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竜宮城との別れ 海幸山幸16 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百七九

地上までの最短時間は?


こんにちは。今日も習慣となった「ことの葉綴り。」で、神話を綴ります。

山幸彦さまは、兄の釣り針と、
竜宮城の主である、綿津見神さまから「塩満珠」「塩干珠」の玉とその呪文と使い方を授けられました。


竜宮城で愛する妻の豊玉毘賣さまと出会い
義父の海の神、綿津見神さまも親身になりよくしてもらいました。
この竜宮城には、幸せや喜びの想いでしかありません。

地上の豊葦原中つ国へと戻る時が近づいています。


綿津見神さまは、最後まで山幸彦さまをお大切にサポートします。
海の中にいる、多くの鰐鮫(わにざめ)を集めて、こう問いかけました。

鰐鮫魚(わにざめ)たちよ。
今、天津日高(あまつひこ)の御子とのが、
この海の世界から、豊葦原の中つ国へとお帰りになられるとことであす。
そなたたち、御子どのを幾日あれば、地上の世界へとお送りして、戻ってくることができるのか?

鮫たちは、みんな、顔を見合わせています。
それぞれのワニは、己の尋長(ひろたけ)、すなわち身長によって、海底の竜宮城から地上の豊葦原中つ国へと、行って帰ってこれるのかを計算しています。

あの~私は、七日あれば往復できると思います。

私は三日です!

みながそれぞれ口を開くなか、ある一匹の鰐鮫がこう言いました。

綿津見神さま、私は、身が軽いので一日あればお送りをして
戻ってくることができます。

おう~そちは、一尋(ひとひろ)鰐か。
名の如く、一尋だから、一日で行って帰ってこれるとな。
それは、ここにいる鮫たちの中では、最短時間であるな。
よし、然らば、そなたが、この大切な天津日高の御子どのを
お送りしてゆきなさい。
よいか、くれぐれも、お大切にするのだぞ。
海中を泳ぎ渡るときも、御子どのを、決して怖がらせるようなことがあってはならぬぞ。

はい! かしこまりました!

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感謝の別れと出発

妻の豊玉毘賣さまと別れの挨拶を交わした山幸彦さま。
綿津見神さまは、一尋鮫(わに)の頭に山幸彦さまをお乗せになり、
そして、地上へと送りだしたのです。

鮫の背中から、振り返ると、愛する豊玉毘賣さまが泣いて手を振ってくれています。
隣の綿津見神さまも、「気をつけて帰るのだぞ~」と、手を振って見送ってくれています。

ありがとうございます

鮫のヒレにつかまりながら、山幸彦さまは、深く頭を垂れました。

ありがとうございます。
豊玉毘賣よ、元気でいておくれ。
綿津見神さま、このご厚意は決して忘れません。ありがとうございます。

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一尋鮫の背中に乗って

山幸彦さまを乗せた一尋鮫(わに)は、大海原の波に乗りながら、ものすごいスピードで進んでいきました。

そして一日もしない間に、地上の豊葦原中つ国へと入り、
天孫の御子の暮らす、笠沙の海岸へと辿りついたのです。

おお~なつかしい。
もう、我が故郷へと戻ってきたのか……。

波打ち際で、山幸彦さまは、一尋鮫(わに)の背をおりて
ご自身の足で、故郷の砂浜へと足をつかれました。

無事に戻ってこれた……。
一尋鮫(わに)よ、ご苦労だったね。

無事に御子どのを送り届けることができてよかったです。それでは私はこれにて失礼致します。

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小刀を持つ鰐神・佐比持神

向きを変えて、竜宮城へと戻ろうとする一尋鮫を
山幸彦さまは呼び止めました。

ありがとう。
一尋鮫(わに)よ、待っておくれ。
お前は、これから竜宮城に戻り、綿津見神さまや豊玉毘賣に、私が無事に地上の世界へと戻ったことを報告せねばなるまい。
さあ、これを持っていくがよい。
この小刀を、私が無事に戻った証であると見せるがよい。
気を付けて戻るのだぞ。

そういうと山幸彦さまは、一尋鮫(わに)に、小刀をお与えになり、頸にかけてあげたのです。

御子どの、光栄です。ありがとうございます。

頭を垂れると、その小刀をくわえて、波の向こうへと消えていきました。

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この一尋鮫(わに)は、天津日高の御子から刀を授けられたことから、刀剣を持っている神という意味の
佐比持神(さひもちのかみ)と、呼ばれるようになりました。

山幸彦さまは、一尋鮫の姿が大海原に消えていくまで見送ると、
やがて、我が家である、天孫の御子の宮殿へと歩いていきます。
夕日が美しく照り輝いていました。

兄の海幸彦のいる宮殿は、もうすぐです。

やはり故郷は、ほっとするんだな。
兄上は、釣り針を喜んでくださるだろうか?

山幸彦は、ワクワクしながら久しぶりの我が家へ、帰宅を果たしたのです。

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―次回へ。

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