待ってるね
こい瀬 伊音
月の近くにある星がなんだか、あの名前がわかればもっと日々が豊かなのにね、草花や鳥の名前もおんなじ、とそんな話をしていた友達が急に消えてしまって、わたしはとてもかなしい。
鳥の名前は。すずめとか、カラスとか、そんなのならわかるよ、カラスはかっこよくて好きと言うとき、彼女はきまってそのカラスのくちばしが太いのかとかそんな特徴が入ったくわしい名前を示すのだ。
きのうは、彼女が教えてくれた天文台のアカウントを検索して、見つけた星空の図をたよりに火星を探した。オリオン座のすぐそばが双子座流星群の放射点と書いてあったから、きっとあのへん、とわたしにもわかりやすかった。21時からたった5分、窓を開け放つと刺すような冷気だから5分、そのあいだ、三ツ星のほうを見ていると、突然ぽろりと光が落ちた。
涙をためているとき、わたしは気づかなくて、こらえきれないほどになって流れたあと残像だけが見えるんだ、姉妹のように仲がいいと思っていた彼女はいま、泣いているんだろうとか、あの天文台のツイートや流星群のことを話したいけれど、声を届ける方法もなくて。
春まで待てばまた会える? 今日も大きな鳥がゆっくり空を飛んでいくのを見たよ。あれはなんて名前かな。
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