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収容・送還・難民についての国連勧告 まとめ(1998〜2022)

事務所のブログに載せていたものですが、こちらにも転載しておきます。

2020年には国連の恣意的拘禁作業部会の意見が、2021年3月31日付では国連の特別報告者らによる共同書簡が出され、日本の入管収容や難民認定などを条約違反であるとの指摘をしていますが、実は1998年からずーっと言われ続けているものなのでした。

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先日、ある新聞記者の方から、入管収容が国際法に違反しているというところがあったら教えてほしいと言われました。

繰り返し、繰り返し勧告をされているのですが、まとめたことがなかったので、以下、長文ですが、まとめてみました。

98年の自由権規約委員会での勧告は、はじめてカウンターレポートというものの存在を知り、自分も作成にかかわって、それが取り上げられたので、非常に思い出深いものがあります。

ネタ元は、日弁連の国際人権ライブラリーです。



1998/11/19 自由権 第4回政府報告書審査

 委員会は、収容の厳しい条件、手錠の使用及び隔離室での収容を含む、出入国管理手続中に収容されている者に対する暴力及びセクシュアル・ハラスメントに関する申立てについて懸念を有する。入国者収容所の被収容者は、6ヶ月間まで、また、いくつかの事例においては2年間もそこに収容される可能性がある。委員会は、締約国が収容所の状況について再調査し、必要な場合には、その状況を規約第7条及び第9条に合致させるための措置をとることを勧告する。

2001/3/20 人種差別撤廃第1・2回政府報告書審査 パラグラフ19

 委員会は、締約国に受け入れられた難民の数が最近増加していることを留意しつつ、待遇に関する異なった基準が、一方でインドシナ難民に、他方で限られた数の他の国民的出身の難民に適用されていることを懸念する。インドシナ難民は住居、財政的支援及び政府の援助による日本語語学コースへのアクセスがあるのに対し、これらの援助は概して他の難民には適用されていない。委員会は、締約国に対し、これらのサービスについてすべての難民に対して等しい給付資格を確保するための必要な措置をとることを勧告する。また、この観点から、締約国に対し、すべての避難民が有する権利、特に、相当な生活水準と医療についての権利を確保するよう勧告する。

2007/8/7 拷問等禁止 第1回政府報告書審査 パラグラフ14


 委員会は、締約国の国内法の特定の規定及び締約国の運用が条約第3条に適合していないこと、及び特に以下の諸事項について懸念する。
a)2006年に改正された出入国管理及び難民認定法が、拷問の危険性のある国への退去強制を明示的に禁止していないこと、また、二次的な審査を行う当局が、条約第3条の適用について制度的に調査するようになっていないこと。
b)難民認定申請を二次的に審査する独立機関が欠如していること。
c)上陸防止施設及び入管収容センターにおける収容の状況について、暴行、退去強制のための身体拘束装具の非合法的使用、虐待、性的嫌がらせ、適切な医療措置へのアクセスの欠如に関し、数々の申立てがあること。特に、委員会は、入管収容センターにおける不当な取扱いとして認められた事案が今日まで1件のみであることを懸念する。
d)入管収容センター及び上陸防止施設に独立した監視制度が存在しないこと、特に、入管職員による侵害があった場合に被収容者が不服を申し立てる独立機関が欠如していること。また、委員会は、第三者的立場にある難民審査参与員の任命基準が公表されていないことを懸念する。
e)法務省が、難民認定申請者に対して最初の申請段階において法的代理人を選ぶ権利をめていないこと、及び政府の法律扶助は非居住者には事実上制限されていることに照らし、入管職員が下した決定を二次的に審査する独立機関が存在しないこと。
f)司法による審査の機会を与えることが、すべての庇護申請者に対して十分に保障されている訳ではないこと、及び行政手続終了後直ちに退去強制が執行されたとの申立てがあること。
g)庇護申請の却下から退去強制までの間、庇護申請者が不当に長期間収容されていること、特に、期間の定めなく長期に収容されている事案があるとの報告。
h)2006年の入管法改正において設けられた仮滞在許可制度が厳格であって限られた効果しかないこと。
締約国は、外国人移住者の収容及び退去強制に関するあらゆる措置及び運用が、条約第3条に完全に適合するよう確保すべきである。特に、締約国は、退去強制対象者が拷問を受けるおそれがあると信じるに足りる相当な根拠がある国への退去強制を明確に禁止し、庇護申請を二次的に審査する独立機関を設置すべきである。締約国は、庇護申請及び退去強制手続において適正な手続を確保すべきであり、また、入管収容施設における取扱いに関する不服申立てを二次的に審査する独立機関を、遅滞なく設置すべきである。締約国は、退去強制を待つまでの収容期間の長さに期限を設けるべきであり、特に脆弱な立場の人々についてはそうすべきである。また、退去強制令書発付後における収容の要件に関する情報を公開すべきである。"


