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シンギュラリティな話(その5):エポック

レイ・カーツワイルが唱えたシンギュラリティ(技術的特異点)についてシリーズで紹介しています。

前回は、その予測の裏付けともいえる最新科学を、GNR(ゲノム・ナノテク・ロボット工学)という視点で触れました。
今回は、そのシンギュラリティに至る、そしてその先の時代を、ある程度同じ意味合いでくくった「エポック」という6つの時代区分で紹介します。
今までとスケールがいきなり超マクロになりますので、ご理解ください。

エポック1:物理と化学

宇宙が138億年前に誕生し、膨張につれて素粒子及びその間での作用(強い力・弱い力・重力・電磁気力)、そしてそれらのうち陽子・中性子・電子が固まって「原子」が形成されます。
原子が集まって分子となり、上記作用でさらに固まっていき、宇宙で恒星・惑星が形成され、46億年前に地球が太陽系内に誕生します。
この段階では生命というよりは、物理と化学法則が中心です。

エポック2:生命

地球が誕生して10億年近く達すると、DNAという自己複製機構を備えた「生命」が誕生します。
初めは単細胞だったのが、シアノバクテリアによる光合成をはじめとして酸素濃度が高まり、より高いエネルギーを消費する多細胞生物に連なっていきます。

エポック3:脳

生物は脳という神経細胞群を備えていき、各身体での感覚などを情報として蓄えてフィードバックする、いわゆる「生物の進化」が進んでいきます。
ここでカーツワイルは進化を理論づける手段として(要はエントロピー増大則に従えば、生命という秩序体は存在出来ないという反論に対して)、開放系であれば自己組織化出来る、と言う「散逸構造理論」を引き合いに出しています。
これはイリヤ・ブリコジンが唱えたもので、やや以前にふれた「複雑系」とも絡みます。
そして、ついに知的処理に強い大脳新皮質を備えた人類が誕生します。

エポック4:テクノロジー

人類も、ネアンデルタール人やデニソワ人などが存在していましたが、比較的地球の広域に進出したホモ・サピエンスだけが生き抜こります。
言語・宗教・道具・社会化(家族・集落など)・文字など文明化が進み、特に科学を通じて発明が加速度的(シナジーや競争激化の影響と推測)に増加していきます。
そして、遂に自分たちの脳内での能力を超えるテクノロジーが生まれることになります。

エポック5:テクノロジーと人間の知能の融合

人間の脳内の動きが解明され、コンピュータネットワークと接続可能になります。その結果、知識の大半はそこに依存出来、数千億倍の情報にアクセスが出来るようになります。

そうなると、科学技術の進化が加速していき、その過程でテクノロジーが自己改良を重ねて人間の知能すら超越する「シンギュラリティ」がこのエポック内で生じます。

ここでのテクノジーはソフトウェアとしての人工知能だけでなく、前回ふれたGNRが牽引していくと予見します。つまり、我々生物と機械が融合する時代の到来です。

エポック6:宇宙が覚醒する

シンギュラリティを迎えると、いずれは地球内の物質とエネルギーが飽和を迎え(コンピューティングで再構成・最適化した結果)、次に地球外、つまり宇宙の資源開拓にシフトします。
ただ、今の物理法則では光速度がボトルネックになるため、ワームホールなど新しい手段を考案し、宇宙全体に機械と融合した人類(もはや今の形態とは違いますが)が進出していきます。

以上で各エポックのハイライトを終えます。

書いている自分でも感じるのですが、どうしてもエポック5あたりからが直感的に咀嚼しにくいと思います。
ただ、それこそが「収穫加速の法則」で我々の想像が難しい証拠でもあるわけです。

この予測(一応科学的な裏付けもあるので予言とは言いません)が、今の生成系AIブームで改めて見直され、もし個人・組織として備えられるものがあれば実行してみたいと思います。

以前にもふれましたが、カーツワイルは2024年にシンギュラリティ最新刊を発行する予定です。
彼の予測がこの生成系AIブームも踏まえてどう加速度的に進化しているのか? きわめて興味深いです。

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