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きょうだい備忘録

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きょうだい備忘録を、まとめています。
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きょうだい備忘録(さつきちゃんと私)

きょうだい備忘録(さつきちゃんと私)

私が小学4年生の時に、弟が1年生として学校に入学してきた。

いよいよ公の場に、弟が野放しにされる時が来たのだ。

私は心配と緊張と不安と、弟が同じ学校に来る事に対して、正直に嫌だなと思っていた。

案の定

入学後すぐに弟は不安から、ところ構わず、人を噛み続けた。

授業に戻ることはなく、休み時間も、ぐるぐる校内を走り回り、出会った人がいれば噛み付くという毎日。

どうしようもなく暴れ回って、先

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きょうだい備忘録(しつけという名の自己顕示欲)

きょうだい備忘録(しつけという名の自己顕示欲)

しつけというのは、自己顕示欲の塊だな。
と振り返って思う。

「弟を守る」という大義名分のもと、私は弟を厳しく、しつける事にした。

若干10歳程度の子どもが考えるしつけだ。全くしっかりしたものでもなく、その大半は脅しである。

貧乏ゆすりをしてはいけない。

食べ方が汚い。

鼻息がうるさい。

じっとしていなさい。

恥ずかしいから、こっちに来るな。

など、暴言を繰り返し、あまりにも言うこと

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きょうだい備忘録(弟の目線の先)

きょうだい備忘録(弟の目線の先)

弟が見ている先には、美しい自然や生き物が沢山存在した。

私はインタビューをして情報を収集する事や、それを分析する事が好きで、家族であっても気になる事は、聞き取り調査をしていた。

弟に大人になってから訪ねてみた。

「どうして教室から急に飛び出していたのか?」

すると、こう返ってきた。

「休み時間に見かけた、壁にいた蜘蛛が、どのくらい動いたか気になったからだよ」

これを聞いた時に、私は、そ

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きょうだい備忘録(本当に怖いもの)

きょうだい備忘録(本当に怖いもの)

障害児者を理解してほしい。理解したい。
言うのは簡単だが、実際には難しいだろう。
そもそも、他人を理解する事など、人が出来るとは思わない。

私も弟を理解する事は出来ない。
しかし、怖くはない。という事は、はっきりと分かる。

なぜなら、本当に怖いものを知っているから。

私達は、父親という名前がついた、人間の振りをした得たいの知れないものと同居していた。
そのものは、私達から家、物、食べ物、母親

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きょうだい備忘録(宇宙から来た猛獣)

きょうだい備忘録(宇宙から来た猛獣)

3歳下の弟は、宇宙人みたいな子だった。

光の速さかと思うくらいのスピードで、数秒目を離すと居なくなっており、どこを探しても居ないのである。

まさに瞬間移動

見つけた時は、数キロ離れた先にある、ほぼ垂直に近い壁をよじのぼっていたり、

国道の真ん中にあるオレンジの線を歩いていたりした。
往来する車はみんな弟を避けて、まるでモーゼの十戒の様な光景だった。

弟は言葉の使い方が下手だった。

だか

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