マガジンのカバー画像

読書記録_本

228
読書(漫画以外)の記録。 名前が覚えられないため、外国の本があまり読めない。まほろ市出身。 Instagramにも載せています。 https://www.instagram.co…
運営しているクリエイター

#読書

『ミステリと言う勿れ』 7 田村由美

『ミステリと言う勿れ』 7 田村由美

このマンガは誰に勧めても評判が良い。男性だったからかたまたま田村由美さんを読んでいなかったマンガ通にも、70歳の母の評判が良かった。母が貸した友人たちにも評判が良いというミステリマンガ。一言で言えば「面白い」なのだけれど、色々な側面において素晴らしいので「評判が良い」という表現にさせてもらう。

7巻は密室殺人のような、山小屋での事件。今回のエピソードで「ミステリ」的に鮮やかなのは、一つではなく複

もっとみる
『人生を変えるクローゼットの作り方』 ベティ・ホールブライシュ

『人生を変えるクローゼットの作り方』 ベティ・ホールブライシュ

ニューヨークの五番街にある百貨店、バーグドルフ・グッドマンには90歳(発刊当時)のパーソナルショッパー別名「買い物セラピスト」ベティ・ホールブライシュがいる。その彼女の半生記。日本語タイトルが示すようなクローゼット整理のテクニック、例えば「1年着ていない服は捨てましょう」「シーズンや色ごとに分けてしまいましょう」といったことは書かれていない。私だったら手に取らなかっただろうタイトルの本は、アパレル

もっとみる
正直不動産

正直不動産

在宅勤務により家にいる時間が増え、色んなことを考えた。私はこのまま家賃を払い続けてよいのだろうか。独り身の私は資産となる家を買うべきだろうか。そもそも私は家を買うことができるのだろうか。気軽にスーモカウンターの予約を入れたら(当日は満席だった。今、多くの人が今住まいについて考えているらしい)あれよあれよと、3件の物件見学予定が入った。

3件目の物件は明らかに予算オーバー。営業マンは手元で電卓を叩

もっとみる
『ライオンのおやつ』 小川糸

『ライオンのおやつ』 小川糸

人は死ぬ。私は今のところ、特に長生きをしたいと思っていない。痛いのと苦しいのが嫌だから、それさえなければいい。でも、実際に今、余命を突き付けられたら、間違いなく動揺し、嘆く。

私より若いにも関わらず、余命を告げられた主人公の雫さんは残りの日々を過ごすために瀬戸内海にあるホスピスへと向かう。このホスピスでは毎週日曜日に「ゲスト」がリクエストしたおやつが、そのエピソードとともにふるまわれる。

昨年

もっとみる
『錦繡』 宮本輝

『錦繡』 宮本輝

私は…この本、ちょっとアレだな…。なぜ美しい話のようになっているのか、理解できない。他の人のレビューを読んでみたが、非常に評判がよい。ためしに低評価のレビューを読んでみると、だいたい私と同じ方向性の感想だった。

物語は蔵王のゴンドラ・リフトから始まる。子供の手を引きながら乗り込んだ亜紀は、ゴンドラの中で10年前に別れた夫に偶然再会する。そこから亜紀と靖明の文通が始まる。今ならSNSから相手の連絡

もっとみる
『ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。』 haru

『ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。』 haru

一生懸命読んでいたら降りる駅を乗り過ごした。6歳から25歳、男も女も性別不明も含めた13人の人格が1つの体に宿っている。「多重人格」というのが私の知っている言葉。タイトルには「解離性同一性障害」と書いてあるから、それが正式名称なのだと思う。そこの辺りのワーディングがわからないので、失礼にあたる言葉の使い方をしていたらごめんなさい。

そういったこともわからないけれど、頭の中に本人含む13人の声がす

もっとみる
『保健室のアン・ウニョン先生』 チョン・セラン

『保健室のアン・ウニョン先生』 チョン・セラン

ひときわ長い梅雨のジメジメした空気の中、この本を開いたら、爽やかさに包まれた。「今日こそは好きなあの子に告白しよう」と決意する男子高校生の恋心からこの本は始まる。そしてタイトルになっている保健室の先生は特殊能力を持っていて、学校にはびこる「ソレ」とおもちゃの剣とBB弾の鉄砲で戦う。私の中二病がうずきだす。表紙も非常にPOPでかわいらしい。

