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リビング・イン・ニア・トーキョー #26
外の匂いが変わった。
ちょっと前までの冬の感じは、あっという間にどこかへ消えてしまった。気がつけば、僕は昨年と全く同じように、花粉に苦しめられている。ある日の夜、職場から自転車で総武線の高架沿いを通って帰る途中。冬物のコートしか持っていない僕は、この時期の夜に適切な装いができず、マフラーと手袋でごまかしながら、自転車のペダルをこいでいる。
春物のコートが欲しいな、と思ってすぐ、今まで生き
リビング・イン・ニア・トーキョー #24
唐突に本を読んだ話をしたくなったので、本を読んだ話をする。
読んだのは、東浩紀さんの「ゲンロン戦記」。とても面白かった。
ぼくは、一部の文系学問界にいる人たちは、すごく無菌室的というか、浮世離れしたものというか、理想主義的というか、そういった人たちなのだろうと捉えている。ああいう人たちは最悪、研究室と名付けられた自分の書斎で、誰とも関わらずに一生を過ごせれば満足な人たちなのだろうなと思って
リビング・イン・ニア・トーキョー #20
ニア・トーキョー行きが決定したのは、昨年12月だった。あれよあれよという間に面接を終えて、クリスマスの日に内定通知をもらった。あの辺りから、自分の中で「東京」への期待はふくらむばかりだった。家はどこに借りよう。家具はどんな色で揃えよう。から始まって、引っ越したら最初はどこへ行こう、サッカーも野球も見放題だろうなあ、あ、街コン行こう、などなど。
こういう言い方をするとアレなんだけど、大学デビュ
リビング・イン・ニア・トーキョー #19
木曜から4連休をもらい、仙台に帰ってきた。
4ヶ月ぶりにやってきた街に、懐かしさみたいなものは不思議とほとんど感じなかった。町の大きさや人の雰囲気にさしたる違いがないからかもしれない。あるいは、その程度のちがいなどあまり気にしなくなってきたからかもしれない。コロナワールドのせいか、単に平日の昼間だからなのか、仙台駅の中はすこし静かに感じられる。このご時世なので、どこに寄るでもなく実家へ向か
リビング・イン・ニア・トーキョー #17
BUMP OF CHICKENというバンドが小5から中2までの自分の中心だった。
きっかけは、米津玄師よろしく、「K」のフラッシュを見たことだったとはっきり覚えている。誰が歌っているかも分からない、黒猫の歌。歌詞のギミックもなんだか洒落ていた。
「おもしろフラッシュ置き場」というホームページには、アスキーアートと一緒に流れる、なんだかかっこいい曲のフラッシュがたくさんあった。「ラフ・メイカ
リビング・イン・ニア・トーキョー #15
梅雨空が続く。昨日まで晴れだった天気予報は、いつの間にか雨になっていた。
テレビで野球を見る。
画面の向こうでは、人工的な応援歌が流れている。時折、生の拍手。人がいる。スポーツのある日常が戻ってきている。
スタジアムには少ないながらも人が入るようになってきた。感染者が増えつつある中でこの措置は果たして大丈夫なんだろうか?と思うが、止める術があるわけでもない。ならばできることというのは、自