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マティアス・ピニェイロ『Isabella』"尺には尺を"と紫の海

2020年ベルリン映画祭エンカウンターズ部門選出作品。これが初ピニェイロだが、過去作品のあらすじを読む限り、本作品でもいつも通りシェイクスピア 劇を現代に翻案して解体してくのをやっているようだ。今回は『尺には尺を』で、主人公はイサベラを演じる。冒頭で登場するマリエルは妊娠しているが、同じドレスを着たマリエルが登場する次のシーンでは妊娠しておらず、時系列がぐちゃぐちゃにかき乱されていることが分かる。また、同じに見えるが細部が微妙に異なるシーンや同じに見えるが演者が異なるシーンが繰り返され、現実世界が演劇のように解体されていく過程が提示されていく。『尺には尺を』と現実がリンクしていくのも興味深いが、なんだか頭でっかちに感じて退屈だった。TIFFmexに参加して改めて思ったけど、こういう爆睡しそうな作品も止められるという点で配信は優れているが、寝る度に止めているとありえないくらいの時間が掛かるのが難点。

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・作品データ

原題:Isabella
上映時間:80分
監督:Matías Piñeiro
製作:2020年(アルゼンチン, フランス)

・評価:50点

・ベルリン国際映画祭2020 その他の作品

コンペティション部門選出作品
1. マルコ・ドゥトラ&カエターノ・ゴタルド『All the Dead Ones』奴隷制廃止後も生き残る旧時代の価値観
2. ダミアーノ&ファビオ・ディノチェンツォ『悪の寓話』世にも悲しいおとぎ話
3. ブルハン・クルバニ『ベルリン・アレクサンダープラッツ』フランツはまともな人間になりたかった
4. イリヤ・フルジャノフスキー&エカテリーナ・エルテリ『DAU. ナターシャ』壮大なる企画への入り口
5. ツァイ・ミンリャン『日子』流れ行く静かなる日常
6. ブノワ・ドゥレピーヌ&ギュスタヴ・ケルヴェン『デリート・ヒストリー』それではいってみよう!現代社会の闇あるある~♪♪
7. ケリー・ライヒャルト『First Cow』搾取の循環構造と静かなる西部劇
8. ジョルジョ・ディリッティ『私は隠れてしまいたかった』ある画家の生涯
10. リティ・パン『照射されたものたち』自慰行為による戦争被害者記録の蹂躙
11. ヴェロニク・レイモン&ステファニー・シュア『My Little Sister』死にゆく兄と戦う妹
12. エリザ・ヒットマン『17歳の瞳に映る世界』自己決定と選択の物語
13. サリー・ポッター『選ばなかったみち』ごめんパパ、何言ってるか分からないよ
14. フィリップ・ガレル『涙の塩』優柔不断な男の末路
15. アベル・フェラーラ『Siberia』悪夢と記憶の荒野を征く者
16. モハマド・ラスロフ『悪は存在せず』死刑制度を巡る四つの物語
17. クリスティアン・ペッツォルト『水を抱く女』現代に蘇るウンディーネ伝説
18. ホン・サンス『逃げた女』監督本人が登場しない女性たちの日常会話

エンカウンターズ部門選出作品
1. Camilo Restrepo『Encounters (Los conductos)』髭面ノ怪人、夜道ヲ疾走ス
2. ティム・サットン『Funny Face』地域開発業者、ヴィランになる
3. ヴィクトル・コサコフスキー『GUNDA / グンダ』豚の家族を追う親密なホームビデオ
4. マティアス・ピニェイロ『Isabella』"尺には尺を"と紫の海
5. マリウシュ・ヴィルチンスキ『Kill It and Leave This Town』記憶の中では、全ての愛しい人が生きている
7. クリスティ・プイウ『Malmkrog』六つの場面、五人の貴族、三つの会話
8. Catarina Vasconcelos『The Metamorphosis of Birds』祖父と祖母と"ヒヤシンス"と
9. Melanie Waelde『Naked Animals』ドイツ、ピンぼけした青春劇
10. アレクサンダー・クルーゲ & ケヴィン『Orphea』性別を入れ替えたオルフェウス伝説
12. Pushpendra Singh『The Shepherdess and the Seven Songs』七つの歌で刻まれた伝統と自由への渇望
13. ジョゼフィン・デッカー『Shirley』世界は女性たちに残酷すぎる
14. サンドラ・ヴォルナー『トラブル・ウィズ・ビーイング・ボーン』小児性犯罪擁護的では…
15. C.W.ウィンター&アンダース・エドストローム『仕事と日(塩谷の谷間で)』ある集落の日常と自然の表情

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