邦画太郎

50代の男性です。映画の鑑賞歴はざっと40年になります。理由あって今年から日本映画専門…

邦画太郎

50代の男性です。映画の鑑賞歴はざっと40年になります。理由あって今年から日本映画専門の観客となりました。見た映画の感想と、一観客として映画館や映画産業について考えたりしたことを随時、投稿していきます。

最近の記事

誰も知らない

というタイトルの割には、多くの人に知られている映画。これだけ地味で 悲惨で救われようがない映画が、多くの人に見られていることがすごいと 思う。 私はこの映画をもう一度見たいとは思わないが、見なければよかったとも 思わない。映画を見ている間、緻密な脚本、抑制された演出、精度の高い 撮影などに感心しつつも、心の奥では映画が早く終わってくれることを祈っていた。 YOUの演じる母親が4人の幼い子供たちを完全に見捨てて出ていくまでが 50分。長い。結果的に母親が子供たちを見捨てるまで

    • バトルロワイアル

      突然だが不定期の特集として行う予定だった「その後の深作欣二」は今回で中止する。「バトルロワイアル」を見て続ける意欲が失せてしまった。 もっとも、第1回の投稿に誰もスキしてないので、何の問題もないと思うのだが。 「バトルロワイアル」という傑作を今回の特集の締めにして何度か深作の後期の映画を語っていこうと思っていたが、「バトルロワイアル」が傑作でも何でもない映画だったので、特集自体を続ける意欲が無くなってしまった。 というわけで、残念ながら「バトルロワイアル」はもう一度見る価

      • 旧態依然の正しい映画人たち

        <五藤氏の適正な脚本料が未払いにされていた> 私が今回のケースで一番怒りを感じたのが、この「脚本料10万円事件」だ。あえて攻撃的な意図を込めて「事件」と書いたが、これを事件ではなく インディペンデントな映画業界での長年の慣習にすぎないと考える映画人たちがいる。まずそのことに驚いた。 映画「天上の花」のプロデューサーは寺脇研と配給会社・太秦の代表である 小林三四郎だが、彼らの言い分は概ねこのようなものだ。 「1500万という予算で時代物の映画を撮るのは正直、難しい。  俳

        • アマチュアライターの悲劇

          先日、新聞の社会面の小さな記事で荒井晴彦が弟子の脚本家が書いた映画の脚本を弟子に無許可で改変した行為で賠償を命じられたということを知って少し驚いた。 驚いたのは荒井晴彦が人様から訴えられるような人ではないと思ったからではなく、荒井氏本人が20年以上前に、今回とそっくり同じようなケースで 脚本改変の「被害者」になっていたからだ。 ちなみにこのときの「加害者」は監督の阪本順治で、映画は「KT」。 映画のクランクインが迫っていて、話し合いで解決している時間的な余裕がなかったとい

        誰も知らない

          赤線地帯

          大宮から都内の京橋まで片道1時間半かけて見に行ったが、それだけの甲斐はある良い映画だった。日本映画黄金時代の巨匠・溝口健二の遺作である。 正直にいうと、私はこれまで溝口の映画とはあまり相性がよくない。敗戦後に監督した有名どころの作品を何本か見ただけで、「山椒大夫」はあまりに退屈で最後まで見られなかった。  私がこれまでに見た溝口の映画では「近松物語」が最高傑作で、他の映画はどうもあまり好きになれない(というか、あまり見る気が起きない)ものだったが、この「赤線地帯」は期待

          その後の深作欣二 vol.1

          今回から不定期で深作欣二の中期以降の作品を論じていこうと思う。 タイトルの「その後」とは東映実録やくざ路線が終了した、その後という意味である。まず第1弾は深作が初めて監督した時代劇「柳生一族の陰謀」。 私はこの映画をテレビで4回ほど、映画館で1回見ている。映画館のスクリーンでこの映画のダイナミズムを体感したときは、「七人の侍」や「十三人の刺客」に匹敵する時代劇大作の傑作だと感じた。 今回、テレビの画面で見てみると、確かに面白い映画だが傑作だとは思わなかった。深作欣二の集団

          その後の深作欣二 vol.1

          映画館の入場料金

          先日、ふと目にしたネット上のニュースで、早稲田松竹が25年ぶりに入場料金を値上げしたことを知りました。早稲田松竹はいわゆる名画座で、2本立てラインナップを週替わりで上映してくれる希少な映画館です。 (すでに承知の方も多いと思いますが、多くの名画座では上映ラインナップが原則日替わりになっています。そのため見たい映画が土日に上映されないという事態も珍しくありません) 私が好きな映画館ということもあって、正直、ここまでよく値上げせずに耐えてくれたと思います。200円の値上げはや

