見出し画像

是枝裕和『怪物』"誰でも手に入るものを幸せという"

2023年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ある小学校周りで起こった出来事を羅生門形式で語る一作。羅生門形式なのは本当に謎で、確かにある章で怪物のような人間も別の人の視点では怪物ではなく、誰しもが怪物になりえるというテーマはあるんだろうし、クドいからそれぞれの章のオーバーラップを控え目にすることで、ある意味で怪物とされた人間は怪物認定した人物を見ていなかった(交わらなかった)という見方も出来るのだが、あまりにも答え合わせ感が出てしまっている。そして、その先にあるのが、試写会で"ネタバレ"とされた、二人の少年の関係性である。そういった姿勢も、本作品の結末も含めて前時代的というかなんというか。まぁ未だこの程度です、という告発的な要素のはあるのかもしれないが、それにしては貧困とか毒親とかモンペとか体罰とか色々絡みすぎじゃね?あの流れで飴食うのは無理があるだろ。観終わってみると、カンヌでの例の発言も映画の一部なのではと思ってみたり(クィア映画ではないと言いながら、クィアパルムは貰う厚かましさ)。まぁクィア映画ですと断言した方がデメリット大きいと判断されたんだろうけど、言い切る覚悟がねぇなら題材にもするなよと。あと、海外ではルーカス・ドン『CLOSE』と比べられていたけど、去年カンヌの会場で観てすぐにパクったのでは?と思うほど同じシーンが登場するのに驚き。

・作品データ

原題:怪物 / Monster
上映時間:125分
監督:是枝裕和
製作:2023年(日本)

・評価:40点

・カンヌ映画祭2023 その他の作品

1 . ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『About Dry Grasses』トルコ、幼稚過ぎるカス男の一年
2 . ジュスティーヌ・トリエ『落下の解剖学』転落に至るまでの結婚生活を解剖する
3 . ウェス・アンダーソン『アステロイド・シティ』"ウェスっぽさ"の自縄自縛?
4 . Ramata-Toulaye Sy『Banel & Adama』セネガル、村の規範との戦い…?
6 . ナンニ・モレッティ『A Brighter Tomorrow』自虐という体で若者に説教したいだけのモレッティ
7 . ジェシカ・ハウスナー『Club Zero』風刺というフォーマットで遊びたいだけでは
8 . アキ・カウリスマキ『枯れ葉』ある男女の偶然の出会いと偶然の別れ
10 . カウテール・ベン・ハニア『Four Daughters』チュニジア、ある母親と四人姉妹の物語
12 . マルコ・ベロッキオ『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』イタリア、エドガルド・モルターラ誘拐事件の一部始終
13 . アリーチェ・ロルヴァケル『La Chimera』あるエトルリア人の見た夢
14 . カトリーヌ・ブレイヤ『Last Summer』ブレイヤ流"罪と女王"
15 . トッド・ヘインズ『May December』不健康な年齢差恋愛のその後
16 . 是枝裕和『怪物』"誰でも手に入るものを幸せという"
17 . ケン・ローチ『The Old Oak』"チャリティではなく連帯"という答え
18 . ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』これが"Old meets New"ってか?やかましいわ!
19 . トラン・アン・ユン『ポトフ 美食家と料理人』料理は対話、料理は映画
20 . ワン・ビン『青春』中国、縫製工場の若者たちの生活
21 . ジョナサン・グレイザー『関心領域』アウシュヴィッツの隣で暮らす一家の日常

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,972件

よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!