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悪い人ほど“火”が似合う。⑤
大きな花火が一回、そして続けて二回と鳴る。
それは先ほどまでの花火より大きく。きっと、一番の見せ場なのだろう。
彼にも見せたかったな。
彼は行ってしまった。どこか遠くに。いや、もしかしたら近くなのかもしれないが、もう二度と出会えないという考えで言えば、死別のように遠くに行ってしまった。
「人混みに誘導しろ」数日前に見知らぬ男が目の前に現れると、急にそう告げた。不躾な物言いに不信感とい
悪い人ほど“火”が似合う。④
「花火に花言葉があったら、何て言うんだろうね」
彼女の頬が輝くと、音が大気を振るわす程に破裂する。広大な空には、これでもかと言う程の炎が飛び交っている。オーケストラが終わると、誰もが息を呑み、一拍してから誰かが拍手を送る。そして、その拍手に乗り遅れぬように様々な人々が激を送り、それは大きな喝采に変わる。それと似たように、一瞬の静寂の後に誰かが声をあげた。それは歓喜に似た雄叫びのようなものだ
悪い人ほど“火”が似合う。③
彼女と知り合ってもうすぐで二ヶ月が経とうとしていた。
春の木漏れ日もなくなり、季節は夏に向かっている。私は彼女と数回目の食事に行く、約束があった。彼女が仕事を終わらせる時間よりも三十分も早くに来てしまったので、働らいている喫茶店で時間を潰そうと思った。
顔なじみになった店員さんたちにいつもの席に案内されると、私は鞄から先ほど、買った本を取り出した。中古車のカタログ。大きな買い物だが、今ま
悪い人ほど“火”が似合う。①
「花火に花言葉があったら、何て言うんだろうね」
彼女の頬が輝くと、音が大気を振るわす程に破裂する。広大な空には、これでもかと言う程の炎が飛び交っている。オーケストラが終わると、誰もが息を呑み、一拍してから誰かが拍手を送る。そして、その拍手に乗り遅れぬように様々な人々が激を送り、それは大きな喝采に変わる。それと似たように、一瞬の静寂の後に誰かが声をあげた。それは歓喜に似た雄叫びのようなものだっ