2008/10/29 自由権 第5回政府報告書審査パラグラフ25


 委員会は、2006 年改正出入国管理及び難民認定法が拷問の危険がある国への難民申請者の送還を明文で禁止していないこと、申請の数との関連で難民認定の割合が低いままであること、難民認定手続にしばしばかなりの遅延があり、その間申請者は就労を禁じられ、かつ、限られた社会扶助しか受けられないことに、懸念を持って留意する。委員会はまた、再審査に際し法務大臣に助言する難民審査参与員が独立した機関により選任されず、また拘束力のある決定を下す権限はないことから、難民不認定に対する法務大臣への異議申立ての機会が、独立した機関による再審査の性質を有しないことに、懸念を有する。最後に委員会は、難民不認定となった者が退去強制命令の執行停止申立てに対する不利な決定に対して異議を申立てうる前に強制送還されたという報告事例に、懸念を有する(規約 7 条、13 条)。
 締約国は、拷問その他の虐待の危険がある国への難民申請者の送還を明文で禁止するため、出入国管理及び難民認定法を改正することを検討し、また全ての難民申請者に対し、弁護士、法律扶助、通訳のほか、手続の全期間にわたる適切な国庫による社会扶助あるいは雇用へのアクセスを確保すべきである。締約国はまた、法務大臣によって「テロリスト容疑者」とみなされた難民申請者も利用しうる完全に独立した不服申立機関を設置すべきであり、そして行政手続の終了後難民申請者がその難民不認定の決定に対する不服申立てをなしうる前に直ちに強制送還されないことを確保すべきである。"

2010/4/6 人種差別撤廃第3・4・5・6回政府報告書審査 パラグラフ23


 委員会は、難民認定手続における進展を評価をもって留意するが、いくつかの報告によれば、特定の国からの庇護希望者には異なった優先的な基準を適用しており、他国の出身で国際的保護が必要である庇護希望者は強制的に危険な状況に戻されていることに懸念を改めて表明する。また、一般国民の難民問題に関する理解不足のほか、庇護に関する情報を適切に入手できないこと、手続についての理解不足、言葉及びコミュニケーションの問題及び文化の分断など難民自身に認識されている問題に関して懸念を表明する(第2条及び第5条)。
 委員会は、締約国が標準化された庇護手続及びすべての難民による公的サービスに対する平等な権利を確保するために必要な施策を講ずることを改めて勧告する。これに関連して、委員会はまた、すべての庇護希望者の権利、特に適当な生活水準や医療ケアに対する権利が確保されることを勧告する。また、委員会は、本条約第5条(b)に基づき、何人も各人の生命や健康が危険にさらされると信じるに足る十分な理由がある国に強制的に送還されないことを確保することを要請する。委員会は、この点において国連難民高等弁務官事務所との協力を求めることを勧告する。"

2013/5/29 拷問等禁止 第2回政府報告書審査 パラグラフ9


 委員会は以下の事項を懸念する:
(a). 出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制を命じられた庇護申請者に対して長期の,場合によっては期限の定めのない収容を行っていること,及び,こうした収容決定に対して独立した再審査がないこと;
(b). 庇護申請者に対する収容以外の措置を制限的にしか行っていないこと;
(c). 入国者収容所等視察委員会が効果的に任務を果たせるための資源と権限が不足していること,及び,同委員会の委員が法務省及び入国管理局により任命されること;
(d). しばしば過剰収容となり,通訳を雇用する資源を欠く児童相談所に保護者を伴わない子どもを収容すること;
(e). 条約第 3 条に定められるとおり,拷問にさらされる可能性のある国への送還を禁止する出入国管理及び難民認定法第 53 条第 3 項の効果的な履行が欠如していること(第 3 条,第 11 条及び第 16 条)。

 委員会の前回の勧告(パラグラフ 14)及び日本への訪問調査を受けた 2011 年の移住者の人権に関する特別報告者の勧告(A/HRC/17/33/Add.3,パラグラフ 82)に照らし,締約国は以下のことをすべきである:
(a). 移民又は庇護申請者の収容及び退去強制に関するすべての立法及び運用を条約第 3 条に下での絶対的な原則であるノン・ルフールマン原則に一致させる努力を継続すること;
(b). 庇護申請者の収容は最後の手段としてのみ使われ,収容が必要な場合でも収容期間を可能な限り短くするようにして,強制退去を控えた収容の期間に上限を導入すること;
(c). 出入国管理及び難民認定法に定められた収容以外の選択肢をさらに利用するようにすること;
(d). 特に,効果的な収容所の監視ができるようにするための適切な資源及び権限を与え,収容された移民又は庇護申請者からの不服申立てを受け,審査することができるようにすることにより,入国者収容所等視察委員会の独立性,権限,効果をより強化すること;
(e). 1954 年の無国籍者の地位に関する条約及び 1961 年の無国籍者の削減に関する条約への加盟を検討すること。 "

