見出し画像

【シナリオ】真夏、女子大生がただ恋バナをする話。

ーはじめにー
 ただの女子大生5人の、他愛もない会話。
だけど、違和感を感じる人は、感じるかもしれません。
それを感じない人が増えたらいいなと、私は思います。

〇夏某日 ダンススタジオ
冷房は効いているが、少し蒸し暑い。
大学四年生女子5人、壁に立てかけてあるクイックルワイパーを見つめる。
栞はサンドイッチを食べている。

無言。

色音(いろね)「私はもう、しないよ、これ以上。頑張ったよ。」
琴「うん、頑張ったね、色音。」
凪「うん、本当にありがとう色音。」
色音「うん。」
理子「…ほんとに死んだ?」
栞「いや、死んだろー、勢いやばかったし。」
色音「なんかねー、出てたよ汁みたいなの。」
琴・凪「「汁!?」」
色音「うん、なんか潰した後に、クイックルワイパー引いたらこう…。」
理子「しとめたねー。」
色音「しとめたね。」
琴「で、この後どうする?これ(クイックルワイパー)。」

沈黙。

琴「…じゃんけんすっか。」
凪「ひぃー。」
栞「いや、俺やるよ。」
理子「え?」
栞「片付ける片付ける。」
色音「どしたのシオ。」
琴「いや、いいよジャンケンしよ。勝った人で。」
栞「みんな死骸処理したくないんでしょ?いいよ、俺やれるし。あ、その代わりこれ(サンドイッチ)食い終わるまで待って。」
色音「いや、それは全然待つけど。」
凪「え、ほんとにいいの?」
琴「いいよシオ、ジャンケンしよ。」
栞「みんなやりたくないんだったら別にいいかなーって。」
理子「さっすがサークル長。」
栞「だろ?」
琴「いや、やっぱじゃんけんの方がいいと思う。」
栞「お前めっちゃジャンケンしたがるじゃんどした(笑)」
琴「いや、だって、盛り上がるじゃん?…実を言うと罪悪感。」
栞「だからいいんだって、俺気にしないし。」
琴「いや、気にしない人なんていないよ。だってGよ????好きな人いないよ???」
栞「いや、そりゃ別に好きじゃないけど。」
色音「じゃあこっちゃんやる?」
琴「やりたくはない。けど、」
理子「任せよー。」
栞「任せろー。」
凪「え、ほんとありがとうシオ。」

栞、サンドイッチを食べ終え、立ち上がりクイックルワイパーに近づく。

栞「え、ほんとに死んでんだよね?」
凪「死んでる死んでる。さっきね、ゴキジェットもかけといた。」
栞「クイックルワイパーに向かって?」
凪「クイックルワイパーと、床の境目?に向かって。」
理子「追い打つねー凪。」
凪「隙間からとかね、出てきたら怖いからね。」
色音「大丈夫?シオ。」
栞「いけるいける。」

栞、サクッとクイックルワイパーからシートを取り外し、シートの下に存在しているゴキブリの死骸をクルッとシートで包み込み、ビニール袋に入れ処分する。

栞「もう原型もなかったわ(笑)」
4人「「すげー。」」

拍手が起こる。
栞、手を洗い消毒をする。

凪「マジほんとありがとうシオ。」
琴「超尊敬した。」
栞「ウケる、なんか絆深まったねこれで(笑)」
理子「どんな絆だ。」
琴「色音叫んでたもんね(笑)」
色音「だってここ(太ももを指して)にいたんだよ??ゼロ距離だったもん。」
琴「ほんと理子ぴもよくあんな冷静に見つけられたよね。」
栞「ほんとそれ、あれハエ見つけたくらいのテンションだったよ。」
色音「なんか羽の色3層くらいになってた。新種だよあれ。」
理子「新種ではないと思うけど。」
色音「とにかく、キモかった。」
凪「はぁ、ほんとにありがとう色音、仕留めてくれて。」
色音「勢い大事だね。」
琴「シオもマジで尊敬した。」
凪「ほんとそれ!ありがとうシオ〜」
理子「凄かった。」
栞「いやーどうもどうも。ま、俺彼女できたしさ。こんくらいね。」
4人「「あー。」」

沈黙。

琴「え?」
色音「できたん?」
栞「うん。」
理子「え、聞いてない。」
栞「あれ、言ってなかった?」
琴「言ってない!」
凪「やったじゃん!」
栞「そうなのよ、やったのよ!はは。」
琴「はは!じゃないよ、ちょ、詳しく!」

