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出産と別れ 海幸山幸24 神様も“失敗”して成長した ことの葉り。百八七

豊玉毘賣の本来の姿

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おはようございます。
昨夜、窓の外を見上げると、雲の間からお月様が見えました!
今朝は、強いにわか雨の後の青空と雲を見上げながら、「ことの葉綴り。」のひとときです。

竜宮城から、天孫の御子のお産にやってきた豊玉毘賣さま。
山幸彦さまも、大喜び! 産屋を建てはじめましたが、
最後まで建て終わる前に、豊玉毘賣さまは産気づかれました。

異郷のものは、子を産むときには故郷の国の姿形になるものです。
私も、本来の姿となり、御子を産むのです。
ですから、決して、決して、私の姿をご覧になりませんように!!

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そう、嘆願すると産屋へと籠られました。

本来の姿って、なんなのだろう? 
不思議に思った山幸彦さま。

そして、いよいよ出産の日となりました。
夫である山幸彦さまも、我が子の誕生が待ちきれません。
愛妻から止められたにもかかわらず
つい、産屋へと近づいてゆき、建物の隙間から
そう~っと中をのぞいてみたのです。

すると……

うわ~っ!!!!

産屋の中をご覧になった山幸彦さまは、
あまりのことに、悲鳴をあげて、
その場から逃げ去ってしまいました。

何があったのでしょう?

産屋の中では、海神の娘の豊玉毘賣さまは
本来のお姿になっていたのです。

産屋の中にいたのは、八尋鮫という大きな鮫!!!
その鮫が、床を這って苦しそうに身をうねりくねりと、
悶えるように身をくねらせて、お産をしていたのです。

そのとき、建屋の隙間から、山幸彦さまの視線を感じました。
目を大きく見開いて「うわ~っ!!!!」と声を上げると
逃げ去る様子が伝わってきました。

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御子誕生と別れの言葉

あれほど……あれほどお願いしていたのに……。
なぜ?……なぜ?……。

豊玉毘賣さまのショックは計り知れないほど大きなものでした。
約束を破られたことへの、怒り……よりも

私の、この恥ずかしい姿を……見られてしまった……。
あまりにも、あまりにも恥ずかしい……。
もう、ここには、私はいるわけにはいかない……。

お産は無事に終わりました。
玉のようなかわいらしい御子が
誕生したのです。
豊玉毘賣さまは、愛おしい赤ちゃんを胸に抱きながら
静かに涙を流されました。

そこには、我が子の誕生という、喜びとともに
悲しみもまざった涙だったのです。

そのとき、すでに豊玉毘賣さまは、
一つの決心をなさっていました。


愛する夫よ、
私は、この御子を無事に出産できたなら、
海の竜宮城からこの地上を、たびたび往来して、
お仕えし、育てたいと考えておりました。

けれども、あなたに、私の本来の姿を見られてしまった以上、
私の願いは、叶わぬものとなりました……。
私の我が子は、尊い天孫の御子。
この子は、地上のあなたの世界に残して参ります。

愛する夫よ
これで、もうお別れです。
会うことはないでしょう。

さようなら……。

夫である山幸彦さまに、こうお告げになると、
豊玉毘賣さまは、海へと入っていかれて、
海の竜宮城の世界と、地上の豊葦原中つ国との境を
塞ぎせき止められて、
我が子を残して、海の世界へと帰っていかれたのです。

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そして、この誕生した御子は、
波打ち際に建てた産屋の、鵜の羽の萱が、
未だ葺きあげてしまう前にお生まれになった、
勇ましい男の子の天つ御子という
天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命
(あまつひこひこ なぎさたけうがやふきあえずのみこと)
と、名付けられたのでした。

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―次回へ。

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