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【シナリオ】「暑くて溶けそう」と言われた時の神返答を考える話。

ーはじめにー
「暑くて溶けそう」に対し、「それな」じゃない、ちょっと面白い返し、してみたくありません?


〇電車のホーム 昼間12時


ド田舎の駅で、中学生3人、立って電車を待っている。
周りには人は居なく、蝉の声だけが聞こえる。

ゆうり「…いや暑すぎだろ。」
深雪「後ちょっとで乗れたのに…」
なずな「ごめん…私がもう少し早く準備できてれば…!」
深雪「いや、結局歩くの遅かったから私たち。」
ゆうり「あーー無理ー!!!駅のホームに待合室もない。駅ビルもない。電車来るまであと30分?ふざけんな!このまま待つなんて死亡案件だからな!」
なずな「今日何度だっけ。」
深雪「35℃。」
ゆうり「こんなことなら梅雨明けるなよ。」
深雪「先週まで雨マジだるいって言ってたくせに。」
ゆうり「雨も嫌だけど暑いのも嫌だわ!あー無理。まじ死ぬ。」
なずな「誰かあれ持ってないの?なんか去年から流行りだしたさ、手持ちの扇風機みたいなさ!」
2人「「あー。」」

シーン。

ゆうり「まぁ持ってねぇよな。」
深雪「持ってないわね。」
なずな「タオル濡らしてこようかなぁ。」
ゆうり「マジ無理ー。このままあたし暑さで溶けるんじゃないかな。」

無言。

ゆうり「あれ、死んだ?」
深雪「生きてるわよ。」
なずな「暑さで溶けるかー。」

なずな、上を向いて考え始める。

ゆうり「はじまった?なんか始まった?なずな。」
深雪「始まったわね。」
ゆうり「いいよ、暑さで溶けるはつっかかんなくていいところだから。」
なずな「いや、面白いなーと思って。」
ゆうり「なにが。」
なずな「人間って溶けるのかな!?」
2人「「根本的なところキター。」」
ゆうり「溶けねぇよ、ものの喩えだよ。」
深雪「言わない?暑くて溶けるって。」
なずな「いや、私も言ったことあるんだけどさ。改めて考えると、なんでそんな言葉が生まれたんだろうって。」
ゆうり「だから喩えてんだよ。暑さで氷とか、アイスとか溶けるだろ?それを人間に見立ててんの。」
なずな「なんで見立てるんだろう…。」
ゆうり「はぁ??」
深雪「まじ探究心3歳児ね。」
ゆうり「めんどくせー。」
なずな「え、考えてみよ、面白いよ?」
ゆうり「面白くねぇよ。え、じゃあなずなはなんでだと思うんだよ。」
なずな「うーん。あ、人間の温度の方が低いからじゃないかな?この気温より。ほら、アイスとかは冷たくて、それ自体の温度低いでしょ?」
ゆうり「お前平熱何度だよ。」
なずな「36.6℃。」
ゆうり「たけーじゃねーか。もうちょっと真面目に考えろや。」
なずな「じゃあゆうりは?なんでだと思う?」
ゆうり「あぁ?えー…。…あ。」
2人「「お?」」
ゆうり「アイスってさ、溶けるとさ、そのアイス、垂れてくるじゃん。」
なずな「あー。」
ゆうり「それと、その溶けている様子と、人間が汗を垂らしている様子を掛けているのでは?」
2人「「あー。」」
なずな「汗か…汚いね…。」
ゆうり「でもお前の意見より説得力あるからな。」
深雪「(スマホを見ながら)自分で言う?それ。」
ゆうり「…何調べてんだよ。」

ゆうり、なずな、深雪のスマホを覗き見る。

なずな「…『暑くて溶ける 意味』。」
ゆうり「全然ヒットしてねーじゃん(笑)」
深雪「こんなこと誰も調べないわよね。」
なずな「待って!これ見て、この知恵袋の、」
深雪「これ?」
なずな「そうそう!」

深雪、なずなに指定された検索結果をタップする。

ゆうり「なになに…『初めて会う人に、「暑くて溶けそうだよね」と言われました。この時、上手く返事をすることが出来なかったのですが、なんて返すのが正解だったでしょうか?』。」
ゆうり・深雪「「いや、しらねー。」」
深雪「究極に興味無い。」
ゆうり「回答数ゼロだしな。」
深雪「誰が考えるのかしら。」
なずな「『汗がアイスっぽいですもんね!』とかになるのかな?」
2人「「考えてるよ…。」」
なずな「考えようよ!あと20分も暇なんだよ!ベストアンサー貰おうよ!」
2人「「えー…。」」
深雪「…まぁ確かに言えることは、汗がアイスっぽいはベストアンサーにはならないってことね。」
なずな「えー、なんで?」
深雪「考えてもみなさいよ!初対面の人に汗がアイスっぽいって言われるのよ?気持ち悪いでしょ!「何?汗アイスっぽいって。汗がベタベタしてるってこと?それとも美味しそうってこと?どっちにしても気持ち悪いんですけど。」って思われるでしょ。」
なずな「えーでもアイスみたいなのを想像して溶けるって言ってるんでしょー。」
ゆうり「普通に"それな"でいいだろ。共感しとけ共感。」
なずな「それじゃつまんないよー。」
深雪「初対面の人にこう言われたっていう質問してるってことは、その人と仲良くなりたいってことでしょ?ただ共感してて仲良くなれる?」
ゆうり「なれんじゃね?知らんけど。よくクラスの女子とか共感しかしてないじゃん。「えー!まじ可愛いんですけどー!」「それなー!」「これさ、お揃いにしたくない?」「それなしたいしたい!」「まじそれなー!」って。」
なずな「ゆうりがこの先一生しなさそうな会話だね!」
ゆうり「女子ってやつはこれで仲良くなれんだろ?」
深雪「仲良くはなれない。それは上辺だけ。」
ゆうり「深雪そういう会話してそうだもんな、説得力あるわー。」
深雪「うるさいわね。とにかく、初対面の人と仲良くなるには、「この人面白い!」と思わせつつ、けど的外れな回答をしないという絶妙なラインを狙わなきゃいけないのよ。」

