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小説 桜ノ宮

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大人の「探偵」物語。 時々マガジンに入れ忘れていたため、順番がおかしくなっています。
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#恋愛

小説 桜ノ宮 ㉘

紗雪は広季が滞在する部屋に美里を無事送り届けると、ゆっくりと廊下を歩きだした。
鼓動がいまさらになって早くなる。右耳の後ろから汗が流れた。
エレベーターを待っている間に肩を上下させて体をほぐすことを意識する。
間で大きく深呼吸をしてみた。
肩甲骨をぐるぐると回したあと、広季と美里のいる部屋を遠目に伺う。
ドアは閉じられたまま。
何の異変も感じられなかった。
エレベーターが到着し、ドアが開く。
なだ

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小説 桜ノ宮 ㉕

小説 桜ノ宮 ㉕

修はフロントで書類整理をしながら、紗雪を待っていた。
最初に届いたメールを見た時には度肝を抜かれた。
―私、芦田さんとホテルに行くから。-
読むなり修の顔が真っ赤になったのは言うまでもない。
嫉妬はもちろん、この間自分と関係を持ったばかりだというのに相手がほかにいるのか、しかもこのホテルへ一緒に来るのかと、紗雪の神経を疑った。
―あ、今、変なこと書いたかも。誤解せんといて。これには事情があってやな

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小説 桜ノ宮 ⑮

小説 桜ノ宮 ⑮

「いってらっしゃい」
穏やかな眼差しで手を振る紗雪を前にして修は戸惑った。
履きなれたスニーカーがなかなか足におさまらない。
「靴ベラ、使う?」
紗雪が靴箱を開けようとした。
「いや、大丈夫」
つんのめりながら、手早く解錠しドアを開けて外に出た。
「いってらっしゃい」
再び紗雪は言った。
さっきよりもにこにこしている。
「い、行ってきます」
修は紗雪と目を合わすことができなかった。
「また、来てね

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小説 桜ノ宮 ①

小説 桜ノ宮 ①

ありふれた春の午後だった。少し冷たい風に桜の枝が揺れていた。芦田広季は、定食屋から出てくるなり花びら交じりの風を浴びた。

大阪・桜ノ宮。

川沿いの桜並木へと吸い込まれるように歩いていく。

川から立ちのぼる生臭い匂いを阻止するために息を止めた。腐った青汁のような色をしたこの川を可憐な桜が包み込むように咲いている。
広季は人目も気にせずジャンプして桜の枝に触れてみた。着地するなりベルトの上の贅肉

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小説 桜ノ宮④

施設を出て歩き出した時だった。紗雪の背後から足音が迫ってきた。
「市川さん」
事務担当の岸という若い女だった。つけまつげを瞬かせながら紗雪のもとにやってくる。
「あの、すみません」
「はい」
息を上げている岸に対し、紗雪は表情一つ変えずに答えた。
「今月からお支払いの方が滞っているんですが」
「え」
施設のローンは父親の通帳から引き落とされていた。
「そうなんですか」
「はい。できるだけ早めにお振

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