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ショートショート

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2023年10月の記事一覧

ショートショート 構って

急に寂しくなったので、
僕は家から出て、
「おーい! 誰か俺と話しようぜ!
俺とオレンジでも食べながら話しようぜ!
ドラマでもアニメでも最新家電でも
話題は何でもいい!
とにかく俺とお話しようぜ!
俺は今寂しいんだ!
誰か俺に構ってくれ!
構ってくれないなら
俺は何するか分かんないぜ!
全然俺、今から人を傷つけてもいいからね! だって寂しささえ紛れたら、
それでいいんだから!
ねぇ! 誰も構ってく

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ショートショート 笑顔の人

いともたやすく糸を絶やした午前10時、
僕は糸を買いに外へ出た。

すると、その2分後、
名前は知らないけど、
常に笑顔の人
という認識はあるおじさんの足を
踏んでしまった。

その瞬間僕は、
特に申し訳ないという気持ちもなく、
「あ、すいません」
って感じの対応を取ったんだけど、
おじさんはそれでも笑顔で、
なんならもっと笑顔になった。

それだから僕は、
なんか変な恐怖を感じて、
「いや、ホン

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ショートショート タイムオーバー

こうなることは全部、最初から、
熱々おでんを食べている時から、
隙間に落ちた物を取ろうと
腕を精一杯伸ばしている時から、
分かってはいたんだけど、
僕がのんきにカフェで
コーヒーの飲み比べをしていたせいで、
それを未然に防ぐことはできなかった。

くそっ!
こうなることは全部分かっていたのに!
何をしているんだ僕は!
マヌケすぎる!
あれじゃん! バカじゃん!
自分に失望した。
くそっ……くそっ!

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ショートショート 未来光明

落ちこぼれな同学年が
陽気に歌を歌っていたので、
俺はとりあえず、その歌に合わせ、
リズミカルなダンスをしていく。

すると、
そこに同学年の秀才がやってきて
「活発だな」
と発言してきた。

その発言に対し、
俺は踊りながら
「まぁな、それが俺という存在の証明だし」
なんて反応していき、
「今後とも
俺という存在から目を離さないでくれ」
とヨロシクオネガイした。

そうしたところ秀才は、
笑顔を

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ショートショート 無笑

一緒に居てもつまらない友人と一緒に花火をして、なんの盛り上がりもない夜を過ごす今日、
思い返せば
朝からずっと今日はつまらなかった。

今日はまだ
一度たりとも笑ってないんじゃないか?
笑った覚えがない。

信号待ちをしている時に、
抱っこされている赤ちゃんから笑いかけられたけど、僕はそれを平然と無視したし、
木に引っ掛かっている風船を取ってあげて、
女の子から
「ありがとう!」
と笑顔を向けられ

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ショートショート (((蝉)))

本日十匹目の蝉を虫カゴに入れた吉倉くんは、
ふと我に返り、
「こんなに蝉を取ってどうするんだ?」
と思った。

ただ、そうなったからと言って、
吉倉くんは蝉を逃がしてやろうとはせず、
「ミンミンうるせーな」
と愚痴りながらも、蝉と共に家へと帰った。

その翌日、
朝食に炒められた蝉を
十匹出された吉倉くんは、
「ええ……お母さん、ええ……」
とテンションダダ下がりの朝をお見舞いされる訳だけど、吉倉

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ショートショート 忘れち

だからそう、
だから言ったんだ僕は。
だからあの時、
僕は興奮を抑えられず、
パンを食い散らかしながら言ったじゃん。

君の嫌そうな顔は覚えているよ。
遂にキレて、
「お前、食いながら話すなよ!」
って言われたのは覚えているよ。
でも僕は、
君の注意を無視して食いながら言った。
君も覚えているでしょ?
あの時のことを。

でも、ごめん。
なんて言ったっけ僕?
「だから言った」
って今君に、偉そうに

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