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短歌と和歌と

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中学生向けに和歌・短歌を語る練習をしています。短歌は初学者。和歌は大学で多少触れたレベル。
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2021年7月の記事一覧

藤原良経が包み込むもの ー漁り火・蛍・伊勢物語ー

藤原良経が包み込むもの ー漁り火・蛍・伊勢物語ー

いさり火の昔の光ほの見えて蘆屋の里に飛ぶ蛍かな
      (『新古今集』二五五 摂政太政大臣)

 『新古今和歌集』に記載された歌人名は摂政太政大臣。こちらは藤原良経を指しています。良経は俊成や定家のパトロンと言って良いでしょう。自身も時代を代表する優れた歌人です。『六百番歌合』を主催し『新古今和歌集』の仮名序を書きました。

 その良経の歌です。新古今時代らしい歌だと思います。僕たち読者にとっ

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7月26日(月) 定家の鵜飼

久方の中なる川の鵜飼舟いかに契りて闇を待つらむ
   (新古今和歌集・夏・二五四・藤原定家朝臣)

 前回に続き今回も「鵜飼舟」の歌を取り上げました。定家の歌です。

 前回↓↓↓

 鵜飼はこの時代には既に定番の歌題になっています。さらに鮎を殺す鵜飼の来世を心配しちゃう系の詠み方は有力歌人が何人も詠んでいるんです。上の投稿で紹介した崇徳院や慈円の歌もそうです。慈円の歌が詠まれた『六百番歌合』では

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7月22日(木) 慈円の鵜飼舟

7月22日(木) 慈円の鵜飼舟

 ほととぎすと五月雨の時期が終わります。夏の葉が茂り暑さが本格化する夏が来ます。『新古今和歌集』の夏歌もようやく多様性を見せ始めました。

鵜飼舟あはれとぞ思ふもののふの八十宇治川の夕闇の空
               (新古今集 251 前大僧正慈円)

 この歌は三つのアイディアとそれを貫く一つの物語で構成されています。一つ一つ確認しましょう。

1,鵜飼舟あはれとぞ思ふ  鵜飼いは『万葉集

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7月21日(水) 隠岐後鳥羽院和歌大賞②

7月21日(水) 隠岐後鳥羽院和歌大賞②

 本年度の隠岐後鳥羽院和歌大賞のテーマ「舟」で和歌を詠む試み、その2です。

 『万葉ことば事典』(大和書房 2001年)は『万葉集』での船の詠み方を五つの類型に整理しています。

1)羈旅の歌の景物として
 例 我が船は比良の港に漕ぎ泊てむ沖辺な離りさ夜ふけにけり(二七四)

2)船に都への思いを託す
 例 香島より熊来をさして漕ぐ船の梶取る間なく都し思ほゆ(四〇二七)

3)入唐使の船
 例 

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7月19日(月) 最後とは知らぬ最後

7月19日(月) 最後とは知らぬ最後

 娘(3歳)が唐突に「娘ちゃんはパパと結婚する」と宣言した。

 感動もしたが混乱もした。「これがあの伝説の・・・」という気持ちを抱いた。一方で発言の脈絡の無さに心のもっていきかたを見失った。

 見失っている間に娘は踊り出す。当然のように僕は王子さまだ。娘をくるくる回す。すると次男がくっついておんぶをせがむ。長男がパンチを繰り出す。結婚はどこに行った。

 子どもの成長には脈絡が無い。こちらが気

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7月17日(土) 期末試験

7月17日(土) 期末試験

 本日まで期末試験でした。生徒は今日終業式で、明日から夏休み。生徒たちはマグマのようなテンションを抱えて試験と向き合いました。僕はそんな彼らを眺めながら監督し、午後からは採点開始です。

セミのなく声すら遠い教室は熱気渦巻く夏休み前
例えば君 投網で池を掬うように全ての範囲を復習してれば
問いを読めもう一度言う問いを読めその行その文字ああなぜ読まぬ

7月15日(木) ゴミ捨てと梅雨の月

7月15日(木) ゴミ捨てと梅雨の月

 昨年からゴミ捨てに次男(五歳)と娘(三歳)がついてくるようになった。置いていくと泣く。何が君たちを駆り立てるのだ。

 梅雨の時期を迎え、道ばたでカタツムリを見かけることが増えた。彼らは白いガードレールの上にいることが多く、そういうものたちは見つけやすい。五歳が見つけると喜んでつつき、落とす。

