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ホン・サンス『イントロダクション』ヨンホとジュウォンのある瞬間

一部ベルリンで撮ったらしきパートでキム・ミニとソ・ヨンファが登場するので、もしかして去年のベルリン映画祭で『逃げた女』のレッドカーペットに参加した前後で撮ったのかなと思ってみたり。そしてその1年後に再びベルリン映画祭のコンペに登場するという不思議な作品。既に本作品は最新作ではなく、次の作品がカンヌ映画祭に参加している。まぁ今年は全く同じことを濱口竜介がやってどっちでも主要賞を取ってるので、今年に限っては霞んでしまっている気もするが。物語はある青年ヨンホを中心とした人間関係を描き、長い期間のうちジュウォンと交わる三点を抽出している。三つの挿話のどれもが、ヨンホ、或いはジュウォンの親と関わりを持っていて、双方の微妙な距離感を三通り楽しむことが出来る。特に役者の道を諦めたヨンホが母親に呼び出されて伝説的な俳優(キム・ジュボン)に出会う第三部は強烈で、初対面でいきなり"酒は飲んでも飲まれるな"と説教された上でじゃんじゃか酒を注ぎまくり、最終的にヨンホにキレ散らかす。第一部では世代間の隔たりが全く回収されず、第二部では"私たちも昔そうだった"とキム・ミニに言わせているのに、最後がこれかという感じ。それ以外はワンシーンワンカット、変なズーム、当たり障りのない会話、短い上映時間という黄金要素を全部持ついつものホン・サンス映画。特段好きでもないのに観ているのは、彼がどこのコンペにも選ばれ続けてるからです。ご容赦願います。

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・作品データ

原題:인트로덕션
上映時間:66分
監督:Hong Sang-soo
製作:2021年(韓国)

・評価:60点

・ベルリン国際映画祭2021 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1. ラドゥ・ジュデ『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』コロナ、歴史、男女、教育
3. アロンソ・ルイスパラシオス『コップ・ムービー』メキシコシティの警察官についての物語
6. フリーガウフ・ベネデク『Forest: I See You Everywhere』明けない夜、変えられない出来事
7. マリア・シュラーダー『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』ガール・ミーツ・アンドロイドボーイ
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9. ジョアナ・ハジトゥーマ&カリル・ジョレイジュ『メモリー・ボックス』レバノンと母娘を結ぶタイムカプセル
10. マリア・シュペト『Mr. Bachmann and His Class』ぼくたちのバッハマン先生
11. ナジ・デーネシュ『Natural Light』ハンガリー、衝突なき行軍のもたらす静かな暴力性
12. ダニエル・ブリュール『Next Door』ベルリン、バーで出会ったメフィストフェレス
13. セリーヌ・シアマ『Petite Maman』一つの家二つの時間、小さなお母さんと私
14. アレクサンドレ・コベリゼ『見上げた空に何が見える?』ジョージア、目を開けて観る夢とエニェディ的奇跡
15. 濱口竜介『偶然と想像』偶然の先の想像を選び取ること

★エンカウンターズ部門選出作品
1. Samaher Alqadi『As I Want』エジプト、"Cairo 678"の裏側
2. Andreas Fontana『Azor』レネ・キーズはどこへ消えた?
4. ユリアン・ラードルマイヤー『Bloodsuckers』もし資本主義者が本当に吸血鬼だったら
6. Silvan & Ramon Zürcher『The Girl and the Spider』深い断絶と視線の連なり
7. Jacqueline Lentzou『Moon, 66 Questions』ギリシャ、女教皇と力と世界
8. ファーン・シルヴァ『ロック・ボトム・ライザー』ハワイ、天文台を巡るエッセイ
9. ダーシャ・ネクラソワ『The Scary of Sixty-First』ラストナイト・イン・ニューヨーク
10. ドゥニ・コテ『Social Hygiene』三密を避けた屋外舞台劇
11. Lê Bảo『Taste』原始的で無機質なユートピアの創造
12. アリス・ディオップ『We』私たちの記録、私たちの記憶

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