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障碍者割引について思うところ その2

たぶん最大の問題は、映画館の券売機で障碍者手帳の提示なしにチケットが購入できるということだと思います。

といって、映画館の券売機に手帳の認証機能を導入するのは、映画館の経営から言っても、個人情報保護の面から言っても現実的ではない。

ならば、すべての映画館で上映前のチケットのもぎりを必ず行って、その際に手帳の提示を求めるのはどうか。これができるのなら「もうやっている」
でしょうね。

受付でのチケット購入とは異なり、上映前にスクリーンの外に並んでいる観客は、たぶん早く座席に着きたいと思っている(個人差はあるでしょうけど)。そういう状況で、従業員は観客のチケットを一枚一枚、目を凝らして
カテゴリーを確認しながらもぎる。

まれに障碍者割引のお客がいた場合、すぐに手帳を提示してくれればいいが、重度の精神障碍、もしくは重度の身体障碍を抱えた人の場合、すぐに手帳を取り出せないという事態も容易に想像できる。その人の後ろの方には、障碍者福祉に全く関心のない観客が苛立ちを露にしながら列に並んでいる・・

こういう事態をリアルに想定すると、「もぎりで手帳の確認」は実際の現場では非常に難しいのではないかと思います。少なくとも効率が最優先されるシネコンでは絶対に無理でしょう。

ならばいっそのこと、一般以外の何らかの割引カテゴリーを利用する観客は、すべて受付でチケットを購入することにしたらどうでしょう。

つまり映画館の券売機は利用できないし、ウェブ上でのチケットの購入もできないということです。とりあえず障碍者割引に話題を絞って考えると、
真っ先に想定されるのは「それはとんでもない障碍者差別じゃないか」
という反論です。

しかし障碍者差別ではありません。何故なら「一般以外の何らかの割引カテゴリーを利用するすべての観客」が対象になるからです。60歳以上の方、
中学生から大学生までの学生の方も券売機とウェブ購入を利用できなくなります。
しかし、これもまた現実には難しい。

アニメ映画の話題作などが特にそうですが、特定の傾向の映画には特定の年代層の観客が映画館に押し寄せることがあります。十代から二十代前半の観客や、逆に60代から70代の観客が特定の映画に大挙して押し寄せた場合
それらの観客をすべて受付で対応することになり、映画館に券売機を設置した意味がほとんどなくなります。

勿論、すべての映画館で毎回そのような事態になるとは思えませんが、若い世代に人気のあるアニメ映画がこれほど圧倒的な集客力をもつようになった
現在では、こうした事態を一過性のものと考えて映画館に対応をお願いするのは、・・たぶん無理でしょう。

では、どうすればいいのか。ここで私は本来、ありえない提案をしてみたいと思います。それは、障碍者割引を利用する観客だけが、映画館の受付でチケットを直に購入しなければならないというルールです。

言うまでもなく、これは明白な障碍者差別です。学生や高齢者には求めない
身分証明を障碍者にだけは求めるというルールですから。ただ、障碍当事者である私の意見としては、こうしたルールの要望を仮に映画館や映画業界から求められた場合、私個人は受け入れます。

まず、日本社会における障碍者の(特に軽度の障碍者の)数少ない権利の1つを守るという合理的な理由があること。他にも映画のチケットを一般料金の半額で入手できるというのは、映画の好きな者からすれば、とてつもなく
大きなメリット(恩恵)であること。障碍者の権利擁護と映画フアンとして享受する恩恵。

これらの2つを考えた場合、個人的にはこの「受付購入ルール」は受け入れるのがやむをえない差別だと考えます。少なくとも私は、多少の不自由と明白な差別を受け入れても、障碍者に認められた権利が事実上、健常者にも利用可能であるという、不条理な状態が是正されたほうがマシだと思います。

では、この「障碍者限定の受付チケット購入ルール」は映画館で実行できるものでしょうか。まずシネコンでは絶対に無理でしょう。仮に正当な理由があっても、大企業が自分から差別商法を実践するはずがないからです。
(もっとも数年前まで実践されていたレディースデイは立派な性差別商法だったんですけど)

どこか、勇気のあるミニシアターで実践してくれないでしょうか。

「ウチの映画館では必ず、どんな手段を使っても、障碍者割引のお客さん の手帳を確認する。」

こういう映画館、大歓迎です。あくまで個人的には、ですが。





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