Knene[ネネ]

3d衣装モデル制作とか、小説とか、戯曲とか。いろいろ~ 着用アバター:キュビクローゼッ…

Knene[ネネ]

3d衣装モデル制作とか、小説とか、戯曲とか。いろいろ~ 着用アバター:キュビクローゼット「舞夜」ちゃん。

マガジン

  • 小説「On the Moon」

    宇宙探索隊員の少年が、不時着した先の星で女性人型の生物と出会う話。 ボーイ・ミーツ・ガール

最近の記事

小説「On the Moon」15話

大きな衝撃がして、ラズは着陸のためのクッションルームで自分たちの船が海に落ちたことを悟った。昔の船ならいざ知らずラズたちの船は強度が増しており海面に不時着することで分解したりはしなかった。ただ静かに海の底へ底へと沈んでいく。 出口はやはり開かず、閉じ込められた船員たちはそれぞれ思い思いに過ごしていた。どこからもすすり泣きが響いていた。 死の淵にたって、心配なのはノインや家族のことばかりだった。 ノインはあの津波を生き残っただろうか。父や母は無事だろうか。 そういったこ

    • 小説「On the Moon」14話

      「なにかおかしい」 その言葉を聞いてラズは窓に近づいた。 海面が高い壁となって大地に押し寄せていた。ラズの家がある地区の居住地に。そこにはノインもいるはずだった。 「そんな嘘だろ……」 なす術がないのは痛いほどわかっていた。でもラズは地球に向かって父を呼び母を呼び婚約者の名を呼んだ。そして逃げろと何度も何度も叫んだ。 津波はあっけなくたくさんのものを飲み込み海へとさらっていった。 ラズががくりと膝をつく。掛ける言葉が見つからない同期はただそこに立っていることしかできなかっ

      • 小説「On the Moon」13話

        ラズは目を開くと見覚えのある大型宇宙船の医務室にいた。動こうとすると右足がズキッと痛んだ。 ラズは混乱していた。さっきまで自分は月にいて、ミュードに動力結晶を壊されたはずが、なぜ、宇宙船の中にいるのか。しかも窓を見ると正常に運行していて少しずつ地球へ近づいている。 その時医務室のドアが開いて人が入ってきた。ラズの同期の隊員だった。 「おお!ラズ気が付いたか!」 「なんで僕はここにいるんだ?」 「どこまで覚えてるんだ? 頭を強く打った可能性もあるからな、俺から説明しよう。 お前

        • 小説「On the Moon」12話

          悲鳴が聞こえてラズは飛び起きた。ミュードの声だ。ラズはすぐさま声のした方向へ走った。 「ミュード!一体なにが……」 「ラズ……。ラズ、どこにいるの……」 ミュードが地面から転びかけながら立ち上がり、虚空に手を彷徨わせる。数歩進んだところでミュードは足元の石ころにつまづいて転んだ。 ミュードの目が潰れているのだと、ラズは理解した。 どうして……と周りを見回すと、そこに粉々に砕けた動力結晶があった。 ラズはミュードの横を抜けて動力結晶に駆け寄った。すでに光を失っており、エネルギ

        小説「On the Moon」15話

        マガジン

        • 小説「On the Moon」
          15本

        記事

          小説「On the Moon」11話

          ミュードは宇宙船に乗り込むと、すぐに青く光る鉱石ーー動力結晶ーーを見つけ出した。 ミュードは人間ではなかった。超人の力で月の上のことは調べようと思えばなんでもわかった。ただ力を使うと疲労するからしないだけで。 ミュードは動力結晶を持つと宇宙船の外に出た。ラズからも宇宙船からも離れると、その手に持った動力結晶をしばらく見つめていた。 頭の中にはぐるぐると思考が巡っていた。 ーーずっとそばにいてほしい ーーこんなことしちゃいけない ーー寂しい ーーもう一人でいたくない しば

          小説「On the Moon」11話

          小説「On the Moon」10話

          ミュードが泣いたその日から二人は動力結晶探しをやめた。正確にいうとラズは探索を続けていた。ミュードが寝静まった頃にそっと起きて迷子にならない範囲を動力結晶の青い光を探して彷徨った。 ミュードは夜中目を覚まして隣にラズがいないのがわかると静かに泣いた。 夜毎それが繰り返された。そんな中、ミュードの頭にどこからか悪魔の囁きが吹き込んだ。 「ラズ、最近眠そうね」 ぎくっとラズは肩を震わせた。 「そうかな」 「心配事があるの?」 「いや……そういうわけじゃ」 しどろもどろになるラ

          小説「On the Moon」10話

          小説「On the Moon」9話

          ミュードはなぜ自分が泣いているのか、最初わからなかった。なぜ自分がショックを受けているのかも、どうして胸の奥が苦しいのかも、わからなかった。 でもすぐに気づいた。これまでの日々でラズからの気遣いや優しさが積もってミュードの中で大きな山を成していたことに。それゆえに頭ではわかっていた「いつか去ってしまう」という事実がそれだけ胸を締めつけた。 何も言わずに泣くミュードに、ラズは驚いて 「どうしたんだ?」 「……やなの」 ミュードが言葉を続ける。 「……あなたがここを去ってしまうと

          小説「On the Moon」9話

          小説「On the Moon」8話

          ラズとミュードは以前よりたくさんの言葉を交わすようになった。ラズは自分のことを宇宙探索隊二等隊員だと説明し、地球の状況を話した。 「地球はいま海面上昇によって居住可能区域がどんどん狭まっているんだ。そして海面上昇はもう止めることができない。雪山を転がる雪玉のようにどんどん大きく、速さも増して進んでいるんだ。だから僕たち人類は地球外に居住区域を求めるようになった。地球外生命体は友好的なものも稀にあるけれど、非友好的生物がほとんどだ。そういうものと戦って、居住区域を勝ち取るのが僕

