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レントよりゆったりと〔随想録〕

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2017年11月の記事一覧

エッセイ「詞が詩になるとき」 #執筆観

 人と人との関係から生まれる表現の話をしたいと思う。

 小さい頃から作曲の真似事なんかを続けていて、10代の頃には学内で音楽ユニット活動をしていた。当時はglobe、Every Little Thing、D-LOOP(これは知る人ぞ知る)などが流行っていて、女性ボーカル+作詞・作曲・プロデュースを一挙に担当する男+αという形に憧れた。そして僕の作ったユニットは、女性ボーカルと僕の2人組から始まっ

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エッセイ「詩のお師匠さん」 #執筆観

 春は花に目を奪われる。夏は新緑の青さと陽の眩しさに圧倒される。〈秋は紅葉……〉。冬には足が家に向き心は内を向く。
 秋は紅葉。キンモクセイが香ったと思ったら、いつの間にかモミジやイチョウは視界を彩っている。でもそれは一瞬のこと。冬にうつろうひととき、疎らになった葉の隙間には幹や枝が覗く。秋の終わりには樹が主役になる。花でも実でも葉でもない。樹だ。

 「お師匠さん」
 あなたの顔を心に浮かべる。

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エッセイ「詩と小説」4. #執筆観

 本稿には少しばかりですが、東日本大震災についての内容を含みます。心的外傷等をお持ちの方は、どうぞご注意下さい。

 詩人・立原道造には『くん』が似合う。『君』ではダメだ。むしろ『きゅん』くらいでいい。
 『立原くん』『みちくん』『立原きゅん』……
 どうでしょうか?

 立原くんは1914年(大正3年)に生まれ、24才の若さで夭折した。同世代の詩人に中原中也(1907〜1937年)がいて、こちら

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エッセイ『ある王女の詩の変容』 #執筆観

 僕は言葉の力を信じている。ずっと胸の奥底に眠っていた或る言葉が、ふと目を覚ます瞬間に出くわしたことは、きっと誰にもあると思う。取り出したり、仕舞われたりするたびに、少しずつ意味が変わっていくことも……
 今回は或る漫画のセリフの話題。

 『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(以下『ダイ』)は1989年から8年間に渡って連載された漫画で、原作者である三条陸氏は多くの人気漫画や実写特撮作

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エッセイ「詩と小説」3. #執筆観

 先日、まったく接点のない分野にいる2人が、それぞれ、違う場所で、同じ日に同じようなことを話しているのを聞いた。デジャヴ? きっとそうじゃない。

 あるフランス文学者は言った。
「ニーチェってさ、なんだか難しいこと書いてて、正直俺もよく分からないんだけど、なんとなく字面見ているだけでカッコ良くて引き込まれない?」

「方言の昔話は意味を理解しようとして聞くものではないのです。なんとなく意味のわか

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