今回は、詩人・新川和江の「路上」という詩について見ていきます。 路上 新川和江 おとうふを買いに行って はからずも 母に会った おとうふを買い…
今回は、北川冬彦の「馬」という詩について見ていきます。この詩を引用するに当たって、歴史的仮名遣いは現代の仮名遣いに改めました。 「馬」 軍港を…
今回は、詩人・石垣りんの「水槽」という詩について見ていきます。 水槽 石垣りん 熱帯魚が死んだ。 白いちいさい腹をかえして 沈んでいった。 …
今回は、詩人・谷川俊太郎の「誕生」という詩について見ていきます。 誕生 谷川俊太郎 頭が出かかったところで赤ん坊がきく 「お父さん生命保険いくら…
今回は、太宰治の短編小説「親友交歓」について見ていきます。 これは、作者の太宰自身であると考えられる語り手の許に、一人の男が訪ねてくる話です。東京において戦…
今回は、深沢七郎の小説「無妙記」について、見ていきたいと思います。 この小説は、一見、大変難解に思える小説です。作品は、京都を舞台にしていて、腕に神経痛を抱…
今回は、村上龍の短編小説「OFF」について見ていきます。 この作品には、一人称が「あたし」である語り手が登場します。この「あたし」は売春婦であり、作品は、全篇、…
今回は、夏目漱石の小説「坊つちやん」について見ていきます。 この小説は、一人称が「おれ」である人物の語りで展開されます。この「おれ」については、精神のありよ…
以前、太宰治の「男女同権」という小説について解釈しましたが、今回は、この小説について、解釈し直したいと思います。 この小説は、一人の老詩人が、「男女同権」と…
今回は、詩人・谷川俊太郎の「午の食事」という詩について見ていきます。 午の食事 谷川俊太郎 そうして雲の多い空の下にもまたふたたびあの楽しい午の食事…
今回は、詩人・谷川俊太郎の「はな」という詩について見ていきます。 はな 谷川俊太郎 はなびらはさわるとひんやりしめっている いろがなかからしみだ…
今回は、詩人・高橋新吉の「物」という詩について見ていきます。 物 高橋新吉 物は無限にあるから 何でも人にやるがよい 命などは殊に人にやるのがよ…
今回は、詩人・谷川俊太郎の「ゆめのよる」という詩について見ていきます。 ゆめのよる 谷川俊太郎 たろうは ゆめのよるに ゆめのふとんを かぶって …
今回は、谷川俊太郎の「なくぞ」という詩について見ていきます。 なくぞ 谷川俊太郎 なくぞ ぼくなくぞ いまはわらってたって いやなことがあ…
以前、谷川俊太郎の「ごちそうさま」という詩について書きましたが、今回は、この詩について、もう一度、解釈し直したいと思います。 ごちそうさま 谷川俊太郎 …
今回は、高橋新吉の「じゃがいも」という詩について見ていきます。 じゃがいも 高橋新吉 一つのじゃがいもの中に 山も川もある この詩の語り手は、…
こなつ
2024年4月16日 13:00
今回は、詩人・新川和江の「路上」という詩について見ていきます。 路上 新川和江 おとうふを買いに行って はからずも 母に会った おとうふを買いに行かなければ 会えないおかあさんだった 陽がやや傾きかけた時刻 容れものを持って 西のおとうふ屋へ おとうふを買いに行かなければ ——わたしも 会いたいわ この頃すこし老けた妹が しおらしいことをい
2024年4月13日 10:51
今回は、北川冬彦の「馬」という詩について見ていきます。この詩を引用するに当たって、歴史的仮名遣いは現代の仮名遣いに改めました。 「馬」 軍港を内臓している。 この詩は、一見、謎めいた作品であるかのように思えます。タイトルの“馬”というのは、あの動物の馬のことですが、この詩はなんと、馬という生き物が「軍港を内臓している」のだと主張しているのです。言うまでもなく、実際には、馬の
2024年3月23日 14:27
今回は、詩人・石垣りんの「水槽」という詩について見ていきます。 水槽 石垣りん 熱帯魚が死んだ。 白いちいさい腹をかえして 沈んでいった。 仲間はつと寄ってきて 口先でつついた。 表情ひとつ変えないで。 もう一匹が近づいてつつく。 長い時間をかけて 食う。 これは善だ、 これ以上に善があるなら…… 魚は水面まで上がってきて、いった。
2024年3月2日 08:42
今回は、詩人・谷川俊太郎の「誕生」という詩について見ていきます。 誕生 谷川俊太郎 頭が出かかったところで赤ん坊がきく 「お父さん生命保険いくら掛けてる?」 あわてておれは答える「死亡三千万だけど」 すると赤ん坊が言う 「やっぱり生まれるのやめとこう」 妻がいきみながら叫ぶ 「でも子供部屋はテレビ付きよ!」 赤ん坊は返事をしない 猫撫で声でおれは言う
2024年2月25日 09:51
今回は、太宰治の短編小説「親友交歓」について見ていきます。 これは、作者の太宰自身であると考えられる語り手の許に、一人の男が訪ねてくる話です。東京において戦争で罹災したために、津軽の生家に避難していた語り手は、そこで小学校の同級生だと名乗る男の来訪を受けます。その男は百姓であり、東京で文学者として成功した語り手に対して、しきりに色々な物をたかります。要するに、勝手に「親友」を名乗るしたたかな田
2024年2月23日 08:59