 雨は続く。晴れの日もある。ガードレール上でカタツムリを見かける日も見かけない日も経験した。夜の内に

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7月14日(水) 甑島今昔

7月14日(水) 甑島今昔

 昨日は観光地としての甑島について調べ、書いてみました。本日はもう少し具体的に、かつ多様な角度から甑島について調べてみようと思います。自分でもちょっと何をやっているのか分からなくなってきているところがありますけど。
 

1,甑島の現在 ー山下賢太さんのことー 甑島のレジャーを調べ始めるとまず出会うのが「こしきツアーズ」さん。  フェリーの乗船券から、宿泊、食事、レンタカー、そしてレジャー。すべて

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7月13日(火) 甑島計画

7月13日(火) 甑島計画

 夏休みに県外に出るのはリスクが高いということで、去年に引き続き県内に引きこもることにしました。引きこもるといってもここは鹿児島。「ハワイに行けないなら離島に行けばいいじゃない」という田舎貴族ムーブが可能です。

 今年はとりあえず甑島に行くことにしました。去年も県内なら旅行することは可能だったんですけど、夏休みが四日間しか無かったんですよね・・・。GWより短い夏休みってなんやねん、僕は休校期間中

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7月12日(月) 隠岐後鳥羽院和歌大賞①

7月12日(月) 隠岐後鳥羽院和歌大賞①

 「隠岐後鳥羽院和歌大賞」が作品を募集している。全国でも珍しい「和歌」の作品募集だ。

 案内を読んでみよう。

 隠岐は承久の乱の後に歌聖・後鳥羽院が京の都からお遷りになった日本海の離島です。院は二〇年近い歳月を隠岐 (現、 海士町) でお過ごしになられました。
 海士町では島根県後援のもと 「隠岐後鳥羽院和歌大賞」 の作品を募集いたします。
 隠岐は承久の乱の後に歌聖・後鳥羽院が京の都からお遷

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7月7日 七夕に吹く風

 七夕だ。『新古今和歌集』にも七夕の歌は多く並ぶ。

星合の夕べ涼しき天の川もみぢの橋を渡る秋風(権中納言公経)

 公経は、後に承久の乱をきっかけに立場を得て莫大な富を築いた藤原公経。金閣寺の前身となる西園寺を建立したことで西園寺家を名乗るようになった。

 七夕の二星の光。秋の夕べ。天の川。秋風。
 涼感が圧をかけてくる。だが「もみぢの橋を渡る」とは何だろう?平安時代のみんなは「あれのことね」

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7月4日(日)僕のかき氷と崇徳院の秋

7月4日(日)僕のかき氷と崇徳院の秋

 街角でかき氷を買って食べた。地元の名物だが、昨年は食べられなかった。
 柔らかな氷に梅のシロップがたっぷりとかかる。シロップは思ったより甘みが抑えられており、刺激になら無い程度の酸味が涼やかさを増す。
 大きめのカップにあふれるほど盛られた氷だが、泡雪のように軽く、口をつければ冷えた空気を吸うほどの抵抗感しかないまま消えていく。旨い。

アステカの都で王が食べてたら多分神話になるこの氷



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7月3日(土)

7月3日(土)

 今日は梅雨らしい1日だった。朝から駐車場の屋根を叩く雨音が激しくて、驚いた妻がカーテンを開けた。
 あんまり雨が激しいといっそ清々しくなる。屋根も壁も木も花も、全部水に洗われて仕舞えば良い。雨上がりの直後はきっと、世界が一番綺麗な姿になるはずだ。

書を捨てて森に出かけよ世界中で一番綺麗な水を見つけに

 焼酎が無くなったので買いに行った。
 なじみの酒屋には、普段見かけない銘柄や夏だけ販売され

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7月2日(金)

7月2日(金)

 今日の夕ご飯はビビンバだった。

 チャーハン系が好きな長男、米なら何でも食べる次男はがっつく。しかし最近米を食べない娘は一口食べて吐き出して、妻と喧嘩した。きっと米の間にあるもやしが気に食わなかったんだと思う。
 怒った娘は僕の胸元に飛び込んでしゃくり上げる。文脈を無視して頬ずりする僕を妻は叱らない。僕を見上げる娘の瞳は涙で濡れていて綺麗だ。

つやつやの涙と君の唇がとがっているのと丸めたおて

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