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きょうだい備忘録(宇宙から来た猛獣)

3歳下の弟は、宇宙人みたいな子だった。

光の速さかと思うくらいのスピードで、数秒目を離すと居なくなっており、どこを探しても居ないのである。


まさに瞬間移動


見つけた時は、数キロ離れた先にある、ほぼ垂直に近い壁をよじのぼっていたり、

国道の真ん中にあるオレンジの線を歩いていたりした。
往来する車はみんな弟を避けて、まるでモーゼの十戒の様な光景だった。


弟は言葉の使い方が下手だった。


だから意地悪する子や、意地悪してこない子にも、とにかく噛みついていた。
猛獣使いは私。言うことを聞かない猛獣がしでかした事に対して、学校中をお詫び行脚していた。私が小学4年生の頃だ。

宇宙から来た猛獣が暴れ出すと、校内放送で先生が私(猛獣使い)を、名指しで呼び出した。

当然、私が行っても静まる事はなく、私は上級生と同級生から笑われ、友人からは同情された。


そんな宇宙から来た猛獣の目は、いつもキラキラしていて純粋で、学校では怯えた目をしていた。

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