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novels

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オリジナル小説を書いていきます。 遅筆ですが、読んで頂けると嬉しいです。
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#百合

【創作百合】no title 02

Moonlight Serenade せっかくならその瞬間まで起きていようと、ポーカーやら花札やらで時間をつぶし、燃え朽ちる薪を尻目に、今は本を。
療養に家元を離れ来た少女と、その町に建つ屋敷の少女とが出会うあたりで、私を呼ぶ声が聞こえた。この人は緋い糸を探り解く、探偵の話を読んでいたんじゃなかったかしら。

「あのさ、もしよかったら……」

リンゴとはよく言ったものね。熱でもあるのかと思うほどに

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【創作百合】no title 03

Daffodil  うたたね 背の高い棚にはたくさんの本。木のデスクには、先程まで読まれていたらしいのが数冊、開かれたままになっている。そして、それらを先程まで読んでいたらしいのが1人、折り曲げた両腕に顔をうずめている。シャツを着込んだ背中が、膨らんでは戻るのを規則的に繰り返す他は、どこも微動だにしない。

 まったく、まだ寒い日が続いているというのに何も羽織らず……。

 ん……。水の中にいるみ

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【創作百合】no title 01

【創作百合】no title 01

星空の下、丘の上で、好きな人の隣でギターを弾く
隣にいるのは大切な人で、安直に触れてはいけないほど、尊い人。

空気の澄みきったこの季節、二人で丘の上、隣り合って座っている。どちらが誘ったのか、どういう経緯でこうすることになったのかは忘れてしまった。彼女は覚えているかもしれない。しっかりしているから。だけど、もうそういうのはどうでも良いんだ。今大切なのは、そういうことじゃないから。
彼女は隣でただ

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