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きょうだい備忘録(しつけという名の自己顕示欲)
しつけというのは、自己顕示欲の塊だな。
と振り返って思う。
「弟を守る」という大義名分のもと、私は弟を厳しく、しつける事にした。
若干10歳程度の子どもが考えるしつけだ。全くしっかりしたものでもなく、その大半は脅しである。
貧乏ゆすりをしてはいけない。
食べ方が汚い。
鼻息がうるさい。
じっとしていなさい。
恥ずかしいから、こっちに来るな。
など、暴言を繰り返し、あまりにも言うことを聞かないと判断した時は、
包丁を取り出し、見せて脅していた。
最初は怖がらせる事で、弟を支配していたが、
そのうち、弟達の方が強くなってきた。
下の弟は人一倍正義感が強いので、そんな私に対して、強く抗議し続けた。
同じきょうだい児の立場だが、彼の方が、
立派に兄を守っていた。
家が汚れるからという理由で、
子どもだけで、外の狭いプレハブに押し込められていたので、秩序など何もない。
そんな状況の中、10歳の子が、きちんと下の子達をお世話し、しつけを出来る訳もなく、
頑張れば頑張るほど、私はどんどん孤立していった。
しつけをして、私は弟をどうしたかったのか。
きっと、周りの子の弟みたいな、普通の弟にしたかったのだろう。
だがそれは、自己顕示欲を満たすための行為であり、
私が一番、弟に対して偏見を持っていて、差別していたのだ。
下の弟がついに、私よりも精神的にも、身体的にも成長した時に、私の暴力と暴言は、完全に効力を失った。
それから数年経ち、変わらず私は弟を守りきる術を取得しようと、きょうだい会など、色々な勉強会や懇親会に参加をしていた。
20歳を過ぎたある日、弟本人と一緒に、きょうだい会に参加する機会があった。
始めの自己紹介の時に弟が、
「一生懸命家族の事を考え続けてくれた姉を、僕は心から尊敬しています」
と言った。
びっくりした。自分の気持ちを言葉にするのが難しい弟が、そんな事を言うとは夢にも思っておらず、私はその場で泣き崩れた。
と同時に、弟達に対して虐待をしていた自分を恥じた。自分に対して、これ以上無いくらいの怒りを感じ、弟にそんな事を言ってもらう資格は無い。と感じた。
謝っても、過去に戻ることは出来ないが、
私達は、3人きょうだいだったから、生き延びる事が出来たんだな。と、今は強く思う。
弟が私を尊敬してくれている以上に、私は弟達を尊敬し、心から感謝している。
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