今回は、深沢七郎の小説「無妙記」について、見ていきたいと思います。 この小説は、一見、大変難解に思える小説です。作品は、京都を舞台にしていて、腕に神経痛を抱えた骨董屋の男が、アパートの隣室の会話を盗み聞きするところから始まります。物語は途中まで、この腕の神経痛の男や、隣室にいる三人の大学生たちについて描写しています。しかし、作品には途中から、「白骨」という言葉が異常にたくさん現れるようになりま
2024年2月21日 08:46
今回は、村上龍の短編小説「OFF」について見ていきます。 この作品には、一人称が「あたし」である語り手が登場します。この「あたし」は売春婦であり、作品は、全篇、性と暴力にまつわる描写で満ちています。そのような描写の合間に挿入されるのは、「あたし」が中学生だった頃の思い出にまつわる話です。「あたし」は、中学生の頃、上級生のヤマグチさんという男子に恋をしていました。ヤマグチさんはブラスバンド部で指
2024年2月19日 09:10
今回は、夏目漱石の小説「坊つちやん」について見ていきます。 この小説は、一人称が「おれ」である人物の語りで展開されます。この「おれ」については、精神のありようが、ほんの少しおかしい、そんな人物であると言えます。では、一体、どこがおかしいのでしょうか。それについては、登場人物である清の言葉を借りたいと思います。清は、「おれ」の性格について、「真っ直」(まっすぐ)な気性である、と評しています。その
2024年2月17日 09:31
以前、太宰治の「男女同権」という小説について解釈しましたが、今回は、この小説について、解釈し直したいと思います。 この小説は、一人の老詩人が、「男女同権」というテーマの下に講演を行った、その講演の速記録という形を取っています。しかし、この老詩人は、世間一般で言う「男女同権」の主旨をまるで理解していなくて、本当は、「男性に対して、女性の権利を主張する」という理念であるのに、その逆の、「女性に対し
2024年2月16日 09:01
今回は、詩人・谷川俊太郎の「午の食事」という詩について見ていきます。 午の食事 谷川俊太郎 そうして雲の多い空の下にもまたふたたびあの楽しい午の食事が廻って 来る。不幸に耐えながら不安に耐えながら沢山の家庭がまたあの楽しい午 の食事をしたためる。どんな場合にもそれはあわれに楽しい午の食事だ。 離婚の日の誕生の日の卒業の日のそして又死の日の午の食事だ。滅びるこ とを知っている
2024年2月15日 08:44
今回は、詩人・谷川俊太郎の「はな」という詩について見ていきます。 はな 谷川俊太郎 はなびらはさわるとひんやりしめっている いろがなかからしみだしてくるみたい はなをのぞきこむとふかいたにのようだ そのまんなかから けがはえている うすきみわるいことをしゃべりだしそう はなをみているとどうしていいかわからない はなびらをくちにいれてかむと かすかにすっぱ
2024年2月14日 08:50
今回は、詩人・高橋新吉の「物」という詩について見ていきます。 物 高橋新吉 物は無限にあるから 何でも人にやるがよい 命などは殊に人にやるのがよいのだ この詩の語り手は、変なことを主張する人物です。この語り手は、まず、「物は無限にあるから 何でも人にやるがよい」と言っています。この主張に関しては、その内容に納得することができます。私たちは、この語り手に対して、気前の良い人
2024年2月13日 08:54
今回は、詩人・谷川俊太郎の「ゆめのよる」という詩について見ていきます。 ゆめのよる 谷川俊太郎 たろうは ゆめのよるに ゆめのふとんを かぶって ゆめのねしょんべんを しながら ゆめのゆめを みてるまに ゆめのパジャマを きたまま ゆめのしんくうそうじきに すいこまれてしまった というゆめを みながら かんけいないよ と じろうは おもった
2024年2月12日 08:52
今回は、谷川俊太郎の「なくぞ」という詩について見ていきます。 なくぞ 谷川俊太郎 なくぞ ぼくなくぞ いまはわらってたって いやなことがあったらすぐなくぞ ぼくがなけば かみなりなんかきこえなくなる ぼくがなけば にほんなんかなみだでしずむ ぼくがなけば かみさまだってなきだしちゃう なくぞ いますぐなくぞ ないてうちゅうをぶっとばす
2024年2月11日 09:05
以前、谷川俊太郎の「ごちそうさま」という詩について書きましたが、今回は、この詩について、もう一度、解釈し直したいと思います。 ごちそうさま 谷川俊太郎 おとうさんをたべちゃった はなのさきっちょ こりこりかじって めんたまを つるってすって ほっぺたも むしゃむしゃたべて あしのほねは ごりごりかんで おとうさんおいしかったよ おとうさんあし
2024年2月10日 09:21
今回は、高橋新吉の「じゃがいも」という詩について見ていきます。 じゃがいも 高橋新吉 一つのじゃがいもの中に 山も川もある この詩の語り手は、変なことを言っている人物です。「一つのじゃがいもの中に/山も川もある」。じゃがいもの中には当然、山も川もありませんから、この人物の言うことは、一見、デタラメであるように思えます。 しかし、実際に、じゃがいもをよく観察してみてくださ