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複業で自分の飲食店を持つ4つの方法と、実際に運営されているかたのお話を聞いてみました

飲食店を開業するというと、これまでは修行を積んだのち借金をしてお店を開くというパターンか、あるいは勤めていた会社をやめ、一世一代の決意で独立、というパターンがほとんどでした。

しかし最近になってこうした状況が変わってきています。

なんと今は、仕事をしながら複業的に飲食店を持つことができる時代なのです。


どういうことなのか。

今日は4つの事例をご紹介するとともに、実際に複業としてお店を経営されている方へのお話も合わせてご紹介したいと思います。


*ちなみに本記事では、働きながら飲食店を経営することを、パラレル(=並列)キャリア(=経歴)的な考え方から「副業」ではなく「複業」と呼んでいます。サブではなくどちらもメインという意味合いです。




1)決まった日時にのみ営業する間借り飲食店

飲食店を経営するにあたって一番のリスクは、決まった場所に店舗を構えることです。

店舗を契約し、お店として使えるようにするだけで数百万から1000万ほどかかります。

実はこの “店舗を持つ” というリスクを回避できる方法の一つが、キッチンを借りるという方法なのです。


今おそらくもっとも多いパターンは、すでにある飲食店の空き時間を利用する形。

たとえばランチだけとか、定休日だけ店舗を間借りして、自分のお店を開くのです。

このように現存する本物のお店を借りて、自分の店を営業するのです。

長期で借りる人もいれば、数日、数週間と、限定的に借りる人もいます。


今は間貸し店舗を仲介してくれる専門の業者もあります。

知らない人同士の貸し借りは何かとトラブルも心配なので、こうした仲介者を通しておくほうが安心かもしれません。



2)開いた時間にキッチンを借りて通信販売

私のマガジンで何度かご紹介しているキムラさんは、空いた時間に知人に借りたキッチンでスイーツを製作し、通信販売を行なっています。

本職は企業に勤める料理人。やはり独立を試すという意味でも良い経験になっているそうです。

実はスイーツに限らず、惣菜や自家製麺、ソース類、カレーセットなど、あらゆる食品はネットで販売することができます。

飲食店が副収入的に取り入れていることが多いのですが、仕事を別で持ちながら副業的に運営することももちろん可能です。


ただし自宅など許可のないところで製造された料理を販売するのは法律に触れるので注意が必要です。きちんと許可の取れたシェアキッチンなどを利用する必要があります。

シェアキッチンは1日単位で借りられるので、やめたくなったらわりとすぐにやめられるのも安心ポイントかなぁと。


飲食店というより製造業に近いかもしれませんが、接客は得意じゃないけど料理は好き、という人なんかには向いていると思います。

通信販売とあって立地の良し悪しに囚われないのもいいです。

ちなみにデリバリー用に設計された「クラウドキッチン」というのを利用すれば、ひとりでもゴーストレストランの運営ができてしまいます。



3)キッチンカーで週末起業

最近増えているキッチンカー起業。

うちの近所でも、ランチどきになると駅前やスーパーの駐車場などで出店しているのをちらほら見かけます。

個人が脱サラで独立したり、飲食店が副収入として営んでいるパターンも多いですが、会社勤めのかたの複業としても十分可能。

平日は難しいとしても、週末やイベント時などは場所によっては大いに稼ぎどきなのです。


仕事を別に持ちながら週3日だけやっている知人に聞いたところ、キッチンカーはどこに出店するかが本当に「命」だそう。

始めるならまずはどこに出店できるかの計画を立てた方が良さそうです。ここでしくじってしまう人が多いみたいですよ。


あと、キッチンカーは新車で購入すると数百万と、費用がけっこうかかるんです。

それに駐車場代など諸々の維持費、設備費用などを考えると、店舗を持つのと大差がなくなってしまうこともあり得ます。というか、キッチンカーって移動式の店舗ですからね。

ただこれがレンタルだと1日から可能で、けっこう格安なのも出てきているみたいです。

もし本気で検討するなら、まずはお試しで初めてみるほうがいいんじゃないかと思います。



4)ポップアップレストランという選択も

ポップアップレストランという言葉、最近よく耳にします。

ポップアップとは「ポンと突然あらわれる」というような意味。

その名の通り、毎回ちがう場所に出没するレストランのことを指します。空き店舗などを利用することが多いそうです。


面白いのは、現状では出店者の多くが料理経験者ではないことです。だから良い意味で常識はずれ。

出店する場所によって作る料理や店の雰囲気まで変えてしまうこともあるそうです。

どこに飛び出してくるかわからないワクワク感や、エンタメ要素的なところが魅力のひとつなんだろうなぁと思います。

一般的な飲食店だと、出す料理や場所や時間がコロコロ変わるなんてあり得ないことですから。面白い。


集客はSNSでの発信が中心になるので、主催者のブランディング力が試されます。

「えっ、あの〇〇がうちの町にも来るんだって〜!」と言わせられれば強いですよね。

↑こちらの「提灯東京」さんはけっこう有名みたいです。「神出鬼没の架空居酒屋」っていうキャッチコピーがついていて、もうそれだけでワクワクします。


あるいは世界を旅しながらポップアップレストランを開いている人もいます。



ご紹介した方法すべてに共通しているのは、飲食店を複業として営業する以外にも「将来的に独立したいから、そのお試しとしてやってみる」という使い方もできることです。

リスクを最小限に抑えて独立の準備ができるのはとても魅力的です。

長い修行を積んでいない若者でも起業にチャレンジできるなんて、良い時代になったなぁと感じます。



農場の一角でスタンドコーヒー店を営む住田さんにお話を伺いました!

