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紅茶のように暖かくほろ苦いストーリーだったりを集めました。皆さんのコメントお待ちしてます。
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短編小説♯6 そのケーキの味、極楽

短編小説♯6 そのケーキの味、極楽

昼休み、血を吸いたいと歩き回り、日をフードで避け、ニンニクの匂いがするラーメン屋には入れず(ラーメンは好きなのに。)、トマトジュースを見るだけでドキッとしてしまっては、十字架を見るだけで貧血を起こし、何より化粧をしても鏡に映らないから仕上がっているか他人に聞くしかない。

そうこうしていると休憩の時間が終わってしまう。

でも血が、血が欲しくてたまらない。

誰か血をくれないか、誰か私に。

また

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短編小説♯5 なんでなの?

短編小説♯5 なんでなの?

なんで電車を止めないのかな。

つり革を掴むことも戸惑う日が来るくらい、世界は変化した。マスクは必須、アルコールに負けて荒れる指、あったとしても透明な敷居で間に壁を作って、今ではお酒の提供もできなくて、私のアルバイト先は案の定休業になってしまった。

電車に揺られて隣の人の肩が当たる。

こういうのは濃厚接触って言わないのかな。

車内のニュースはオリンピックをやるのかやらないのかと毎日毎日言い争

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短編小説♯1 叶わない、かもしれない、願い

短編小説♯1 叶わない、かもしれない、願い

私は、夢の中にいた。そして目の前には彼がいる。

彼は会ったことない人だ。でもなぜだろう、心がすごく温かくなる。

「結婚してくれますか?」

彼から言われた突然の婚約。

ただ、迷うことはなかった。

「はい。こちらこそよろしくお願いします。」

彼の顔は笑みが溢れ、自分の拳をぐっと握った。

そして、その拳を解いて、私の頬に手を当てた。

この温もり、そして微かな震え。

本気で握っていたのだ

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短編小説♯3 反対側でマスクを外す君

短編小説♯3 反対側でマスクを外す君

その子は、月、水の朝、いつもレジにいる。

自分は朝はギリギリまで寝る。早く起きても、必ず睡魔に負けてギリギリ起きて少し小走りになりながら、スーツに腕を通す。

一人暮らしにも一年もすれば慣れて、朝どれだけギリギリまで寝れるかを徹底した準備っぷりには、我ながら感心している。

そしてギリギリに起きる代償。

朝ごはんは駅で食べる。

おにぎりと野菜ジュース。具はローテーションで、野菜ジュースも三種

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