2014/8/20 自由権 第6回政府報告書審査パラグラフ19

 委員会は,2010年に1人の死を引き起こした退去強制中の不当な扱いに関する事件の報告に関して懸念を表明する。委員会はまた,出入国管理及び難民認定法の改正にもかかわらず,ノン・ルフールマン原則が実際には実効的に実施されていないことを懸念する。委員会はさらに,庇護に関する否定的な決定に対する,停止効果を有する独立した上訴メカニズムがないこと,並びに十分な理由を示すことなく,また収容決定に係る独立した審査もない中での長期にわたる行政収容があることを懸念する(第2条,第7条,第9条及び第13条)。
締約国は,以下のことをすべきである。

(a)移住者が退去強制中に不当な扱いの対象とならないことを保障するための全ての適切な措置をとること。

(b)国際的保護を求める全ての人々が,(保護の可否にかかる)決定及びルフールマン(迫害を受ける危険のある国家へ追放・送還すること)からの保護に対する公平な手続へのアクセスが与えられることを保障し,否定的な決定に対し(退去強制の)停止効果を有する独立した上訴メカニズムへアクセスすることを保障すること。

(c)収容が,最短の適切な期間であり,行政収容の既存の代替手段が十分に検討された場合にのみ行われることを確保し,また移住者が収容の合法性を決定し得る裁判所に訴訟手続をとれるよう確保するための措置をとること。 "

2014/9/26 人種差別撤廃第7・8・9回政府報告書審査 パラグラフ23


 委員会は,職場,学校において,また公的機関及び地域社会との関係において,人種差別に直面した難民及び庇護希望者,とりわけ非アジア人及びアフリカ人がいるとの報告について懸念する。委員会は,長期にわたる庇護希望者の収容及び収容施設における不適切な状況について懸念する。委員会は,国籍法が無国籍の防止及び削減のための規定を有することに留意するものの,締約国が,無国籍者のための認定手続を未だ設置していないことを懸念する。委員会はまた,在留許可のない無国籍者が,無期限の退去強制前の収容に直しているおり,さらに人権侵害の危険にさらされている人々がいることを懸念する(第5条)。
 難民及び避難民に関する一般的勧告22(1996年)に照らし,またアフリカ系の人々に対する差別に関する一般的勧告34(2011年)に留意し,委員会は締約国が以下のことのための措置をとるよう勧告する。

(a)難民及び庇護希望者に関する,地域自治体や地域社会の間の非差別及び理解を促進すること。
(b)庇護希望者の収容が最後の手段としてのみ,かつ可能な限り最短の期間で用いられることを保証すること。締約国は,その法に規定されるように,収容
の代替措置を優先すべきである。
(c)無国籍者の確認及び保護を適切に確保するため,無国籍者の認定手続を設置すること。
締約国はまた,1954年の無国籍者の地位に関する条約及び1961年の無国籍の削減に関する条約への加入を検討すべきである。

2018/8/30 人種差別撤廃第10−11回政府報告書審査 パラグラフ35,36

難民及び庇護希望者
35.委員会は,締約国で報告された難民認定率(11,000件の申請中 19件)が非常に低いことを懸念する。委員会は,期間を定めない庇護希望者の収容を懸念する。委員会は,難民認定申請者が通常は就労することも社会保障を受けることもできず,過密状態の政府施設への依存又は虐待及び労働搾取のおそれにさらされていることを懸念する。
36.難民及び避難民に関する一般的勧告22(1996年)を想起し,委 員会は,締約国に全ての難民認定申請者が適正な配慮を受けるよう確 保することを勧告する。委員会は,締約国が収容所の収容期間の上限を導入することを勧告し,庇護希望者の収容が最後の手段としてのみ, かつ可能な限り最短の期間で用いられるべきであり,収容以外の代替措置を優先するよう努力すべきとの,前回の勧告(CERD/C/JPN/CO/7-9, パラグラフ 23)を繰り返す。委員会は,締約国が難民認定申請者に対し,申請から6か月後の就労を認めることを勧告する。

