっていて、まるでボンボンのようになっていた。それは何かの巣のようにもみえた。 宿り木だった。私はこんな木を見たことがなかったから、何となくそういう植生の樹なのだろうと思っていた。 だけどそれは違っていた。 「この樹はね、病気なのよ。」彼女の思いがけない言葉に私は驚いた。 「こんな風にね、枝葉が丸くなって、そしてやがて枯れて死ん

          悲しい樹

          少年

          ヴォーの港で、自転車に乗った少年がひとりでぐるぐると遊んでいた。 彼は港の先まで行って戻ってきたかと思うと、民家の方へ消えてゆき、そのうちまた戻ってきた。 私は持っていたトフィをバッグから取り出して、食べる?と聞いた。 「もちろん大好きだよ」 彼は無邪気に笑った。 ずっとこの島で暮らしているのか尋ねると、 「そうだよ。でもね、ママは僕が生まれる何年か前にこの島に来たんだって!」 どこの街からやって来たのかについては知らないと答えた。 「ううん…僕にはよくはわか

          綺麗な石

          夕刻の浜辺に壮年の夫婦がいた。 二人で何かを熱心に探している様子だったので、私は何を探しているのか尋ねた。 「綺麗な石を拾っているのよ」と彼女は楽しそうに答えた。 見せてもらうとそれは丸っこい石で、白い半透明だったりグリーンのまだら模様をした石だった。 確かにとても綺麗で、そしてとても可愛らしかった。 「見てごらん、これらは火山の噴火でアイスランドから飛んで来た石なんだ。」 夫の方が採集した石を私に見せてくれた。 差し出された土色の小石は、気泡のような無数の小さ

          綺麗な石

          ブロッホ

          ブロッホを巡っていた。 地図に小さく記されていたブロッホへ向かっていると、途中で車道が途絶えてしまった。私は車を停め、農道のようなあぜ道を歩いて丘を登った。 辺り一面、見渡す限り牧場が広がっていて、ブロッホは見当たらなかった。 ほとんどのブロッホは海に面した所にある。私は海岸線を目指して歩いたが、そのうち農道すらも行き止まってしまった。 ここから先の牧場と麦畑はフェンスで囲われた私有地だ。 ちょうど作業を終えたらしい重機に乗った農主が、牧場の中から通りかかった。私は

          ブロッホ