ここまで、働きながら自分の飲食店を持つための4つの方法をご紹介しました。

ここからは、三重県の四日市市で会社員として働きながらコーヒースタンドを営む「喫茶すみへい」のオーナー・住田さんから伺ったお話をご紹介したいと思います。

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発端となったのは2018年。

「四日市の街中にも、お酒を飲んだあとに立ち寄れる喫茶店がほしい」。

そう考えていた住田さんは、週末の夜限定で、繁華街にある公園の一角で道ゆく人に無料でコーヒーをふるまい始めます。

この活動を約2年のあいだ続けたのち、昨年ついに、個人事業主として本格的にコーヒースタンドの "事業" をスタート。

登録の屋号は「喫茶すみへい」とし、出店場所が友人から借りている農園の一角ということから「農園スタンド」とも呼んでいるそうです。

コロナ禍で今はいったん営業を中止しているものの、SNS等での地道な発信から着実に常連客を増やしています。


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ーー18年のスタート時はコーヒーを無料で提供されてましたよね。赤字でしかないと思うんですが、何故そのようにされていたのですか?


「フリーコーヒーをやる目的が "収入を得る" ではなかったので、お金のことははじめから考えていませんでした。会社員としての収入がすでにありましたし。

ただ生活に支障が出ない範囲でスタートしたかったというのはあります。

お店をやるのに必要な道具は、幸いカフェをしてる友人に色々と貸してもらえたんです。初期コストをほぼかけずに始められたのは大きかったですね。

珈琲豆や水、ガスボンベといったものは毎回仕入れないといけませんが、その費用もだいたい飲み会1回分ぐらいでおさまったので赤字という感覚はなく、あくまで "好きなことにかけるお金" という認識でした。

あとは各所への届出や許可申請といった手続きを簡略化したかったというのも "ふるまい" にした理由の一つです」



ーーとにかく「お店の経営」というものをいちど試してみたかったという感じですか?


「当初の目的は、

『夜お酒を飲んだ後に立ち寄れる喫茶店が自分の住んでる街にはないなと感じて、それなら自分でやってみよう』

でした。

喫茶店のマスターになるってのは当時はまだぼんやりとしてて、定年後にやれたらいいなぐらいに思ってたんですが、以前からフリーコーヒー(=無料でふるまうコーヒー)をされてる方を知っていて、この方のやり方ならすぐにでも "マスター" をやれそうだなって思ったんです」



ーーなるほど。「喫茶店やりたいなぁ」ってなんとなく思い描いていただけだったものが、実はいろんなことを省いた形ならすぐにでも始められることに気がつかれて、それで「やってみた」という感じですかね。行動力、すごいです!

ところで「喫茶すみへい」は昨年から個人事業主として始動されています。理由やきっかけはなんだったのでしょうか。


「本業とは別で収入源を増やせないかと考えるようになったのがきっかけです。自分にできることは何かと考え、浮かんだのが "珈琲" でした。

フリーコーヒーをやりながら、本当の意味で "自分のお店" を構えてみたいという気持ちが強くなっていたので、このタイミングかなと。

ただ、本業である会社員としての仕事もありますし、就労規則で副業は禁止されていたので、会社には一度相談をしました。

そうしたら、本業にプラスになるようにということと、本業に支障をきたさないという約束で「副業」の許可をいただけたんです」



ーー今後、本業をやめて喫茶店一本でやっていきたい気持ちはありますか?

「今のところは考えていません。会社員という立場があるおかげで好きなことに取り組めているのが事実ですから。

お店として営業してはいるものの、お金をいただかなければ生活できないという状況ではないからこそ、良い距離感でお客さんと接することができているようにも感じています。

学生の頃から喫茶店のマスターになりたいという夢をずっともっているので、自分に合った方法でそれを実現したいと思っています」


ーーありがとうございました!今後より一層のご活躍を期待しております。


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本業とのバランスをうまく取りながらコーヒースタンドを経営する住田さん。印象的だったのは、初めての起業なのにどこか余裕を感じるところです。

これはやはり、会社で働いているという安心感が支えになっているのでしょう。


この余裕感、飲食店経営一本で働いている人にはなかなか出せないものなんですよね。

しかしお客さまの立場になってみると、売るのに必死なお店と、そうでない「余裕」のあるお店と、どちらが居心地がいいかと聞かれたら間違いなく後者なんです。

複業で飲食店を持つことの良さをひとつ学びました。


ますます多様化していく飲食業界。

店の経営一本で食べている私たちも、うかうかしていられないです。



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