2018年12月5日 強制失踪委員会 第1回政府報告書審査 パラグラフ33

33 委員会は,医療機関及び入国管理施設を含む,自由の剥奪の合法性に異議を申し立てるため,本条約第 17 条第 2 項(f)に沿って利用可能な救済手段が欠如していることに懸念を表明する。委員会は,自由の剥奪の合法性を争うための,利用可能な救済手段が存在しないことを懸念する。委員会は,身体拘束の合法性を争うための人身保護法の存在に留意する。しかし,人身保護規則,特に第 4 条に含まれているこの救済手段の使用上の障害,および人身保護の要請 は,自由を剥奪された者とその代理人のみが行うことができるという障害の存在を懸念する(第 17 条及び第 22 条)。

2019/3/5 子どもの権利委員会 第4回・第5回政府報告書審査 パラグラフ42

子どもの庇護希望者、移住者および難民

42.国際移住の文脈にある子どもの人権についての合同一般的意見――すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号および4号(2017年)/子どもの権利委員会の一般的意見22号および23号(2017年)を想起しつつ、委員会は、前回の総括所見(CRC/C/JPN/CO/3、パラ78)を想起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。

(a)子どもに関連するすべての決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮され、かつノンルフールマンの原則が維持されることを確保すること。

(b)庇護希望者である親が収容されて子どもから分離されることを防止するための法的枠組みを確立すること。

(c)庇護希望者または移住者であって保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもの収容を防止し、このようなすべての子どもが入管収容施設から直ちに放免されることを確保し、かつこれらの子どもに居住場所、適切なケアおよび教育へのアクセスを提供するために、公式な機構の設置等も通じた即時的措置をとること。

(d)庇護希望者および難民(とくに子ども)に対するヘイトスピーチに対抗するためのキャンペーンを発展させること。

2022/11/3 自由権 第7回政府報告書審査



27 以前の勧告を想起し、締約国は、逮捕又は拘禁された者が、実際には、自由の剥奪の当初から、規約第9条及び第14条に記されているすべての基本的な法的保護措置を享受すること、及び、拘禁が国連の被拘禁者の処遇に関する最低基準規則(ネルソン・マンデラルール)に完全に適合することを確保するために必要な措置をとるべきである。これには、弁護士へのアクセス、家族に連絡する権利、および必要に応じて医療処置を提供することを含む。

32 委員会は、難民および庇護希望者を含む外国人の処遇に関する締約国の対応に留意し、拘禁施設における処遇の改善計画の策定に関する情報、ならびに強制送還の予定日を決定に関する通告の送達後少なくとも2か月とすることとする退去強制手続の改訂を歓迎する。委員会は、締約国が、収容代替措置及び補完的保護の認定制度の導入を規定する出入国管理及び難民認定法の改正案の提案を検討していることに関心をもって留意するものである。さらに委員会は、締約国が長期拘禁を回避するための措置を検討する意思があることを歓迎するものである。しかしながら委員会は、2017年から2021年の間に3人の被収容者が死亡するなど、入管収容施設における健康状態の悪化による苦痛の憂慮すべき報告、ならびに在留資格またはビザを失い、「仮放免」中の個人である「仮放免者」が働くか収入を得るためのオプションのない、不安定な状況に引き続き懸念を抱いている。 委員会はまた、難民認定率が低いという報告(第7条、第9条、第10条および第13条)にも懸念を抱く。

33 これまでの勧告を考慮し、締約国は、次のことを行うべきである。
(a) 国際基準に沿った包括的な庇護法を速やかに採択すること。
(b) 移民が虐待を受けないことを保障するためのあらゆる適当な措置をとること。これには、十分な医療援助へのアクセスを含む、国際基準に沿った改善計画の策定を通じたものを含む。
(c)「仮放免」の状況下にある移民に必要な支援を提供し、移民が報酬を得られる活動に従事する機会を設けることを検討すること。
(d) ノン・ルフールマンの原則が実務上尊重されること、及び、国際的保護を申請するすべての者が、否定的な決定に対して効果的で独立した司法へ不服申立をするメカニズムへのアクセスを与えられることを確保すること。
(e) 収容代替措置を提供し、かつ、最長期間の入管収容の上限を設定するための措置をとるとともに、収容代替措置が正当に検討された場合にのみ、最短の適切な期間のみ収容が認められることを確保し、かつ、移民が収容の合法性を判断するために裁判所において効果的な手続をとることができることを確保するための措置をとること。
(f) 規約およびその他の適用可能な国際基準の下で庇護希望者の権利を完全に尊重することを確保するため、入管職員に対して移民に関する十分な訓練を保証すること。

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