手入れの足りないパサパサの髪をした保健の先生がストッキン

もっとみる
『若冲』 澤田瞳子

『若冲』 澤田瞳子

その人がどんな人だったのか、私は知らない。京都の青物問屋の長男で、家業を継ぐことなく、お金だけ使って絵に没頭した人。野菜や鶏、付喪神、当時の日本では見ることのできなかった象などちょっとユニークな題材を、驚くほど細かく、色鮮やかに描く絵師、伊藤若冲を。

京都のお墓参りに行ったり、東京から福島まで伊藤若冲展に行ったりするくらいに伊藤若冲が好きだが、これまで人柄を考えたりしなかった。この本は伊藤若冲を

もっとみる
『バウルを探して<完全版>』 川内有緒

『バウルを探して<完全版>』 川内有緒

「バウルを探しにきた」と言うと、バングラデシュの人々は語り始める。そしてそれは次の展開へ、人へと繋がっていく。「バウル」とは何なのか。私は「バウル」を全く知らないままこの本を買った。川内さんの本が面白いのを知っているから。余計な情報を入れずに「バウル」を探し始めたい人はスクロールはやめてこのブラウザを閉じること。すぐに本屋に行くか、オンライン書店に注文を入れて。もう少しだけヒントが欲しいなら、先へ

もっとみる
『針と糸』 小川糸

『針と糸』 小川糸

人の言葉が恋しいのかもしれない。緊急事態宣言が終わった今も、在宅勤務で一人暮らしの私はたいして人と話さない。図書館で借りてきた本を手にとったものの、みっしり字の詰まった漂流者の小説も、分厚くてクレバーな読書記録も手がのびなくなってしまった。そんな中、するすると読めたのはこの本だった。『食堂かたつむり』や『ツバキ文具店』を書いた小説家 小川糸さんの毎日新聞での連載エッセイ。

このエッセイを書いてい

もっとみる
『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン

タイトルがなんだかなあ。狙っているんだろうけれど、いけ好かない。その表現はジェンダー論的にどうなのか、と思って手を伸ばさずにいたのだけれど、中身は面白そうで、結局読んだ。原題『The Kitchen Counter Cooking School』。うん、このタイトルでは読もうと思わなかったとも思う。

フランスの名門料理学校ル・コルドン・ブルーを37歳で卒業したアメリカ人が、この本の筆者であるキャ

もっとみる
『あのひととここだけのおしゃべり』 よしながふみ

『あのひととここだけのおしゃべり』 よしながふみ

意味がわからないけど、すごいことが書かれているのはわかる。だから食らいついてみよう、ということが時々ある。「『やおい』は男同士だけではない。女同士でも男と女の間でもある。『やおい』の定義とは」えっと・・・やおいってBLと同じものじゃなかったの?え、ごめんどういうこと?

『きのう何食べた?』『大奥』と底力のあるマンガを描かれるよしながふみさんの対談集。対談相手は萩尾望都さん、羽海野チカさん、三浦し

もっとみる
『お葉というモデルがいた』金森敦子

『お葉というモデルがいた』金森敦子

竹久夢二、責め絵の伊藤晴雨、日本の洋画界で長く指導的役割を果たしてきた藤島武二という異なる3人の画家のモデルを勤めてきた女性、佐々木カ子ヨ(かねよ)。彼女はどんな人物だったのか。

大正時代にヌードモデルをし、さらに緊縛され乱れ髪の姿も描かれ公開されてしまう女性。タイトルの「お葉」は竹久夢二のつけた愛称で、彼との関係が最も多く書かれる。男と女、描く者と描かれる者、視る者と視られる者。内面も発露させ

もっとみる
『東京怪奇酒』  清野とおる

『東京怪奇酒』 清野とおる

小学生のころ、奥から2番目のトイレには絶対入らなかった。花子さんがいるから。3時33分に三角教室(教室と教室の間にある三角形をした物置のような部屋)には絶対いかない。三次元に連れていかれるから、ってこの世界は三次元だ、と今気づく。四次元に連れていかれる設定だったかもしれない。要は、別世界に連れていかれて二度と戻れないという。

清野さんは、奥から2番目のトイレに入るし、3時33分に三角教室に入るよ

もっとみる