          小説「On the Moon」8話

          小説「On the Moon」7話

          「痛っ……」 前を歩いていたミュードが突然声を上げて膝をついた。駆け寄ると血が流れていた。何かで足裏を切ったらしかった。 「大丈夫か?いま手当を……」 「そんなのいいわ。すぐ治るもの」 「ダメだ。すぐ手当てする」 大丈夫だといいはるミュードを座らせてラズは汚れを払い、常に持ち歩いている包帯で手当をした。消毒液はミュードに害がないのかわからなかったので使うのを避けた。 「生物は、いつ呆気なく死んでしまうかわからないんだから、もっと自分を大切にしてくれ」 ミュードは包帯越しのラズ

          小説「On the Moon」7話

          小説「On the Moon」6話

          「なに?」 視線に気づいたミュードがラズを見る。 「え、いや……」 「いま見てたでしょう」 「あ、えっと……い、妹に、似てると思って……」 ミュードは目の鋭さを和らげて「妹?」と首を傾げた。 「あぁ、妹がいたんだ。七歳で死んだんだけど……」 「大丈夫よ」 「え?」 「大丈夫。人は死んだら星になるの。ずっと見守ってる。だから、大丈夫よ」 ラズはこの生き物が自分のことを慰めているのだとわかって、この時初めて心を許した。宇宙船に案内してもらった時から頼りにはして

          小説「On the Moon」6話

          小説「On the Moon」5話

          それからラズとミュードは何日も何日も歩き続けた。ラズは必死で動力結晶を探した。しかしあるとき、ラズはミュードの様子がおかしいことに気づいた。ミュードはぶらぶらと足を振って退屈そうに歩く。周りの様子を気にしているふうもない。 「あの……ミュード、言ってなかったかもしれないが動力結晶は青い石で、宝石のように輝いているんだ」 「……そう」 「だから見つけたら教えてくれ」 ミュードはきょとんとした顔をこちらに向けた。 ラズは戸惑って 「なんでそんな顔するんだ?」 「わた

          小説「On the Moon」5話

          小説「On the Moon」4話

          高い金属音が耳をついて、ミュードは目を覚ました。 宇宙船のそばに寄ると、ラズが宇宙船の中でうずくまっていた。 「どうかしたの」 「動力結晶が……宇宙船を動かすためのエネルギー体がないんだ!!!くそっ!」 ラズは自分のそばにあったスパナを叩きつけた。また、高い金属音が鳴って、ミュードは耳を塞いだ。 「きっと不時着したときに、船外へ出たんだ。動力結晶がないと船は動かない。僕は地球に帰れない……」 ラズは膝を抱えてうずくまったまま、しばらくじっとしていた。 「探さない

          小説「On the Moon」4話

          小説「On the Moon」3話

          ミュードに案内してもらって、少年はやっと自分の宇宙船にたどりついた。 どうして目印もなにもないところを真っすぐ目的地まで向かうことができるのか、少年はミュードに尋ねたが、何も答えなかった。 少年は宇宙船に着くと、案内のために先導していたミュードに声をかけて向き直った。 「はじめて会った日のことは済まなかった。君が非友好的生物かもしれないと思ってあんな態度を取った。ここまで連れてきてくれてありがとう」 ミュードは驚きに一瞬目を見開いたが、すぐに微笑みを浮かべて 「べつ

          小説「On the Moon」3話

          小説「On the Moon」2話

          少年は光の中で目を覚ました。はじめ、天国に来たのだと思うくらいまばゆく明るい光の中だった。天国ならきっといるはずの人を探して周りを見回すと、ミュードが寝息を立てて眠っていた。 ぎょっとして少年は身構えたが、自分の腰元に携帯していた小型武器がないのに気が付いた。小型武器だけではなかった。持っていた武器という武器がひとつもなかった。 胸元に手を当てると血はもう出ていなかった。 丸腰の不安から少年はミュードから逃げようと、そっと離れて走りだした。自分の乗って来た小型の宇宙船を

          小説「On the Moon」2話

          小説「On the Moon」1話

          わたしは月に住んでいた。 冷たくて清らかでひとりぽっちで心地よいところだった。 気ままに起きて眠る生活。 その生活が変わったのはあの人がやってきたからだった。 地球生まれのその人は優しくて弱い人だった。 ☆ 地を揺るがすような大きな音に、ミュードはそっと目を開いた。眠りから覚まされて少し不機嫌そうに眉を寄せる。静かに立ち上がると土煙の立ちのぼる方向へ、歩き出した。 ミュードは歩みを止めて一目で状況を把握した。不時着した宇宙船とそこから投げ出された少年がそこにはあった。土

          小説「On the Moon」1話

          【unity japan特別賞ありがとうございます】cluster game jam 2021 in summer 体験記

          【unity japan特別賞ありがとうございます】cluster game jam 2021 in summer 体験記 Knene[ネネ] こんにちは、VR一般市民のKnene[ネネ]です! この度、cluster game jam in Summer 2021に参加したので、体験記として残しておこうと思います。 まずcluster game jamとは。 一言でいうと、cluster社が主催する48時間でゲームワールドを作るお祭りです。 私は今回五人のチームの一人

          【unity japan特別賞ありがとうございます】cluster game jam 2021 in summer 体験記