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意図的秘密の『棕櫚10』+『レイドバックSF』
はじめに
『棕櫚10』
『レイドバックSF』に
興味をもってくださったみなさま、ありがとうございます。
2023年、素敵な二冊に誘ってもらえて、うれしさのあまりここぞとばかりにすきをつめこみ放題!の作品を寄せました。
すこしふしぎ、けっこうふしぎ、わけがわからない!
それでもよく、それでも好き
というお声はとてもとてもありがたく、勇気の出るものです。
ふたつの作品は、あるひとつの作品世界に連なっ
詩「シュトーレンと光」
まんなかにナイフを入れて
五ミリずつ 七ミリずつ
ドライフルーツがよく馴染んで
今日より明日 もっとおいしくなる
粉砂糖をまぶしたそれは
おくるみにくるまれたキリストの姿
まんなかにナイフを入れて
五ミリずつ 七ミリずつ
分断した傷口は開いたまま乾いて
今日より明日 もっと凄惨になる
硝煙や砂、血にまみれて
父が子の内蔵をこぼさぬように抱く
寿ぐ言葉よ
夜のあとには朝を与えよ
2023.12
オレンジのちアプリコット
まばゆいオレンジのなか、裕貴の背中が遠ざかっていくのを見送りながら、わたしはちっともさびしくないことを確認していた。
「あーさむっ」
ぴったりと閉めていた掃きだし窓が反射して、逆光のわたしを映し出している。冷気が入り込まないように、と思ったのだけれど、閉め出された気持ちにもなる。この部屋、どうしようか。
越してきて、四年がたとうとしていた。ベランダ用のスリッパのままで、点検のように1LDKの
フローズンピーチスムージーのおいしいつくりかた教えて
BFC5落選展
フローズンピーチスムージーのおいしいつくりかた教えて
こい瀬 伊音
角切りの黄桃と一口大のバナナとを冷凍庫からとりだして、カランカランとフードプロセッサーに入れる。牛乳とヨーグルト、はちみつを垂らしてスイッチオン。最初はすこしぎこちない動きだけど、やがてなめらかになる。とろとろの桃のスムージーを太いストローで吸い上げる。
亜里沙ちゃんの目はアーモ
不可逆的ガチョウ倶楽部
可逆か不可逆かっていうのは大きいんです、戻れるか戻れないかということですからね。なんとか食い止められるか否かってことです。ご自分の状態がだんだんわかってきましたか。
ALT48。健康診断では何年にもわたって芳しくない数字を叩きだし、運動するつもりがあるのか聞かれ、そのたびに「近々始める予定である」をチェック、なにもしないまままた次の健康診断が来て、加速度的にほぼすべての数値が右肩上がり。一セン
BFC4悪魔合体感想詩「羽根ペン」
BFC4…本日終わりを迎えましたが、
幻の2回戦を読み終えていません。いつもながらの遅読ですが、読みたい小説がたくさん、たくさんあるというのはとても豊かなことですよね。
いついつまでに読まなくちゃ!と背中を押されるのもきっかけとなって(助けてもらえて)好きですが、ゆっくり取り出して何度でも眺めるのも贅沢だなぁ。
そんな風に思いつつ、
幻の2回戦に出場された渋皮ヨロイさんの「白鷺」について変
掌編小説「ガラシャ殺し」
ーー侍女清原糸曰く
ガラシャ殺しーー清原糸曰く
こい瀬伊音
その茶碗を、「夫」は時々取り出して眺めた。正座した膝のまえに置き、ぬかづくようにしながら眺める。曲線、粒だった肌。釉の加減でくるまれたところと地肌を剥き出しにしたところ。ゆっくりと愛でたあと手に取った。つるりと丸みを帯びた側面から指のはらを這わせ、ざらりとの境目を撫でる。そのときには目を閉じていて、いえ、