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日本に来る難民と入管行政の問題点:まとめ

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#入管収容所

入管の精神科嘱託医が拘禁性うつ病で仮放免相当と意見を述べたのに仮放免不許可にしたのを違法と判断した裁判例

入管の精神科嘱託医が拘禁性うつ病で仮放免相当と意見を述べたのに仮放免不許可にしたのを違法と判断した裁判例

入管に定期的に来ている精神科の嘱託医が、仮放免すべきとの所見を述べたのに無視して仮放免を不許可にした事件で、平成30年8月28日東京地方裁判所は仮放免不許可処分を違法と判断しました(東京地方裁判所民事51部。清水知恵子裁判長)。判決は国側の控訴なく、一審で確定しました。

精神科の医師が拘禁性うつ病で仮放免相当という意見を出したのに無視した事例で、ウィシュマさんのケースとの類似していますよね。全然

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収容するけど外に出さない、上限がないので無期限長期収容が生じるのは当たり前

収容するけど外に出さない、上限がないので無期限長期収容が生じるのは当たり前

2021年5月9日のChoose Life Projectで、現在の改悪法が出るに至った経緯として2016年の通達が挙げられていました。

通達等の現物を交えて、もう少し詳しく流れを説明します。以下の難民支援協会がまとめてくれた資料を参考にさせてもらいました。ありがとうございました。

2015年 9月 18日退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について(通達)
ここでは、

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何をいまさら→国連特別報告者らの共同書簡に対する日本政府抗議について

何をいまさら→国連特別報告者らの共同書簡に対する日本政府抗議について

2021年3月31日付で、国連の特別報告者らが政府の提出した入管法案に、ダメ出しをしました。

これに対して、日本政府が以下のような抗議をしたとのこと。

 改正法案について,事前に御説明する機会があれば,こうした立案の背景,法案の内容,その適正性について,正確に理解していただくことができたものと考えています。
 今回,「移民の人権」の特別報告者などが,我が国から事前の説明を受けずに,本書簡におい

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収容・送還・難民についての国連勧告 まとめ(1998〜2022)

収容・送還・難民についての国連勧告 まとめ(1998〜2022)

事務所のブログに載せていたものですが、こちらにも転載しておきます。

2020年には国連の恣意的拘禁作業部会の意見が、2021年3月31日付では国連の特別報告者らによる共同書簡が出され、日本の入管収容や難民認定などを条約違反であるとの指摘をしていますが、実は1998年からずーっと言われ続けているものなのでした。

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先日、ある新聞記者の方から、入管収容が国際

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「そこが知りたい!入管法改正案」 Q&A Q1・2(収容部分)のいい加減さ・無責任さ

今日、出入国在留管理庁が「そこが知りたい!入管法改正案」をリリースしました。

突っ込みどころがたくさんありすぎるのですが、収容関連について。

収容するか否かを裁判所が判断する仕組みを設けなかった理由として、・実際に収容を行う入国警備官とは別の上級の主任審査官が慎重に判断する・行政訴訟ができるので十分適正に行われると考えられます、としています。

監理措置は上級の入国審査が慎重に判断することとし

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「そこが知りたい!入管法改正案」 Q&A Q6〜Q8 長期収容と難民認定(完)

「Q6 出入国在留管理庁の収容施設に収容される外国人は,どのような人ですか?」は制度の説明なのでほとんどコメントする必要は無いですが、

「もっとも,その外国人が日本から出国すれば,収容はすぐに終わることになります。」→在留特別許可を出しても、収容は終わります。

Q7 なぜ,長期収容の問題が生じているのですか? 長期収容の原因「〇 現在の入管法では,日本から退去すべきことが確定した外国人について

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日本政府の国連恣意的拘禁作業部会に対する“異議申立て”の不当性を明らかにする弁護士チームによる声明

日本政府の国連恣意的拘禁作業部会に対する“異議申立て”の不当性を明らかにする弁護士チームによる声明

弁護団の了承を得て、転載します。

日本政府の国連恣意的拘禁作業部会に対する“異議申立て”の不当性を明らかにする弁護士チームによる声明

 法務大臣は、2021年3月30日、昨年9月28日付けで送付された国連恣意的拘禁作業部会による難民申請者2名の入管収容に対する意見*1(以下、「同意見」という)に対して、日本政府が“異議申立て”と詳細な事実関係に関する情報提供を行ったと発表した。しかしながら、日

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読順①日本に来る(いる)難民:入管行政の基本的な問題点について

日本にも「難民」が外国から来たり、日本で非正規滞在していたりします。

こうした外国人の出入国の管理をするのが、出入国在留管理庁(略称は入管庁)です。もともとは法務省の内部部局でしたが、平成31年に法務省の外局として改めて設置されました。

以前から、日本の入管行政については、国内外から人権侵害であるとたびたび批判されてきました。この入管行政について、問題点を整理したいと思います。

「難民」とは

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読順②「人数」で見る入管行政の問題

2019年ベースでの人数把握のため、データをまとめました(たまに2017年や2018年のデータですが…)。これで、この問題の規模感が分かると思います。

2020年からのコロナの影響で収容者数が減り、仮放免者が増えたそうですが、その実数のまとめはまた後ほどしようと思います。

申請者総数約1万人・認定率0.42%2019年に日本で難民認定申請をした人は10,375人、難民として認定されたのは44人

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読順④入管行政の最近の動き(報道)~2020年10月現在~

入管行政の最近の動きについて、まとめます。(報道の掲載された時期については順不同で記載しています)

強制収容トルコ人男性と国が和解 朝日新聞「入管が異例の「謝罪」」(有料記事 2020年10月1日掲載)https://www.asahi.com/articles/ASNB173LYN9ZPTIL00D.html

大阪入管と男性とで和解との報道。和解金を国が支払い、和解条項に謝罪が盛り込まれると

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noteを書こうと思ったきっかけ

NPO法人の時の思い(この記事は思い出話のような内容なので、興味のない人は読み飛ばしてください)

この「入管行政問題」に関心を抱いたのは、かれこれ5年ほど前。

当時、僕は都内の生活困窮者支援のNPO法人に勤めていて、WAM(独立行政法人医療福祉機構)からの委託事業を受けた生活困窮者向けのシェルター事業の担当者だったのですが、そのシェルター事業のことが難民支援協会の方のお耳にも入ったそうで、(簡

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