小説「On the Moon」5話
それからラズとミュードは何日も何日も歩き続けた。ラズは必死で動力結晶を探した。しかしあるとき、ラズはミュードの様子がおかしいことに気づいた。ミュードはぶらぶらと足を振って退屈そうに歩く。周りの様子を気にしているふうもない。
「あの……ミュード、言ってなかったかもしれないが動力結晶は青い石で、宝石のように輝いているんだ」
「……そう」
「だから見つけたら教えてくれ」
ミュードはきょとんとした顔をこちらに向けた。
ラズは戸惑って
「なんでそんな顔するんだ?」
「わたしは探さないわ」
「は?」
「案内するだけよ」
「えっ!それじゃあ今まで歩いてきたところは?」
「探してないわ」
ラズは呆れて頭を抱えた。自分が目を皿にして手のひら大の動力結晶を探している間、この生物はただ案内をしてくれていただけなのだ。
「なんで手伝ってくれないんだよ!」
「疲れるもの……それにそれを探すのはあなたの問題でしょう?」
ラズは理解ができない。ミュードは言葉をつづけた。
「あなたの問題はあなたが解決しないと」
ラズはまったく理解ができなかった。人間とはまったく違う考えを持つ生物なのだと思った。
ラズはため息をついて、これからは自分でもっとよく探そうと気を引き締めた。
そしてラズはミュードをこっそり観察した。人型の生物で髪は長く、白い服を着ている。見た目は人間と変わったところはない。考え方が全然違うだけで。
ラズはミュードの姿を見てふと、妹が成長していたらこんなふうだっただろうか、と思った。七歳という幼さで天国へ旅立った妹は髪の色はミュードとは違っても、纏う空気が似ているような気がした。
サポートは主にKnene[ネネ]の生命維持、技術向上にあてられます。よろしくお願いします。