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意図的秘密の『棕櫚10』+『レイドバックSF』

はじめに

『棕櫚10』
『レイドバックSF』に
興味をもってくださったみなさま、ありがとうございます。
2023年、素敵な二冊に誘ってもらえて、うれしさのあまりここぞとばかりにすきをつめこみ放題!の作品を寄せました。
すこしふしぎ、けっこうふしぎ、わけがわからない!
それでもよく、それでも好き
というお声はとてもとてもありがたく、勇気の出るものです。
ふたつの作品は、あるひとつの作品世界に連なったものでした。本文のうしろにひっそりと作品名を記し、だれかそこにたどり着いてくれないかな、なんて贅沢なことを夢想していた作者です。
あ!これはあの世界!?とピンときた方がもしいたら是非教えてください。ただただ作者がよろこびます。えへへ。

はじまりは恋文

なんて挑戦的な恋文!

「わたしは晶子。
 わたしは野枝。
 あるときには晴美。
 あなたを、おびやかす女」

与謝野晶子であり、伊藤野枝であり、さらには瀬戸内晴美(寂聴)であると名乗る、なんとも不遜な女・伊音はおもいびと司馬遼太郎への恋文に
「ラヴ・シーンが古いのよ」と記します。
そうして自作の「流れ星」を読めと迫っている。それはまるで「やは肌のあつき血汐にふれもみでさびしからずや」と師を誘う晶子のまなざし。
伊音には、どうにも好きな、けれど好きなあまり納得のいかない、遼さまの作品があったのでした。
『燃えよ剣』(新潮文庫1962)
土方歳三。新撰組副長として剣に生きた、苛烈な男の生きざまを描いた長編。

惚れた男を小説に書こうだなんて、あとにも先にもこの男だけ。

「流れ星」 土方の恋、最高峰


『棕櫚10』
「雛流し(ひいなながし)」の主人公は
異国人を父にもち、金の髪をしています。
そして「流れ星」での土方の想いびと、白川の娘。
幕府が倒れ明治が始まり、土方は馬上銃弾に散った。物語が閉じたあと、胸を患っていた母の白川も死んだ。
その後、花街の置屋に引き取られた娘のおはなしです。

『レイドバックSF』
「十六夜永詠嘆」の語り手は新撰組の二番組組長永倉新八。鳥羽伏見の戦いに参戦するも、十五代将軍徳川慶喜の裏切りで敗戦を重ねます。土方とは袂を分かち、明治の世に生き延びた永倉の、江戸最後の夜のおはなし。江戸っ子ならではの語り口調を存分に味わってほしい一作です。


遼さま。
わたしがおしひろげた世界を、あなたは見てくれるかしら。「これだから女の書くものは」って笑うようなら、あと何十年後か、じっくり話をしようじゃない。
いと

2023年クリスマスに



棕櫚10の写真は
新潟の海をバックに日比野心労さんが撮影したものをつかわせていただきました。ありがとうございます。

たくさんのなかまに、機会を場をつくってくださることに、読んでくださる方々に、たくさんの感謝を。

ここまでお読みくださったかたに、よいことがありますように。

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