ショートショート　無笑

一緒に居てもつまらない友人と一緒に花火をして、なんの盛り上がりもない夜を過ごす今日、
思い返せば
朝からずっと今日はつまらなかった。

今日はまだ
一度たりとも笑ってないんじゃないか？
笑った覚えがない。

信号待ちをしている時に、
抱っこされている赤ちゃんから笑いかけられたけど、僕はそれを平然と無視したし、
木に引っ掛かっている風船を取ってあげて、
女の子から
「ありがとう！」
と笑顔を向けられた時も、
僕は笑い返してやることなく
死んだ顔をしていたし、
嫌いな人が盛大に転んだ時も、
僕は特に嬉しい感情になることはなく、
「ふーん」
って感じだったし、
読みかけの本をやっと読み終えた時も、
僕はなんの感想も抱くことなく、
小さく溜め息を吐いただけだったし、
街中を歩く謎のセクシー美女軍団に手を振られた時も、僕は一応手を振り返したけど、
表情は無だったし、
アイスのアタリが出ても、
僕は特に
テンションが上がるということもなく、
さくっとそのアタリ棒をゴミ箱に捨てたし、
おっきな夢を語る男の子に出会っても、
僕は別に微笑ましいなどと思うことはなく、
ただただ大きなあくびが出るだけだったし、
今日は本当につまらなかった。

なんて振り返っていたら
線香花火の火の玉が落ちた。
明日は、
笑える日になったらいいな。