見出し画像

【カレー×鳥取のうつわ】KAJI CURRY店主に聞く、地元のうつわを使うこだわり


ズラリと並ぶ21種類のうつわから好きなものを選んで、おいしいスリランカカレーを味わえる。うつわ好きにはたまらない、そんなユニークなお店が2020年8月、鳥取市にオープンしました。

その名も「KAJI CURRY」。

店主の梶川哲秀さんは「地元産」にこだわり、食材だけでなく、うつわも鳥取県内の窯元でつくられたものばかり。一体どんな想いでこのお店を始めたのか、取材しました。


一皿ができるまでのストーリーを伝えたい

一度目のカレー


ーなぜKAJI CURRYを始めたのですか?

23歳のとき、福岡で食べたスリランカカレーのおいしさに衝撃を受けて、いつか同じようなお店を鳥取でやりたいと思うようになりました。でも当時は洋服に興味があったので、19歳で洋服屋の道に進み、以後30代半ばまで駆け抜けてきました。今でもKAJI CURRYと並行して洋服屋を経営しています。

洋服屋


40歳手前になり、そろそろカレー屋もやりたいと物件を探していると、運の良いことに知り合いのオーナーさんから店舗を譲っていただけることになったんです。その物件を管理しているのも僕のご近所の方だとわかり、本当にご縁が重なりました。


ー日本広しと言えども、このようなカレー屋さんは珍しいと思います。どうしてうつわを選べるスタイルにしたのですか?

こだわって作られた鳥取の窯元のうつわを並べて、好きなお皿を選んでいただいた方が食事の楽しみ方も広がりますよね。


それに、ただ食べていただくだけでなく、うつわや食材についても説明することで、その一皿のカレーに至るまでのストーリーが「付加価値」になると思ったんです。

うつわのメニュー


ーストーリーが付加価値に!

バイヤー時代の経験が影響しているのだと思います。

展示会に行って、メーカーさんやデザイナーさんから「この服はどう作っているのか」「どのようなストーリーがあるのか」を直接伺う機会が多かったんです。上司からも「服のストーリーをお客さんに伝えなさい」と言われていましたし、取引先さんもそれを望む声が多かった。

だから自然と、食材やうつわに込められたストーリーをつくり手さんから聴きたくなるし、またそれをお客様に伝えたくなるんですよね。


日々の生活は工夫次第で楽しく、豊かになる

うつわ2


ーうつわは以前からお好きなんですか?

20代半ばから好きでしたね。料理が好きでよくしていたんですが、うつわにこだわればもっと料理を楽しめると思い、集めるようになりました。旅行のお土産も、うつわを選ぶことが多いです。

ー料理を最大限楽しむための工夫が、「うつわにこだわること」だったのですね。

ええ。あと、良いうつわを知ると身近な人にも魅力を伝えたくなります。


当時好きだった人に、クリスマスプレゼントで因州中井窯を渡したことがあって。しかも尺皿と言って、直径30cmくらいの大きなうつわでした。今思えば、プレゼントとしては重い気もしますが(笑)、喜んでもらえましたよ!彼女がパスタを作るのが好きと言っていたので、よりおいしく食べてほしかったんです。

因州中井窯

(引用:因州中井窯ホームページ


ー地元の魅力に気づいたきっかけはあったのですか?

やっぱり、地元だけにいても見えづらくて、外に出ることで気づける部分は大きいですよね。


僕は鳥取生まれ、鳥取育ちですが、コロナが拡大する前は年に10~15回ほど県外に行っていました。それで、その土地の魅力的な人やモノに出会うたびに、「東京から見た鳥取の魅力」や「世界から見た鳥取の魅力」について考えていました。

ー10~15回も!県外の魅力を知ってしまうと、移住を考えることもあったのでは?(笑)

20歳の頃から鳥取で洋服屋の店長をしていたので、県外に住むという発想はありませんでした。

むしろ、これだけ近くに豊かな自然とおいしいものがあって、良い素材が安く手に入る鳥取の暮らしは、とても裕福だと思うんです。都会でおいしいものを手に入れようと思うと、いくらかかるか……(笑)


KAJI CURRYでの体験は、豊かさを感じる第一歩

梶さん2


ー日々の豊かさは、楽しもうと工夫する気持ちがないと気づきにくいのかもしれませんね。

地元の魅力を知らないまま生活するのは、もったいない。


僕は、地元産のうつわとお客さんを繋げるきっかけをいただいています。自分が関わる以上は食べて終わりではなく、一皿ができるまでのストーリーを知ってもらい、生活の中にうつわを取り入れるきっかけを作って、お客さんの暮らしをより豊かにしたいという想いがありますね。昔から、良いものは伝えないと気が済まない性格で(笑)


ーうつわも食材もすべて紹介しながらお食事を提供されているのが印象的でした。

何も説明せずにただ食べていただくのと、「このごはんはスパイスが3種類入ってるので、ぜひ香りを楽しんでください」と説明をしたうえで食べていただくのとでは、味わい方がまったく異なるはずです。


「なぜおいしいのか」を共有できたら、お客さんにも目の前の一皿の価値を感じていただけると思っています。

ーオープンして5ヶ月経ちますが、お客様の反応はいかがですか?

店を出たあと、窯元でうつわを買って、Instagramに投稿されていたお客さんがいらっしゃいました。「このうつわはどこで買えるんですか?」とよく質問をいただくので、場所とともに「窯元さんに『KAJI CURRYから聞いた』と、一本電話してから行くといいですよ!」とお伝えしています。その方が、お客さんも訪ねやすいと思うので。

KAJI CURRYでの体験が、お客さんの生活を豊かにするきっかけになっていたら、とても嬉しいですね。


陶芸家・生産者・お客さんを繋げるきっかけに

提供写真 編集済


ー今後、挑戦したいことはありますか?

うつわを新調しようと思っていて、今まで使っていたものはお客さんに譲る予定です。お客さんにとっては鳥取のうつわをご家庭で使っていただけるし、僕にとっては新たなうつわを通してお客さんに出会える。陶芸家さんにとっても新たな挑戦のきっかけになります。そうやって、うつわを通してみんなが繋がるきっかけになりたいですね。

ーストーリーがどんどん続きますね!

かわいい子どもが旅立っていくような寂しい気持ちもありますが、活躍したうつわたちが誰かの生活を豊かにすると考えると、すごく尊いなと思います。


あとは、窯元に行くツアーをやれたらいいですね。カレーを食べたあと窯元に行って、実際にうつわを作る。食材の生産者さんを訪ねるのもいいかもしれません。作るのも食べるのも体験できるのは楽しいと思います。


―構想を伺うだけでワクワクします。素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


・・・


梶川さんのお話から、うつわは「日々の生活の贅沢さに気付くもの」だと実感しました。お気に入りのうつわがあると、自分の暮らしが愛おしくなりそうですね。

と言っても、自分の暮らしに目を向けるのはむずかしいときもあるはず。そんなときはKAJI CURRYでおいしいカレーを味わいながら、日常の贅沢さを感じる体験をしてみてはいかがでしょうか。


【KAJI CURRY 基本情報】

外観

◇営業日時:火~金 11:00~14:00 ※ランチのみ限定30食
◇11:00~、12:00~、13:00~の3部制
◇完全予約制:InstagramのDMで受付 ※前日15:00~当日10:30まで
◇鳥取県鳥取市扇町138
◇詳細は、KAJI CURRYさんのInstagramをご覧ください




この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?