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朝5時の収穫と祖母の味。セルビアの青年が過ごした祖父母との幼少時代

久しぶりに、英語でのインタビューを再開します。今回話を聞いたのは、セルビア出身の青年とその祖父母の物語です。彼が子どもの頃、両親は共働きだったため、彼はいつも祖母や祖父と過ごしていたそうです。彼がセルビアののどかな村でどのような時間を過ごしたのか、少し覗いてみましょう。

「子ども時代、セルビアのある村に家族と一緒に住んでいたよ。仕事で忙しい父に代わって、よく祖父と車で出かけていた。車の中で大好きな空手ごっこをして遊んでいた記憶がある。

祖父は誰に対しても公平で、決して嘘をついたり、盗んだり、他人をだまして利益を得ようとすることがない。祖父の行動は一貫しており、定められたルールを守ろうとする信頼できる人だった。同時に、祖父は時間に正確で、常に社会の秩序を維持しようと心がけていたよ」

彼の祖父は、他人との関係や社会的秩序を最優先させる日本人ぽい気質の人だったのかもしれません。

年間約5000キロのトウモロコシを収穫

「祖父とは、よく一緒に工作をしてたな。木を切って、テーブルやベンチなどをたくさん作った記憶がある。木を切るのも楽しいし、組み立てていく作業も楽しかったな。

また、祖父とはよく一緒にトウモロコシの収穫をしたよ。毎朝5時頃起きて、畑に行きトウモロコシを収穫するんだけど、けっこう手間がかかてね。朝早くトウモロコシを収穫しようとすると、皮に水分を含んで柔らかくなっているからなかなかうまく取れなくてね。朝日が昇って皮が乾いてくると収穫しやすくなるんだ。

最初、トウモロコシの収穫は手作業でやっていたんだけど、途中で祖父が機械を導入したことで効率よく収穫できるようになったよ。収穫したトウモロコシは約5000キロあり、それを袋詰めして1年間放置し、最終的には鶏や豚など家畜の飼料としたんだ。残った資料は、ほかの農家の人に売ってた」

彼の実家の農園がどれほど広かったのかはわかりませんが、相当な広さがあったのだと思います。トマトやパプリカなどの野菜なども一緒に育てていたそうなので、完全な自給自足生活を送っていたのでしょう。彼によると、彼の祖父は家長として家族を守ると同時に、農場での仕事に並々ならぬ情熱をもって取り組んでいていたといいます。

「祖父は、農場での仕事を誇りに思っていて、祖父が亡くなったあともこの土地を受け継いでほしいといっていたのをよく覚えている。それで僕は彼に、僕がきちんと対処するから安心してと伝えていたんだ」

彼の祖父は、今はこの世にいないけれど、農場は彼の両親が受け継いでいるそうです。一方、彼の祖母はどんな人だったのでしょうか?

祖母と過ごしたキッチンでの思い出

「祖母は、昔からよくもう死ぬといってたよ。でも、今年で87歳になるけど、まだまだ元気だね(笑)。祖母には、よくちゃんと最期まで面倒見るから安心してねと話して安心させてたよ」

彼は、現在料理をするのがとても上手で、自家製のパンを作った写真などを時々見せてくれます。形のいい丸いパンは、こんがりと焼き目がついてとてもおいしそうでした。彼は、子どもの頃よく祖母と一緒に料理をしていたといいます。彼の料理好きは、彼の祖母と過ごした子どもの頃の思い出からきているのかもしれません。

「子どもの頃おなかがすくと、いつも祖母が食事を用意してくれた。よく妹と二人、キッチンで祖母が料理をするのとを手伝ったんだけど、その時間がすごく好きだった。妹とはいつも一緒だったけど、そのときのことを妹はどう思っているかな。僕は穏やかな性格で、祖父母と一緒に過ごす時間がすごく好きだったけど、妹はどうかな。僕と妹はきょうだいだけど性格が違うから好きじゃなかったと思う」

伝統的なセルビア料理といえば、以下のものが有名かもしれません。

チェヴァピチッチ(Ćevapi)】小さなグリルで焼かれた、香辛料がきいた肉のミニケバブ。
プレスコ・グヴェツェ(Prebranac)。 白インゲン豆を主成分とする料理で、オニオンやパプリカと一緒にオーブンで焼かれます。肉が入ることもあります。
アジャヴァル(Ajvar): 赤ピーマンとナスを主成分にしたピリ辛のペースト。パンに塗ったり、肉料理に添えたりします。
クルプニク(Krpice sa Krompirom): 小麦のパスタとじゃがいもから作られる料理。トッピングにはベーコンやオニオン、チーズが使われます。
ゴウラシュ(Gulaš): 肉と野菜がトマトベースのシチューになったもの。通常、ご飯やパンと一緒に食べられます。
サルマ(Sarma): 白キャベツの葉でくるんだ、お肉やご飯の詰まったロール状の料理。冬季や特別な行事でよく食べられます。

毎日食べても飽きないくらいおいしい!