なずな「おー(拍手)」
ゆうり「深雪って人と話す時、そういうこと考えながら会話してんのな。」
深雪「してないわよ!!一般論を言っただけ!さぁ、考えるわよ。ベストアンサー狙うわよ。」
なずな「よっしゃ!!!」
ゆうり「なに急に深雪まで…。」
なずな「深雪だったらなんて返す?こう言われたら。」
深雪「そうね…好印象を得る為には…。あ。」
2人「「ん?」」
深雪「じゃあー、深雪ちゃんと一緒に溶けてみよっか!溶けたら2人混ざり合っちゃうね!どうしよー!!」

沈黙。
蝉の声。

深雪「なんか言いなさいよ。」
ゆうり「お前が友達いない理由がよくわかったよ。」
深雪「(ゆうりの頭をグリグリする)黙りなさい。」
ゆうり「痛い痛いギブギブ。」
深雪「えー、良くない?結構面白いと思ったんだけど。」
ゆうり「面白いじゃねーよ。お前が言うと重くなんだよ。」
なずな「確かに、アイドルが握手会とかで返したらファンが喜びそうな言葉だよね。」
ゆうり「だってさ。」
深雪「うぐぐ…やっぱりアイドルになるしか…。」
ゆうり「お前やっぱ的外れすぎんだよな。」
深雪「そんなゆうりはなんて返すのよ。」
ゆうり「はぁ???そんなんどーでも…」
深雪「どーでもいいは逃げだからね??」
ゆうり「えぇ…。あー。」
なずな「でもゆうりだったら、「うるせぇ勝手に溶けてろ」って言いそう。」
ゆうり「あー確かに、言うかも。」
深雪「初対面の人に?」
ゆうり「いや、さすがに初対面の人には言わないけど。てかこれ初対面の人には共感しか出来なくね?」
深雪「それよね。」
なずな「そうかな…。」
深雪「出た、コミュ力お化けなずな。」
ゆうり「お化けは他に答えないのかよ。」
なずな「…溶けたらどんな味がするんだろうね!」

ゆうり「まぁなずなが言えば受け入れられるんだろうなー。」
深雪「才能よね才能。」
ゆうり「羨ましー。」
なずな「え、何何?」
深雪「うーん、何かいいのないかしらね、万人受けする回答…。」

ゆうりの携帯からLINEの着信音が鳴る。

なずな「誰々?彼氏?」
ゆうり「いねーわ。多分輝。さっきちょっと送ってみたんだよね、「暑くて溶けそう」って。」
2人「「おー!!」」
なずな「確かに、輝なら万人受けする回答送ってくれそう!」
ゆうり「何気に友達多いからなー、あいつ。」

ゆうり、スマホをポケットから取りだし、輝とのトーク画面を開く。
深雪となずな、ゆうりスマホを覗く。

3人「…『型に嵌めたろか』」
ゆうり「…こいつ、天才か?」
深雪「これは思いつかなかった。」
ゆうり「めっちゃおもろいじゃんこの返し!なんか、しっくりくるし。」
深雪「誰でも使えそうだし。」
ゆうり「わかる。」
なずな「え、どんな型なんだろうね。」
ゆうり「やめろ、そこは探究しなくていいとこ。」
深雪「3歳児眠ってて。」
なずな「え、気にならない?アイスの型なのか、動物の型なのか、虫の型なのか、」
ゆうり「それはご想像なんだよ。それ言ったらシラケるか引かれるかなんだよ。」
深雪「確かに。敢えて言わないことによって、相手の想像力を働かせるという点でも良い回答ね。」
ゆうり「想像させんのが面白いんだよな。…そう考えると芸術的な回答でもあるな。」
深雪「さすが輝ね。」
ゆうり「さすがだな…。」
なずな「型にはめた後どうするんだろう…。」
ゆうり「後の事なんていいんだよ。嵌めたという事実が面白いんだから。」
なずな「え、でもさ、ゆうりは、「型にはめたろか」って言われたらなんて返す?」
ゆうり「…「人間の型でお願い」。」
2人「あー。」
深雪「型指定ね。」
なずな「深雪は?」
深雪「…「一緒に蜂蜜も流しといて」」
ゆうり「なんで?」
深雪「美味しそうじゃない、その方が。」
ゆうり「なずなは?」
なずな「うーん…。…!!!「ちゃんと冷やしてね!」」
2人「あー!!」
ゆうり「いいな、それ。涼めるしな!」
なずな「でしょでしょ!じゃあそれ輝に送って!」

ゆうり、輝に『ちゃんと冷やせよ』と打ち込み、送信。
すぐ既読がつく。

深雪「はや!」
ゆうり「暇か。」

LINEの着信音。

ゆうり「…『北極置いてく』。」
3人「「いや、寒いわ!!!」」


おしまい

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