          映画館の入場料金

          湖の女たち

          公開2日目の土曜日に、しかも晴天の日に見に行ったのに観客は私を含めて6人。おそらく、この映画の不入りは確実だろう。しかし残念だとは思えない。以下にこの意欲的な映画の不入りに同情できない理由を書いておく。 1. 映画の内容が観客の(私の)期待を裏切る 私は事前にこの映画をミステリーでもあり、ノワールでもある映画なのだと期待をして見に行った。しかし実際には、この映画はミステリーでもないし、ノワールでもない。日本社会で(特に事なかれ主義が蔓延する組織で)絶望し、疲弊し

          湖の女たち

          死刑にいたる病

          ネタバレ厳禁の方は要注意! 私はこの映画を2時間程度の退屈しのぎに見た。で、予想通りに退屈しのぎにはなった。 文字通り、それ以上でもそれ以下でもない映画。いわゆる1回見るには悪くないが、絶対に2回以上見る必要のない映画であり、以下、その理由を箇条書きにしていく。 1. 映画のタイトルが観客に誤解を生む。 この映画の原作は元々「チェインドッグ」というタイトルで、後に「死刑にいたる病」に改題されたらしい。しかし、見れば分かるがこの映画の主題は死刑制度ではなく、児童虐

          死刑にいたる病

          忖度と映画の間で

          つい先ほど、「空母いぶき」という映画を見たので、この映画の感想をアップしようと思い、ウィキで映画の基礎情報を調べてみました。 そこでこの映画の原作漫画の基本設定が大幅に(ウルトラ級に)映画用に脚色されていたことを知り、愕然としました。私は原作漫画を全く知らないので、原作漫画の基本設定も映画と同様なのだろうと、勝手に思い込んでいたのです。 正直、この改変のあまりの離れ業にショックを受けて、鑑賞後、映画に対して抱いていた(そこそこの)好印象も吹き飛んでしまいました。なので、今

          忖度と映画の間で

          障碍者割引について思うところ その2

          たぶん最大の問題は、映画館の券売機で障碍者手帳の提示なしにチケットが購入できるということだと思います。 といって、映画館の券売機に手帳の認証機能を導入するのは、映画館の経営から言っても、個人情報保護の面から言っても現実的ではない。 ならば、すべての映画館で上映前のチケットのもぎりを必ず行って、その際に手帳の提示を求めるのはどうか。これができるのなら「もうやっている」 でしょうね。 受付でのチケット購入とは異なり、上映前にスクリーンの外に並んでいる観客は、たぶん早く座席に

          障碍者割引について思うところ その2

          障碍者割引について思うところ

          先日、私は都内の映画館に行きました。そこで久しぶりに券売機ではなく受付でチケットを買うことになり、受付の男性から「チケットのカテゴリーを選んでください。」と言われたので、障碍者のカテゴリーでチケットを購入しました。その場で(一瞬、間があったので)持参していた障碍者手帳を受付の男性に提示しました。  記憶に間違いがなければ、私が映画館で従業員に障碍者手帳を見せたのは、これが初めてかもしれません。もしそうだとすると、この日初めて障碍者割引という制度を「正当に利用した」ことになり

          障碍者割引について思うところ

          夜明けのすべて

          私が三宅唱監督の映画を見るのは、「PLAYBACK」以来、これで2本目になる。たまたまだが同監督のデビュー作と最新作のみを見たことになる(正確に言うと長編デビュー作は「ろくでなし」だが、この映画はアマチュ  ア時代に製作されている)。 以前に見た「PLAYBACK」もそうだったが、この「夜明けのすべて」もまた語るのが難しい映画だ。決して物語は難解ではない。むしろ映画で語られる物語は極めて単純であり、平凡である。あまりにも平凡なので、お世辞にも脚本が面白いとは言い難い。

          夜明けのすべて

          砂の器

          ネタバレ厳禁の方は要注意! この映画を最初に見たのは、市内にある図書館の視聴覚ホールだった。月に1回無料の映画鑑賞会が開催されていて、そこで私はこの日本映画史上に名高い映像叙事詩と出会い、この映画を見た誰もがそうであるように、クライマックスの演奏会 ― 加藤嘉と子役の少年とが日本列島を放浪する無言の映像と、オーケストラによる悲壮なテーマ曲に、さらに丹波哲郎の語りに声を上げずに号泣した。  今回、この映画を見るのは4回目くらいだと思うが、やはり初見時と同じように、あの問答

          JCのために

          最初の記事は自分がこれからやってみたいことを投稿するのがおすすめだということなので、素直にそうしておこうと思います。 私は映画鑑賞歴(ざっと)40年の映画フアンです。日本映画とアメリカ映画を中心にこれまでに無数の映画を見てきました。しかし、ここ数年、映画を見てもひどく虚しいと思うようになりました。映画がつまらないから、ではありません。たとえ文句のつけようのない傑作を見ても、やはりどうしようもない虚しさを感じるのです。 私は少々、特異な人生を歩んできたもので、中学生から高校

          JCのために