彼の家庭では、どんな食事をしていたのでしょうか?

「我が家では、食事のときに一品揚げ物を食べてたよ。朝食には、パプリカとトマトを油で炒めて卵を加えた料理があるんだけど、それがすごくおいしくて好きなんだ。 一日中食べていても飽きないくらい!
昼食には串やき、またはジャガイモを使った料理など、ゆっくりと時間をかけたものを作る。夕食は、新しくおかずを作ることもあれば昼食の残りを食べることもある。ほかには、食事のたびごとに新鮮な野菜サラダやピクルスなどを添えていたかな。よくチーズパンを食べていた。メインディッシュは、ライスかパンのどちらかだけど、ただセルビアでお米を使う時は、主食の一部という感じだね」

日本では主食としてお米を炊いて食べるのが一般的ですが、セルビアでは、肉、パン、野菜などがメインになることが多いようです。一度セルビアの料理について調べてみるのもよさそうですね。

「結婚したら料理は妻がやるから覚えなくてもいいのよ」

「祖母とは、大人になった今も実家に帰るといろんな話をするよ。祖母は、村の人のことや彼らの幸せを祈ることを話してる。また、一緒にテレビを見たり、音楽を聴いたり、時には料理について話したり。祖母と過ごす時間は、とても楽しいひと時だよ。時々、祖母が好きな料理についてアドバイスを求めることもある。

今は、料理についていろいろ話してくれるけど、僕が子どもの頃、料理を覚えたいというと、祖母は”あなたは覚える必要がないのよ。あなたが大人になって結婚したら、料理はあなたの妻がやるんだから”と言っていたんだ。でも、今、僕の家庭では妻が外で働き、僕が4歳になる娘を自宅で見て、忙しい妻にかわって料理をしている。妻が帰ってきたら僕がオンラインで仕事をして、その間妻が子どもの面倒を見ている。夫婦で話し合ってこれがベストだと決めたんだ」

セルビアでは、日本同様、家事や子育ては女性の仕事と考えることが一般的です。彼の祖母が彼に、料理はあなたの妻となる人がやるから覚えなくていいのよ、と言ったのは、伝統的な性別役割に基づく考え方からでしょう。しかし、これに対して近年では男女平等の意識や働く女性が増えてきたことから、家庭ごとに役割分担が変わってきているのだと思います。

祖父母と過ごした時間が子ども時代の宝物

祖父からは農場の仕事や大工仕事について、祖母からは心とおなかを満たすおいしい料理の作り方を習った彼。祖父母と過ごした時間は大切な思い出だといいます。

「祖父母と過ごした時間は、僕の豊かな子ども時代を築く大切な時間だったと思う。彼らとのふれあいからは、温かな思い出が溢れ、家族の絆が深まりまったと思う。祖父母の教えや一緒に過ごした日々は、人生の中で特別な存在となり、僕の人生をとても豊かにしてくれた。

子どもを持つ親になった今、毎日子どもの世話をしながら家事をしていて思うんだけど、それは時には大変なこともあるんだよ。いつも心穏やかに過ごしたいと思うけど、やらなければいけないことがたくさんあって、同時に子どもの世話もしなければいけないとなると、心の平穏を保ちにくいこともある。

僕は、すべての子どもたちが祖父母と一緒に過ごす時間を持つべきだと思う。子どもを面倒見ている親なら誰しも同じように感じることがあると思うけど、家事や仕事をしながら、子どもの面倒を見るのは時として十分にケアできなかったり、気持ちの部分で子どものことだけに集中できないこともある。

時間的にも精神的にも余裕がある祖父母は、孫に対して忍耐強く接することができるし、じっくりと時間をかけて孫の話を聞いてあげたり、遊んであげることもできる。僕が子どものときそうだったように。さまざまな都合で、孫と祖父母が一緒に住めないことも多いし、多世代同居は価値観の違いから簡単ではないけれど、孫と祖父母と一緒にたくさんの時間を過ごせることを願うよ」

家族との結びつきや伝統を肌で感じる瞬間

彼にとって、祖父母と過ごした幼少期は、人生の中でもとても大きな意味を持つものとなったようです。なかでも朝5時から始まるトウモロコシの収穫や、祖母の料理手伝いは、単なる作業ではなく、家族との結びつきや伝統を肌で感じる瞬間だったのかもしれません。

祖父母との共同作業を通じて彼が学んだ家族の伝統や価値観は、彼の人生に深く根付いているようです。この経験が彼の現在の親としての理解を深め、祖父母との絆が彼の人生に深く影響を与えていることが伝わってきました。

これからいろんな国の人のインタビューをしていきます。よかったらフォローして待っていてください。















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