みんな、栞の元に集まり、体育座り。

栞「ええ、みんなそんな聞きたいの??」
理子「あ、なんかうるさそう。」
琴「わかる、調子乗りそう。」
栞「なんだよ、聞きたいんじゃないの?」
凪「え、どこの、誰??」
栞「あのー、あれ、凪だけ知らないのかな。あの、同じ学科のね、」
理子「え、きーちゃん?」
栞「…でへへぇぇ。」
4人「「うわああ!」」
理子「だろうと思った。」
色音「え、あの子だよねあの、最近ずっと泊まり行ってるって言ってた、」
栞「そうそう。」
凪「え、あのもしかして、1回練習後来たことあったあの、」
栞「そうそう〜」
琴「おめでとう。」
栞「いやぁ、どうもどうも。」
色音「え、いつから?」
栞「ほんとにね最近。2日前?とか。」
琴「アツアツじゃん!」
栞「そうなの。いや、俺はもうずっと前から100回くらい告ってたんだけどさ、もう100回断られてて。」
琴「泣きの1回?」
栞「そう、泣きの1回。」
理子「粘ったねー。」
凪「いいなー、めっちゃ幸せでしょ今。」
栞「うん。めっちゃ幸せ(笑)」
色音「どうりで今日うるさいと思った。」
凪「めっちゃテンション高かったもんね(笑)」
理子「気前よくゴキブリも取るしね。」
色音「なーんかあると思ったよ。」
栞「いやほんと幸せ。聞いてよ、昨日俺さ、あの、ゲイの元彼とスイパラ行ったって言ったじゃん。」
理子「あ、あれ元彼とだったんだ。」
栞「そうそう。それもさ、きーちゃん知ったらさ、「それ行かないでって言ってもいい?」とか言っちゃってさぁー!!」
琴「なにそれ!!かわ!!かわよ!!!」
栞「可愛いだろおおお!!俺だけメロメロだと思ってたら、きーちゃんも、ちゃんと俺にメロメロになってくれてたんよ!!「何もないよ」って言っても心配してくれてさぁ。」
琴「幸せだねー。」
栞「幸せだなー。幸せな時に死にたいとか言う人いるけど、俺はまだ死ねないなー。」
色音「会えなくなるもんね。」
栞「そうなんよ。まだきーちゃんと思い出を作らなきゃいけないからね。」
琴「あーそうやってみんな私を1人にしていくんだなぁ。。」
4人「…。」

一同、爆笑。

琴「笑い事じゃないから!いいもん。すぐいい人見つけるもん。」
栞「ごめんごめんこっちゃん。」
琴「むかつくぅぅ、でも可愛いから許す。お幸せにィィ。」
栞「いやぁ、パートナーがいるっていいねぇ。」
琴「それ言うのは許さないよ??」
栞「ごめんごめん(笑)」
凪「理子ぴも最近上手くいってるの?」
理子「うん、やっと会った。」
色音「この前飲んだんだって。」
琴「なにそれ聞いてない!」
理子「その時に、2ヶ月?ぶりに。」
栞「すげぇよまじ、2ヶ月何も無かったのによくそれを、何も無かったかのように戻せるよね。」
琴「理子ぴの包容力よ。」
凪「母性勝つね。」
色音「母性かー。」
琴「色音も順調でしょ?」
凪「マッチングアプリの彼だっけ?」
色音「うん、全然問題なくだね。めっちゃ楽しい。」
理子「色音が幸せそうだとみんな嬉しいよね。」
凪・琴・栞「「わかるー。」」
栞「凪は??」
凪「浮気されたけど、順調!」
栞「めっちゃ快活に言うじゃん(笑)」
理子「それ順調って言うん??」
凪「順調になった、かな。別れてやろうとは思ったけどね。」
栞「でも凪はきっとそのまま結婚しそうだよなー。」
琴「なんだかんだ言ってね。」
凪「どうかなー。」
色音「良い人いないの?こっちゃん。」
琴「いやぁ…周りにはなぁ。。」
栞「あれ、好きじゃなくて別れた元彼何歳だったっけ?」
琴「39。」
栞「いや、最高だわ。」
理子「相変わらず大人だねぇ。」
琴「なーんかねぇ、やっぱ同級生はなぁ、ってなっちゃうんだよね。でも最近ね、ちょっと頑張って、同級生と恋愛しようと試みたんよ。」
凪「おお!」
理子「でも?」
琴「無理だったねー。」
栞「いや、こっちゃんは歳上なんだって。」
琴「歳上なぁ。若い恋愛もしたいんだけどなぁ、そろそろ。」
理子「あれ、歳上としか付き合ったことないんだっけ?」
琴「ううん、初カレは同級生。でもそれっきり莫大な年の差だなぁ。」
4人「「莫大な(笑)」」
琴「あーーいい人いないかなぁ。こう、大人の魅力を兼ね備えた、落ち着いた、同学年、ひと周り超えないくらいの!」
理子「それ同学年でくくれないんだよなぁ。」
琴「くくれないかー。」
栞「面白いなぁこっちゃん。」

間。

琴「友達いてよかったって思うわ。」
栞「暇な時いつでも呼びな、きーちゃんち居ない時は対応するから。」
凪・理子・色音「「私もー」」
琴「みんなどうせパートナーと一緒にいるんだろ。毎日のように一緒にいるんだろ?」
栞「合鍵注文したんだ。付き合う前に。」
琴「おい確信犯!!確信犯!!!」
栞「先手必勝!」
琴「あーーー、恋人くれぇぇぇ。」
凪「てかそろそろ練習…。」
栞「あ!たしかに。」
色音「吹っ飛んでたね、ゴキのせいで。」
栞「今日理子ぴの曲だよね?」
理子「…それが、、まだ振りを覚えられてなく…。」
4人「「お?」」
理子「…お喋りターーーイム!!」
4人「「いぇーーーい!!!」」

と盛り上がるものの、結局琴の案でダンス練習を始める。
なんだかんだ言いつつみんな立ち上がり、振りの練習を始める。
始めるとみんな真剣な顔になるが、たまに栞が腑抜けたことを言い、みんなの表情が緩む。
それを繰り返す、真夏の16時過ぎ。
蒸し暑さは、まだ続く。


おしまい

ーあとがきー
 これ、私の日常のよくある光景です。
LGBTであることを隠さない、それをみんな当たり前のように受け入れる。
各々の恋愛の仕方があって、各々それを尊重している。
そんな日常、私にとっては普通だけど、普通じゃない環境の方が多いよな、と思って書きました。
私もそれが普通じゃない環境に身を置いていた時、とても辛かった。
そんな認識の人が、少しでも減りますように。
みんなそれぞれ、性も、恋愛対象も、自由。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?